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賞味期限1年の恋  作者: AM
第1章 お互いを知るためには
13/21

凪音編:6話 三森さんからの呼び出し

憂鬱だ

いや、僕は学校がある日は毎日、憂鬱だ。ゴールデンウィークは終わってほしくなかった。学校に行くのが余計に嫌になる。だけど、学校に行けば、恭平や伊崎がいる。ただ、恭平と伊崎が居なかったら、間違いなく僕は、学校に行くのが嫌で嫌で仕方なくなっていただろう。

でも、新学期が始まった当初は、三森さんを見るためだけに、学校に行っていたようなものだった。

そして、席替えで三森さんが隣の席になった時は、これからの学校生活に期待を寄せたものだ。

だが、それも過去の話だ。

理想と現実は違う。僕の理想は、もう、今の段階で三森さんとは普通に話せるようになっていた。

ただ、現実は、僕は三森さんと話そうとすると、緊張してしまう。三森さんから話しかけられる方が、余計に緊張してしまい、いつも適当な返事しかできなくなってしまう。

これ、絶対三森さんに嫌われているよな…

あ〜、中学最後の年くらい、まともな恋愛がしたい。いや、でも、今回は僕が変わればいいだけの話ではある。

ただ変われない。

よく、大人は子供に変わりなさいと言う。ただ、そんな簡単に変われるわけがない。生まれた時から、その性格、考え方だからだ。生まれた時の慣習は、成長しても根強く残る。変われるんなら、もうとっくに変わっているだろう。でも変われないから、タチが悪い。もしかしたら、大人になることは難しいことなのかもな。

僕は心の中でそう思った。

で、だ。こんなことを思っている場合でもない。

なぜなら、今、僕の隣に三森さんがいるからだ。

なぜ?と思うだろう。それは、今日の帰りの会の後のことに、話を戻さなければならない。



6時間目が終わり、帰りの会が始まっていた。いつも、僕は帰りの会の話なんぞ、しっかり聞いてはいない。だから、家帰ってから何しよっかあ〜と、考えていると、いつの間にか終わっている。

「はい、じゃあ帰りの会終わるぞ〜。号令!」

あ、ほら、もうこんなことを考えている間に終わった。

「ありがとうございました〜!」

クラス全員が挨拶をし、帰る準備を始めた。さて、僕も帰ろう。僕が帰りの準備をしていた時、そこに…

三森さんがやってきた。こう言った。

「ねぇ、凪音くん。後で自転車置き場来れる?」

!!!!!!!!!!

は?どういうことだ?なぜ、え、なぜ僕は三森さんに呼び出された?

「え、いいけど…」

いや、これ以外の返事はないだろう。

「ほんと?よかった。私、掃除当番だから、ちょっと待っててくれると嬉しい。」

「あ、あぁうん。」

三森さんは掃除に向かって行った。

え、やばい、やばい、やばい、やばい。え、どうしよ?いや、落ち着け。こういう時こそ深呼吸だ。後ろから誰かに声をかけられた。

「なあ、凪音。今、三森さんと何を話してたんだ?」

「!!!!!、あ、びっくりした、恭平かよ。」

「それで、何話してたんだ?」

「なんか…えっと、その…」

「お!俺、当てていいか?」

「え…」

「ズバリ!呼び出されたんだろ?校舎裏に!」

「いや、校舎裏じゃないけど…」

「校舎裏じゃない?てことは呼び出されたことはあってるのか。」

恭平がニヤけながら言った。

「お前、それ、告白じゃね?凪音、良かったな!」

「いや、それはないだろ…多分…」

いや、絶対それはあり得ない。うん。あり得ない。そう思っておかないと、僕の平常心が保てない。

「ま、頑張ってこいよ!」

恭平はそう言い、僕の背中を軽く叩いた。

僕は恭平と話し終わった後、すぐに自転車置き場に向かった。まだ、三森さんは来てないか。そう思っていたら、

「ごめん、待たせた?」

三森さんが来た。

「いや、僕も今来たことろ。」

どうする、なぜ呼び出されたかの理由は今聞いておくべきか?いや、聞いておこう。

「それで、何で僕を呼び出したの?」

「うーん、ちょっと近くの公園でしゃべろっか。」

え…これ、マジのやつ?いや、マジだったら心の準備がまだ終わってないぞ?

