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君の”神推し“になりたくて  作者: 茉莉鵶
第一章.三年前
12/18

012.ビジネス彼氏のハズだったのに・後編 〜夢那〜


五月十二日、朝────


 何で…こうなってるんだっけ…。


 「えっ…と、お…ぼ、僕の名前は…海野雅幸と申します。」


 本来なら、登校前に雅幸が私をアパートまで迎えに来るという話だった。

 あの後、どういう訳か、幸さんの部屋へと雅幸は連れて行かれてしまった。

 そうなれば、ビジネス彼女である私もついて行かざるを得なかった。


 「では…雅幸くん。夢那とはどこで出逢ったのかな?」


 先程まで朝食を囲んでいた、四人掛けの食卓へと、ママと幸さん、雅幸と私で対面になるように、座らされた。

 その状態で、ママが雅幸に質問し始めたのだ。

 因みに、ママと幸さんの自己紹介は既に終えている。


 「昨日、夢那が僕のクラスへ転入してきて、隣の席になったので…賎宮中の教室で、です。」


 良かった…。

 嘘つかずにちゃんと出逢いを言ってくれている。

 なんだか嬉しい気持ちになってきた。


 「嘘でしょ?!き、昨日なの!?てことは、付き合うきっかけって…。あんまり無いとは思うけど、聞いても良い?」


 いつもなら、冷静に状況を読み取り、ワンテンポ遅らせてくるママにしては珍しく、雅幸の言葉にすぐ喰らいついてきた。


 「きっかけは、共通の趣味ですね。いや、でも…強いて言えば、うーん…僕の一目惚れです。あの、今日は…この位で勘弁して頂けないでしょうか?ここからだと、学校まで結構かかるんで…。」


 確かに…【ユメリルナ】が好きで、アニメが好きで…共通の趣味に間違いない。

 本当に、こんなことしている暇はないのだ。

 昨日だって、賎宮中に着くまで案外時間がかかった。


 「ほ、本当に…共通の趣味がきっかけなの?この際、ハッキリ言わせてもらうけど…夢那はね?エッチな衣装の美少女アニメを観るのが趣味な、二次元オタクなのよ?」


 もう…ママ、そこまで言わなくても良いのに…。

 それに、【ユメリルナ】はエッチな女の子じゃないから!!


 「はいっ!!本当です!!だから、夢那が…二次元オタクってところが凄く嬉しいです!!」


 どうしてだろう…。

 熱のこもった雅幸の言葉を聞いているうち、胸がドキドキし始めた。


 「これでも…俺!!賎宮中でアニメ研究部の部長してますので!!だから…俺と夢那の相性、凄く良いと思います。なので…夢美さん、俺と夢那の交際認めて貰えませんでしょうか!!」


