沙月編:3話 凪音くんに聞きたいこと
ゴールデンウィークが終わり、修学旅行まで残り2週間となった。今は6時間目。修学旅行に向けて班ミーティングの時間だ。
「とりあえず、南京町は決まっていたよな?あとはどこに行きたい?」
伊崎くんが班全員に聞いた。あ、私、神戸に行ったら行きたい場所あったんだ。
「私、ポートタワー行ってみたい。」
「ポートタワーいいね。」
凪音くんを除いた班員がそう言った。凪音くんと隣の席になってから2週間近くが経っているが、なぜか私は凪音くんに嫌われているようだった。
「ねぇ、凪音くんはどう思う?」
凪音くんに聞いてみた。
「あぁ、いいと思うよ。」
いっつもその返事ばっかり。
授業の交流の時もそう。凪音くんから話しかけにきたことなんて一度もない。
なんでなんだろう?私、凪音くんに知らないうちに嫌なことをしたのだろうか。いつも考えていても仕方ないと思う。が、どうしても考えてしまう。もういっそのこと、後で本人に聞いてみよう。私のこと嫌ってるのかどうなのか。じゃないとモヤモヤしたまま修学旅行を迎えてしまう。
今日の班ミーティングは退屈だった。なぜなら、みんな疲れたような表情をしていたからだ。まあ、休み明けの6時間授業っていうのもあるんだろうけど…
私は前期の修学旅行で神戸以外にも楽しみなことがあった。それは最終日の大阪城だ。私は大阪城に行ったことがない。やっぱり、一度も行ってないところに行けるのは嬉しいし、ワクワクする。そう考えているうちに6時間目が終わった。
あとは下校なのだが、私は帰りの会の後に凪音くんを呼び止めた。
「ねぇ、凪音くん。後で自転車置き場来れる?」
「え、いいけど…」
約束をし、一旦別れた。私は掃除当番だったので遅れて自転車置き場に向かった。
「ごめん、待たせた?」
「いや、僕も今来たことろ。それで、何で僕を呼び出したの?」
「うーん、ちょっと近くの公園でしゃべろっか。」
学校から歩いて3分のところに小さな公園がある。私は凪音くんと一緒に歩いた。案の定、歩いている最中に会話はなかった。公園に着いたのでベンチに腰がけた。凪音くんは何故か警戒しているようだ。
「凪音くん。」
「う、うん。」
「短刀直入に聞くね。」
「え、うん。」
「凪音くんは私のこと、どう思ってるの?」
「え…どう思ってるって…」
「うん。どう思ってるの?」
「そりゃあ…仲良くしたいと思ってるよ。」
よかった。嫌っているわけじゃなかった。でも、仲良くしたいと思っているのなら、なぜいつも話しかけても反応が薄いのだろう。
「じゃあ、何でいつも、私が話しかけても、反応が薄いの?」
「え……、それは……」
「私はね。ううん、私もね、凪音くんと仲良くしたいと思ってる。だから気になるんだ。なんでそんなに反応が薄いのか。」
「怖いんだ。」
「怖い?」
「うん…三森さんは、僕と違って明るいし、みんなに優しいし、人気者だし。だから、僕、三森さんと話そうとすると、どうしても、怖いんだ。僕が、話しかけたって、迷惑じゃないか?とか、無視されるんじゃないか?とか、考えちゃって、それで…、話しかけたことで、嫌われるんじゃないかって…」
凪音くん…
そんなこと、私が思うわけないのに…
「私が、話しかけられただけで嫌う?それはないよ。むしろ、話しかけられると嬉しいし。だって、私、人と喋るのが1番好きだもん!」
「え…」
「だから、凪音くん。これからはいつもより、明るく接してほしいな。」
凪音くんの明るい時の姿が私は好きだ。だから…
明るく接して欲しかった。
「わ…わかった…ありがとう…」
「これから、よろしくね。」
「うん。」
もうすぐ習い事があったので、私は凪音くんと別れた。明日からは凪音くんは普通に接してくれるようになるのかな?でも、それは明日になってみないとわからないか。でも凪音くん、なんで話しかけるだけなのに、そんなに考えていたのだろう?
まあ、私は凪音くんじゃないからわからないか…
明日から、ちょっとづつでいいから、友達になっていきたいな。でも、修学旅行で一緒に過ごしているうちに友達になれるか!あ〜、修学旅行楽しみ!
この時は知らなかった。修学旅行中に凪音くんの身にあんなことが降りかかるなんて…