015.初キス相手の二人はハジメテしたい・後編 〜夢那〜
五月十四日、夕方────
「で、夢那。金あんのか?俺が…買ってやろうか?」
「ううん、大丈夫。ママが離婚した翌日、私の姉がね?インスカのコーリーチップス機能でポイントくれたから…。」
何故かあの後、雅幸が今日家に泊まっていくように、私に迫ってきたのだ。
仕方ないので、私の着替えを揃えるため、二人は少し路線バスに乗り、地元の複合商業施設まできていた。
「いや。下着代くらい…俺に払わせてくれ。俺が…汚したり壊すかもしれないし…さ?」
絶対…そういうこと、私とするつもりなんだ。
でも、雅幸だったら良いかな…。
お互い…さっきの話の興奮冷めやらぬうちに、出てきてしまっているのだ。
「なら…。雅幸に買って貰おうかな…。じゃあ…私と一緒に雅幸も選んでくれる?」
「マジかよ…。まぁ…良いけどな?恋人同士だしな…俺達。」
──ムギュッ…
そういうこと雅幸が言うから、私もついつい調子に乗ってしまい、腕に胸を押し付けるように抱きついた。
ジッと雅幸の方を見上げているが、耳まで赤くしていて、目線を合わせてくれない。
──ゴーン…ゴーン…ゴーン…ゴーン…
十七時を知らせる鐘の音が館内に響いた。
使用人の方とは、買い物中によく聞いていたけれど、彼氏と一緒に聞くのは初めての経験だった。
「なんか…チャペルに居るみたいだよね?」
「そ、そうだな…。いつかチャペルで…ホンモノ一緒に聞こうな?」
催促したみたいになってしまったが、雅幸が私の方を見て言ってくれたので、凄く嬉しくてたまらなかった。
──ギュウウウウッ…
「うんっ…。雅幸っ…!!大【好き】だよっ…!!」
「俺は夢那と初キスしたあの日から…ずっと大【好き】だから安心しろ。」
私だってって言おうとしたが、笠森くん違いを今日までしていたので、流石に言うのはやめておいた。
三十分後───
あの後は、私が行きつけだった女性下着メーカー直営のテナントへ、二人で立ち寄った。
事情など知らない馴染みの店員さんは、普段通り高級ラインの下着を薦めてきた。
話題を変えようと雅幸のことを紹介すると、風貌を見て何か思うところがあったのか、では多少でも耐久性があった方が…と、大人っぽい通常ラインを勧めてくれた。
まぁ、きっと…そういう事だろう。
そこでは、宣言通り…雅幸が財布を出して買ってくれた。
それから、商業施設内を少しだけまわって制服デートを楽しんだ。
そして帰り際、私服を探しに…ロゴが一切ないシンプルデザインな衣類からインテリア、食品等の自社製品のみ取り揃えるブランドのフロアへと寄った。
すると、私に着せたい服を雅幸が選び始め、試着室ではファッションショーみたいで、楽しかった。
結局、上下で数着選び私達はレジの列へと並んだの。
数分後、ようやくレジの番が来て、店員さんが商品をスキャンし始めた。
また雅幸が財布を取り出そうとしたが、みるみるレジの金額が上がっていき、雅幸はそっと財布をしまった。
さっき、私の下着を買ってくれたのだから、仕方ない。
だから、私は夢薫ちゃんから貰ったポイントを、買う金額分だけコード決済に使えるポイントに交換して、支払ったのだ。
本当に夢薫ちゃんには感謝しなければ。
──ガチャッ…
──ギィィッ…
「ただいま!!母さん、ちょっと遅くなっちまった!!」
実はもう…私達は、雅幸のアパートの部屋の前に居て、まさに今…玄関のドアを開けたところだった。
「もーっ!!夢那ちゃんとゆーっくり話せると思って、急いで帰ってきたのにー!!」
玄関を入ると、綺麗な女性がキッチンで料理をしていて、少し怒った表情で雅幸の方を見ている。
「わぁ!?ほんっと、夢美の若い頃にそっくりー!!本当にあの夢美の娘さんなのねー!!」
何で…雅幸のお母様が、私のママのことを知ってるの?
