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2、転入生が来るみたいだよ

「ねえ、今日から新入生が来るみたいだよ」


制服のネクタイを締めながら、明るい声で少年が告げた。


翡翠色の髪と、同じ色の大きな瞳を輝かせている。

しかし不器用なのか、首にかけたネクタイがうまく巻けず、悪戦苦闘しているようだ。


「新入生……? 新学期でもないこんな時期にですか?」


隣に立っていた黒髪の生徒は、眼鏡を押し上げて訝しげに聞き直した。

シャツには皺一つなく、髪の毛一本乱れがない。

身だしなみから、彼の几帳面な性格が現れている。


「うん、後輩たちが校門の前で見たって言ってたから間違いないよ、レヴィン」


翡翠の髪の少年の周りには、淡い光の玉がふわふわと何個も浮いている。

まるで意志のある生き物のように、身支度にもたついている少年を囲んで浮いている。


「へえ。ではこれから行う朝礼で紹介があるかもしれませんね」


レヴィンと呼ばれた眼鏡の青年は、痺れを切らせ翡翠の髪の少年のネクタイを素早く直す。

ありがとう、と礼を言う少年。


「そいつ、男か? 強そうだったか?」


翡翠色の少年から頭一つ背の高い男は、話に興味を持ったのか尋ねてくる。


「いいや、女の子だって、ギルバート」


「はっ、つまんねぇな。男なら俺が根性つけてやってもよかったのに」


新入生が女だと聞いて一気に興味を失ったのか、ギルバートと呼ばれた男は屈強な腕を回しながら伸びをした。


「入学早々、ギルバートに目をつけられなくて新入生も安心ですね」


「なんか言ったか?」


「いえ」


苦笑しながらチクリと嫌味を言うレヴィンに、ギルバートは睨みを効かせた。


「でもすっごく可愛い子だったって! 楽しみだねぇ」


自分の周囲に飛ぶ光の玉を撫でる少年に、


「可愛い子なのは結構ですけど、またすぐに『食べちゃ』ダメですよ、ローレン」


レヴィンが眼鏡を押し上げながら注意する。

ローレンと呼ばれた少年は舌を出しながら、照れたように頭を掻く。


「気をつけるよ。ねね、オスカーも気になるでしょ?」


今までずっと無言であった赤髪の青年に、ローレンは無邪気に話しかける。


「……私には関係ない」


オスカーは少しだけローレンに目配せをしただけで一言告げると、すぐにまた目を伏せてしまった。

濃紺の制服だけでなく、黒い皮の手袋を両手につけたオスカーは、憮然とした表情だ。


「さ、噂話はこのくらいにして、広場に向かいましょう。委員長の我々が遅刻するわけにはいかないですからね」


レヴィンがそう声をかけ、他三人の生徒たちは各々返事をして寮の入り口の部屋を開けた。


学園の門をくぐると、同じく濃紺の服に身を包んだ男女様々な生徒が彼らを迎える。


頭から角が生えた者、背中に羽を生やしている者、牙が生えている者。


様々な異形の悪魔は、しかし皆尊敬の意を込め、門から入ってきた四人に頭を下げる。

個性豊かだが、四人とも整った顔立ちと絶大なる魔力を持っているせいで、どうしても目を引く存在である。



「暴食のローレン」、「破壊のギルバート」、「黒炎のオスカー」、「傀儡のレヴィン」。


この四人が、悪魔たちが通う学園、「ヴィンスガーデン・アカデミー」の委員長なのだから。

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