 そして…その言葉を聞き終わる頃には、雅幸に反応して…私の下腹部辺りがキュンとしたのが分かった。


 「雅幸くん?あなたには負けたわ。夢那のこと…心から幸せにしてあげてね?あなた達と同じくらいの年の頃、私は…身も心も幸せで満たされてたから。」


 「はいっ!!絶対…幸せにしてみせます!!」


 ビジネス彼氏のハズだったんだけどな…雅幸。

 もうママ公認の彼氏みたいになってるし…。


 「あと…これだけは約束してくれるかな?好きなだけ、夢那とエッチしても良いんだけど…もし、出来たからって…夢那のこと、捨てるのは許さないから。」


 「俺、母子家庭なんで…。どこかのクソ野郎みたいな真似、絶対しませんよ。約束します!!」


 母親と自分を捨てた父親のこと、雅幸が許せないのは当然だと思う。


 でも、私のパパのついては、ママが離婚した理由を教えてくれないので、何とも言えない。

 それに、ママと一緒に追い出されなければ、雅幸達に出逢えていなかったから。

 あと、スマホを解約せずにいてくれてることも、パパには感謝してる。



二十分後────


 あの後、ママから解放された私達は、急ぎ足でアパートを後にした。

 今は、車通りの多い狭い歩道を、雅幸と一列に並んで歩いていた。

 でも、私の着ている制服が昼陽学園のままなので、雅幸のワルそうな外見も相まって、どうしても目立ってしまうようだ。


 賎宮中の指定の制服については、幸さんの知り合いに譲って貰うことが出来たようだ。

 その制服は現在、制服屋さんにメンテナンスも兼ねてクリーニングへ出したと聞いた。


 「あの…本音を聞かせて?雅幸は、私と…エッチしたい?」


 自分でも何を言ってるのかもう分からない。

 ママと雅幸が、あの話をした後からだ…。

 あれから…雅幸の近くにいると、胸のドキドキがおさまる気配がない。


 「本当は…夢那と凄くしたい。でも、俺は決めたんだ。夢那がしたいって心から思えるまで、俺はしないって。」


 そこまで私のこと、想ってくれてるんだって思った。

 だったら私も…怖いけど…今の気持ち、雅幸に伝えなくちゃって、思った。


 「私も…雅幸とね?凄くしてみたい…気分だよ?だから、ビジネス彼氏はね…?もう…おしまいにしよ?」


 ああ、言っちゃった。

 青春って長いようで、本当は短い。

 学校での時間や勉強が大半を占めてしまう。

 もう…大事な青春の時間、私は…躊躇わない。


 躊躇い続けた結果が、突然の両親の離婚で私の中等部編の全イベントが強制終了だったからだ。


 「はあ…っ?!俺の気持ちを確認するとばかり思ってた…。まだ、俺達昨日出逢ったばかりだぞ?まぁ…俺がこんなこと言うのも変だけどさ…。」


 「ありがとう!!良かったぁ…。安心した…。雅幸がちゃんと考えてくれる彼氏で!!でも…ね?ビジネス彼氏は…もう要らない。雅幸は、彼氏が…良いな。」


 ちょっと、雅幸のことを試したところも実はあった。

 あれで、すぐに私の身体…求めてくるようなら、やっぱり考え直そうと思ってた。


 あと…口では絶対に言わないけれど、雅幸はふとした瞬間や仕草が…君に似ている。

 折角、君のこと…忘れようと思ったけど、結局…君の影が目の前でチラつくんだ。

 どうせ叶わないなら…もうジェネリックで良い。

 それで私の心、満たそうって思った。


 そうしたら、すんなり雅幸のこと【好き】になれた。

 身も心も…雅幸に恋をし始めることが出来た。


 「夢那って結構、我儘に育ったんだな?」


 「それは、次女の特権ってことで良いかねぇ?なぁ、きみぃ?」


 「俺、こう見えても長男だからな?ってか、その言い方ヤバいだろ?」


 本当にヤバい…引かれたかも知れない。

 昼陽学園時代の二次元オタクの私が、口調となって表に出てきてしまった。


 「ふっふっふ…。それくらい感じ取っているさ!!きみは一体、私を誰だと思っているんだい?」


 やめようと思えば思うほど、どういう訳かオタク全開な言葉が口から出てきてしまう。


 「清楚でライトなオタク系女子かと思ってたけど、マジでガチ中のガチな二次元オタク女子なんだな?そりゃ、夢美さんも俺に念押しの最後通牒みたいのする訳だわ…。」


 「もし、私のことは嫌いになっても、【ユメリルナ】のことは嫌いにならないで下さい!!」


 本当に終わった…。

 痛すぎる…。

 はぁ、こんなことクラス内で平気で言ってたから…彼氏、出来なかったんだね…。


 「本当にどうした?頭、おかしくなったのか?」


 「いいや?頭なんておかしくなってないさぁ!!そもそも、これが私なのだからなぁ?はっはっはっ!!」


 あーもう。

 振られる前に、雅幸と…キスしておきたい…。

 もう、二度とこんな…優男な男子と付き合えることなんて、無いだろうし。


 「もういいから、ちょっと…黙れ。」


 ──チュッ…


 「んっ…?!んんっ…。」


 優しく雅幸の唇が私の唇に触れ、重なった…。


 ファーストキスは…もう君と、幼稚園上がる前の公園で…済んでいるから、良いよね?

 家族以外の異性とは…それを入れて二回目だ。


 「はぁ…。全く、暴走しやがって。ちょっとは落ち着いたか?」


 でも、ここは通学路の歩道の上だ。

 他の生徒たちにも、絶対目撃されている。


 「うん…。でも、雅幸がここで私の…彼氏になってくれないと、もっと暴走しちゃうかな…。」


 「分かったよ。夢那のビジネス彼氏辞めて、彼氏になるからさ?だから、頼むから早く…学校行こうぜ?」


 結構、私も素の自分を押し殺して…昨日から無理していたんだと思う。

 今日からはいつも通りの私で生きようと思う。

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