急に、ママの名前が…私と初対面の女性の口から出てきて、びっくりしてしまった。
「急にビックリしたよな?夢那、ゴメンな?実は…俺、母さんに夢那と、夢美さんのこと話したんだよ…昨日。」
「私も雅幸から聞いてビックリしたわよ?だって…息子の彼女が、私の親友の杉崎夢美の娘さんなんだものー!!」
また…ママの親友、登場みたいだ。
しかも、彼氏のお母様が…ママの親友だなんて。
「ああああっ!!」
それであることを私は思い出した。
すっかり…雅幸との制服デートで浮かれていた。
「どうした!?」
「ま、ママに…今日は雅幸の家で夕飯ご馳走になるって…連絡するの忘れてたのぉ!!」
「フッフッフッフッ…!!夢那ちゃん?今から、夢美に電話してもらっても良いかしら?」
「はいっ!!」
──タン…タンタン…タン…
──ヴヴヴヴッ…ヴヴヴヴッ…
慌ててスマホを通学バッグから取り出すと、ママへと電話を掛けた。
「どうぞ…!!」
「夢那ちゃん、ありがとー!!」
発信状態にして、雅幸のお母様へとスマホを手渡すと、丁度いいタイミングで通話状態に画面が変わった。
──「もしもーし?夢那?帰り、遅いけど…大丈夫?」
悪戯っぽい顔をした雅幸のお母様が、スピーカーモードへと通話を切り替えた。
「うーん…。ごめーん、ママぁ!!彼氏とぉー?ハメ外しちゃってまーす!!」
──「えっ?!夢那…ふざけてないで…って?!えっ!?」
「はぁーい!!海野茉由華十五歳でぇーす!!」
──「やっぱり!!マユなの?!でも、何で…?」
「はーいっ!!夢美に問題でーすっ!!大ヒント問題だからねー?夢那ちゃんの彼氏のー苗字は何?」
──「雅幸くんでしょ?う…海野。ええええっ!?そう言うことなの?!嘘でしょ!?」
「正解っ!!てなわけでー?ユミのー可愛い娘はー?今日はーあたしの息子が預かるからねー?」
──「マユ!!ちょっ…とまだ、電話切らないでて?待ってて!!」
ママはそう言うと、部屋を出ていくような音が聞こえた。
──ドンドンドンドン!!
──ガチャッ…
どこかの部屋のドアを叩く音と、ドアが開く音が聞こえてきた。
この時点で、ママがどこへと向かったのか、私は理解した。
電話の向こうでは、ママが小さな声で何か言っている。
──「マーユっ?」
「えっ…!?サキ?!」
──「当たり!!今さー?ユミ親子の面倒、私が見てるといっても過言じゃないわけよ?」
──「もー良いからさー?マユも早くこっち来なよー?住んでる場所の位置情報、リンクで送るからさー?」
「うん!!いくいくー!!早く送ってー?」
この会話の内容から、ママ、幸さん、茉由華さんが中学時代の親友同士という事が理解できた。
電話を切ると、茉由華さんは先程途中になっていた料理の続きを、黙々とし始めた。
そして、夕飯の支度を終えた茉由華さんは、私達に夕食は食べられる量で、無理しないでいいからと伝えると、ママ達のいるアパートへと向かうため、慌てて部屋から出掛けて行ってしまった。
一時間後───
騒がしかった部屋には、夕食を終えた…雅幸と私の二人きりになった。
「それじゃあ…夢那?ハジメテしても…良いか?」
「うん…っ。雅幸なら…良いよ?」
──ドサッ…
「きゃっ?!いっ…いきなり…!?」
「これでも…な?今日…一緒に買い物してる時から…。ずっと…夢那とシたいの、我慢してたんだぜ?」
──ジジジジィィィィッ…
「それで…。夢那がさ…?思い描くハジメテは…どんな感じ…なんだ?」
──グイッ…
「い、いきなり…されるの…い、嫌だよ…っ。」
「そうか?俺は…いきなりが…っ!!良いんだけどな!!」
「ダメダメダメダメダメダメダメダメ…。」
「夢那…?大丈夫だから…さ?俺と…ハジメテしようぜ…っ!!」




