凪音編:7話 神戸修学旅行
ジリリリリリ…ジリリリリリ…
「凪音〜!いつまで寝てんの?今日修学旅行でしょ?早く起きて準備しなさい!バス、置いてかれるわよ!?」
っ……は!今何時だ?学校の集合時間は6時半のはず。今は?5時50分!?やべ!実質準備できる時間20分だぞ!?
「母さん!今日、朝飯いらん!」
リビングに急いで降りながら言った。
「何言ってるの?朝飯ないと体調崩すわよ?」
「崩さん、崩さん、崩すわけねえ!」
そう言いながら歯磨きと身支度を同時にした。
「そう。これだけは持って行きなさい。」
「なんだこれ?」
「下痢止めと、栄養食よ。」
「は?」
「あんた、いっつもこういう時、下痢するじゃない。栄養食はタイミングを見て食べなさい。」
「あ、ありがとう。」
そうこう準備していたら6時5分だ。
「母さん、行ってくるわ!」
「行ってらっしゃい。」
僕は両手に荷物を持って学校に向かった。
校門の前には大山がいた。
「凪音、遅刻ギリギリだぞ。もっと早くに来い。」
「すみません!」
そう言いながら僕は急いでバスに乗った。
「凪音、遅かったな。」
隣の座席の伊崎が言ってきた。
「ああ、寝坊した。」
「凪音くん、ドジだね。」
前の席の人から言われた。
「三森さんっ…」
そう、三森さんとは喋れるようになった。
いや、厳密に言えば、一昨日くらいからだろう。まあ、あれだ、段階を踏んでちょっとずつ喋れるようになった。
「伊崎、僕は寝るわ。神戸に着いたら起こしてくれ。」
「ああ、わかった。」
そう、昨日修学旅行の緊張で寝れなかった。神戸までは高速で3時間。まあ、寝てればすぐだろう。
「着いたぞ。凪音。」
「ん…もうか…」
「ああ、着いたぞ。サービスエリアに。」
「サービスエリアかよ。」
「お前、トイレはしといた方がいいぞ。」
「そうだな。」
僕はバスを降り、トイレに向かった。
グラッ…
おっと。立ちくらみか?まあ、あんな姿勢で寝てたからな無理もない。
さて、トイレ、トイレ
うわ…めっちゃ混んでるじゃん。
5分くらい並んでようやく用をたせた。
そしてバスに乗った。
「ん〜、伊崎。また寝るわ!」
「またかよ。」
「ああ、神戸着いたら起こしてくれ。」
「はいはい。」
「着いたぞ、凪音。」
「サービスエリアじゃないよな?」
「ああ、今回は正真正銘の神戸だ。」
「そうか。」
僕はバスを降りた。
グラッ…
今日はやけに立ちくらみが多いな。気のせいか…
さてとりあえず集合するか。
「はい、整列〜。お前ら今から自由行動だけど、変なことはすんなよ。あと、何かあったら、班長に渡してあるガラケーで俺に連絡しろ。じゃ、解散」
大山が言った。
伊崎がガラケーを持っているらしい。まあ、使うことはないだろう。多分
「じゃあ、南京町行くか!」
「歩いて行くのか?」
「そんなわけねえだろ。タクシーだよ。」
「タクシー?」
僕は伊崎に聞いた。
「ほら、あそこにいっぱいとまってるだろ?ま、お前が歩いて行きたかったら、歩いて行ってもいいけど…?」
「いや、ありがたくタクシーを使わせてもらう。」
「だな!」
僕たちはタクシーに乗った。5人班なので2台に分かれてタクシーに乗った。僕は伊崎と2人で乗った。
そして、伊崎と話しているうちに、いつの間にか着いていた。
「南京町、到着!」
「やった〜!」
女子たちが嬉しそうに言った。
「じゃ!とりあえず、食べ歩きだな!」
僕たちは2時間くらいだろうか食べ歩きをした。
「ねえねえ、凪音くん!これ、私こんなに食べられないから半分こしよ!」
三森さんに言われた。
「いいよ。」
三森さんと半分こ。これほどいい体験はないだろう。さて、もうそろそろ、ポートタワーの方に移動かな。
「伊崎…ポートタワーにそろそろ移動だよな?」
「そうだな、そろそろ行くか。」
僕たちはタクシー乗り場に向かった。
気のせいだろうか?さっきから、なんかめまいがしてきた気がする。
いや気のせいだろう。
「タクシー来ないな。」
僕たちはタクシー乗り場に着いたが、あいにくタクシーが一台もいなかった。
「いざk…」
っ……なんだ、これ?
体験したことないくらいのめまいが体を襲う。いや、まて、視界も若干暗いぞ?
「どうした?凪音?」
伊崎…いや、それが
あ、れ?
声も出ねえ
おい、ちょっと待て
足に力が…
おい…
嘘だろ…?
だんだん、前が見えなくなっていく…
あれ?これ、僕、終わった?
ドタッ……
僕は倒れた。
理由はわからない。
倒れたかもわからない。
ただ、地面の硬い感触だけが最後に残った。
なぜだろうか?中学1年生の、あの時のことを走馬灯のように見た。
はは…
死ぬ時まで、これを思い出させるとはな…
まあ、最後くらいは、しっかり、見ておいてやるか…
あの時のことを……