影は闇を呼ぶ。3
宿についてもヒスイの怒りは収まらなかった。
「ここの宿、ぼったくりですよ! 食事付きだとほとんど路銀がなくなるところでしたよ? もらったばかりだというのに」
「まあ、国柄もあるだろうし、旅人がいないから値を張り上げたんだろうね。私もあの金額は初めて見たけど」
こないだ和ノ国でもらった路銀の約八割をとられた私たちはこれから節約生活をしなければいけない。
そして宿代はこの国ではもう払えない。
ヒスイの感情的にもこの国は早く出たほうが良さげだ。
あの穏やかなヒスイの頬がずっと膨れ上がっている。
「それにしても嫌な噂が多いね、この国は」
ベッドに腰を下ろすと今までに聞いた話を振り返った。
若い者が衛兵に罪人として捕らえられている。
その人たちが生贄とされている。
その生贄の先が王女であること。
噂は人々が話していたし、あの男も宿主も話していた。
全員が城下町に行くことを反対したのだ。
「ホワイト王国は王女様が国を治めているそうですね、なんでもまだ十六歳だとか」
「先代国王が歳を取ってからできた一人娘らしい。国王は病気で亡くなって王女が治めている。でも王女の姿をほとんどの国民が見かけたことがないから王女はいないという噂さえある」
「他にも王女が吸血鬼との間に生まれたからその生贄とも言われていますよね。噂は多いですが、どれが本当なのでしょう」
「まあ、ここでの情報は諦めて次の国に行った方が良さげだね」
王女に問題があるとすれば魔王の話をしたところで相手にはしてもらえない。
ましてや反逆の意や侮辱罪で捕らえられる可能性もある。
王女が政務を行なっていないならこの情報はあってもなくてもこの国は荒んでいくだろう。
「国境はどこにあるだろう? 地図ある?」
「はい、確か鞄にあります」
ヒスイは鞄を漁って地図を取り出す。
地図は和ノ国でもらった周辺の地図だ。
この国のことだからまた国境を越えるのにお金はかかるかもしれないが、あるうちに出してしまった方がいい。
「今はホワイト王国西部のランコです。国境は西と南が和ノ国、東と北がジニア王国に繋がっています」
「じゃあ一番近い経路だと北部国境が近いね。北部国境までは……」
そこで私たちは肩を落とした。
北部国境は城下町の中心を通らなければならない。
「えっと、東部国境は?」
「ダメです。東部国境は城の裏なので事実上ないものと思わないと」
「結局城下町に行かなきゃいけないのね」
悪い噂が流れる城下町に足を踏み入れるのは気が進まないが国を出るためには仕方がない。
「明け方に出よう。それなら城下町も静かだろう。ホワイト王国は領土が狭いしすぐに出られるはずだ」