公園って、あそこだよな?歩いて3分ぐらいのところにある。とりあえず、三森さんについて行こう。

僕は三森さんと一緒に歩いて公園へ向かった。一緒に歩いている最中、会話はなかった。と言うよりか、普通の会話ができないくらい、僕は動揺していた。

今、変なことは言えない。だから会話ができずにいた。でも、何か喋らなきゃ。そう考えている時、公園に着いた。



ということで、今、僕の隣に三森さんがいる。

僕と三森さんはベンチに座った。

「凪音くん。」

三森さんに名前を呼ばれた。ドキッとした。

「う、うん。」

「単刀直入に聞くね。」

何をだ?何を、僕は単刀直入に聞かれるんだ?

「え、うん。」

「凪音くんは私のこと、どう思ってるの?」

どう思っている?それはなんだ?恋愛感情としてか?人としてか?いや、落ち着け。これは人として、どう思っているのかと聞いているのだろう…

いや、これは一旦聞き返すか。

「え…どう思ってるって…」

「うん。どう思ってるの?」

うわ、めっちゃむずい…

やっぱ、これは人としてだろう。いや、まて、これは三森さんに対する、今の僕の気持ちを言った方がいい。

「そりゃあ…仲良くしたいと思ってるよ。」

「じゃあ、何でいつも、私が話しかけても、反応が薄いの?」

「え……、それは……」

やっぱりか。案の定、三森さんにもそう思われていたか…

「私はね。ううん、私もね、凪音くんと仲良くしたいと思ってる。だから気になるんだ。なんでそんなに反応が薄いのか。」

なんだって?三森さんが、僕と仲良くしたい?反応が薄い理由?それは、多分、これしかない。

「怖いんだ。」

そう、怖いんだ。

「怖い?」

ああ、怖い。もういい、この際だから全部言おう。

「うん…三森さんは、僕と違って明るいし、みんなに優しいし、人気者だし。だから、僕、三森さんと話そうとすると、どうしても、怖いんだ。僕が、話しかけたって、迷惑じゃないか?とか、無視されるんじゃないか?とか、考えちゃって、それで…、話しかけたことで、嫌われるんじゃないかって…」

全部言った。

こう思うようになったのも、あの出来事のせいだ。

だけど、今はそれを思い出している場合じゃない。そんなことはわかっている。

僕は、今、どんな顔をしているんだろう。わからない。もしかしたら、半分、泣いてしまっているかもしれない。ただ、わからない。僕は下を向いた。

「私が、話しかけられただけで嫌う?それはないよ。むしろ、話しかけられると嬉しいし。だって、私、人と喋るのが1番好きだもん!」

え…今なんて…嬉しい?話しかけられるのが?

「え…」

「だから、凪音くん。これからはいつもより、明るく接してほしいな。」

明るく接する?無理だよ。それは、無理だよ…だけど…

「わ…わかった…ありがとう…」

こうとしか、言えないじゃないか…

「これから、よろしくね。」

よろしく?いや、よろしくって…

「うん。」

今の僕には「うん」ということしかできなかった。

「じゃあ、私、習い事あるから帰るね。また明日!」

「うん。」

三森さんは帰って行った。僕は、1人公園のベンチで顔を伏せて座っていた。なんで…なんで…三森さんは僕と仲良くしたいんだ…?わからない。

変わりたい。自分を変えたい。三森さんと、明るく話せるようになりたい。

だけど、でも、どうしても、過去のことが脳裏をよぎる。

変えられない。

帰ろう…

帰って寝よう。

そう思い帰路についた。

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