018.二次元オタクな双子兄弟と双子姉妹・後編
五月十四日、夜───
〜夢薫目線〜
「いやぁ…。夢那さん…まあは本当バカでさ?ゴムも用意してないのに、興奮しちゃって勢いでいけるかと思ったみたいけど、やっぱりそんなハジメテはダメだって気づいて…余興のつもりで近づけただけだってさ?その時、夢那さんにもの凄く抵抗されて突き飛ばされて、靴も履かず出てっちゃって、暫く放心状態だったって。まあは兄貴だけど、僕から叱っといたからさ…?」
双子ってどこまでシンクロしてるのって、この時のウチは驚きを隠せなかった。
先程まで公園の入り口辺りで、暫く悠斗達は話し込んでいたが、こんな事を話していたとは。
しかも、兄の雅幸さんではなく、弟の悠斗が夢那に向かって、言い分を代弁しているところから見て、かなり落ち込んで居るのだろう。
「あの時、雅幸は凄く…怖い顔してたから…。私のこと、ハジメテだけ奪うような…遊び目的だったのかなって…。でも、違ったのなら…良かった。」
確かに、悠斗はオタク風だからいいけれど、双子の兄の雅幸さんは見るから不良風だから、ウチから見ても不安になる。
中身も悠斗と同じなら良いけれど、ウチと夢那でも少しは個性があるので、絶対に同じではないので、余計に不安になるのは分かる。
「夢那、ごめんなさい。だから…今から、コンビニ寄って…続きしないか?」
ああ、そうだ!!
「悠斗、うちらもコンビニ!!」
「その前にさ…?僕たち…このまま、進んでもいいのか?特に…夢那さんと僕だが…。」
確かに…。
ウチと夢那の双子姉妹。
雅幸さんと悠斗の双子兄弟。
双子姉妹は悠斗が【好き】。
双子兄妹は夢那が【好き】。
気持ちに決着がつかないまま…今夜、ハジメテ捧げ合っても、モヤモヤしたままだ。
「そうね!!じゃあ…?夢那の双子の姉として、そちらの双子兄弟へ提案するわ!!一度、恋人関係はお互い解消して、友達以上恋人未満は継続。その間、体を重ねるのは一切無し。それ以外はご自由に。それから…今、連絡先を四人で交換。恋人じゃないから、連絡取り合うのも自由だし、会うのも自由。泊まるのも自由。それでどうかしら?」
意外にも、満場一致だった。
それからスマホの番号を交換し合い、インスカも友コードを送り合って、友人登録した。
お互いの家に荷物を置いてきているので、とりあえず今日は雅幸さんと夢那のペア、悠斗とウチのペアのまま泊まりは継続することに。
明日は、自由行動ということでペアは解消する流れになっている。
「コンビニで、ゴム…買えなくなっちゃったね?」
「僕…本気で、夢薫とするつもりでいたんだからな?」
「じゃあ…さぁ?お互い…味見しよっか?体を重ねることだけダメにしたのは…そういう事だからね?ダメ…?」
「いいよ。」
断られるかと思っていたけれど、案外…悠斗は寛容だった。
明日には、夢那がウチと同じこと…悠斗にするかも知れないから…負けたくなかった。
三十分後───
〜夢那目線〜
お姉ちゃんの提案で、雅幸との恋人関係は解消した。
その瞬間、完全にお姉ちゃんは、私にとっての恋敵になった。
もう、笠森くんの件に関しては、双子の姉だろうと容赦はしない。
明日になったら、速攻で悠斗くんにアプローチをかけていく。
悠斗くんだって…私からの連絡を、待ってる筈だから。
でも…雅幸のお母様は、私のママと親友だ。
色々と今の環境で生きてく為には、雅幸とも仲良くはしておきたい。
でも、写真の嘘の件のせいで、凄くモヤモヤしている。
何故…あの時の悠斗に、雅幸は成り代わろうとしたのだろうかと…。
──ガチャッ…
──ギィィィィッ…
先程まで、ゴムを買うはずだったコンビニで、お姉ちゃん達と買い物をしていたのが、お姉ちゃんに私達は奢って貰ってしまった。
流石、笠森くんを巡る恋敵であっても、お姉ちゃんはお姉ちゃんだった。
そして、ようやく雅幸の部屋の前まで私達は戻ってきたのだ。
「今日は…全部、俺が悪かった…。夢那…本当にゴメン…!!」
玄関のドアを開けた雅幸は、突然私に謝ってきた。
「もう…雅幸、謝らないで?甘い覚悟でいた私も…悪かったと思うし…ね?あの…ね?聞きたいことがあるんだけど…良いかな?」
「うん…。何…かな?」
「なんで…雅幸は、あの頃の笠森くんに、成り代わろうとしたのかな?」
どうせ…もう、彼氏ではないから。
モヤモヤしていること、聞いてしまおうと思った。
「夢那に…俺の方、振り向いて欲しくて。弟じゃなくて、俺を…。」
「私…雅幸のこと、ちゃんと…見てなかったのかな?」
「ああ。いつも夢那は…俺の先の方、見てたからな…。それで…あの写真見た時の夢那の反応見て…確信したんだ。夢那は、俺に悠斗を重ねて見てるって…。」
私は、最悪だ…。
彼氏と雅幸を認めた筈だったのに…。
知らぬ間に笠森くんを重ねて見ていたのか…。
「最低だね…私。雅幸のこと…そこまで追い詰めてしまってたんだよね…。」
「そう言って…今だって、弟のこと考えてるだろ?」
確かに…図星だった。
でも、もう雅幸は…私の彼氏では無いのだから、笠森くんの事を考えていても良いはずだ。
そんな事考えながら居室へと進むと、夕方に複合商業施設へと二人でデートした時、雅幸に買って貰った、下着メーカーのショップバッグが私の目に飛び込んできた。
「うぅぅぅっ…。」
確かに、あの時…二人の間には誰も邪魔する事の出来ない、愛が存在したのだ。
そう思ったら、何故だか…胸が急に苦しくなって、目から涙が溢れ出てきて、ポタポタと零れ落ち始めた。
どうしたんだろう…私。
こんな気持ちになるのは、生まれて初めてだった。
「うぅっ…。涙が止まらない…。胸がキュゥって…苦しい…。うぅぅぅっ…。」
──ギュッ…
突然、無言で後ろから誰かが私に抱きついてきた。
この部屋で、私の他に居るのは…雅幸だけだと知っているのに…。
認めたくなかった…。
本当に…私は、漫画とかアニメとかで良く見かける…ズルい女だと思う…。
「俺…。夢那の事…今でも、大【好き】だ…。だから…。夢那の事…大【好き】なままで居たいから…。俺から…サヨウナラ…するぜ。本当に…僅かな時間だったけど…幸せだった…。ありがとう。」
──スッ…
急に…今まで背後にあった、雅幸の温かい感触が無くなった…。
すると…先程よりも増して、胸がギュウッと締め付けられる感覚と共に、涙がとめどなく溢れ出てきている。
「さてと…。これで、俺と夢那は終わった訳だが、今夜はどうする?家、帰るなら友達として送ってくぞ?」
「い、嫌だ…よっ。」
自分でも何を言っているのか分からなかった。
頭の中では笠森くんのこと考えているのに…心の中は違っているみたいだった。
三十分後───
〜夢薫目線〜
「あ、明日…どうしようか?」
「明日起きたら…さっきの続き、またしない?」
先程、ウチが悠斗に提案したことを…コンビニから帰ってきてすぐ、有言実行していた。
紀江さんから得た知識で、ウチの方は問題無かった。
悠斗の方は、多少手こずっていたが…何とか及第点まではいけた気がする。
でも、恋人同士でもないのに…そんなことしても良かったのかなとは思ったが、済んだことは仕方ない。
「ちょっと…夢薫の負担のこと考えると、僕ばっかり良い思いして、不公平かなって思っちゃってさ?」
絶対、悠斗は良い旦那さんになると思う。
気配りが出来すぎて…。
だから、夢那の方から告白してくるの、悠斗はずっと待ってたのかな…とか思った。
でも、悠斗の件に関しては、夢那は恋敵だから、妹だからって容赦なくいくからね?
「ううん?全然、不公平じゃないから!!じゃあ、明日起きたら続きしようねー?」




