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影は闇を呼ぶ。2
体が軽くなったと思ったのも束の間。
私はヒスイによって抱き抱えられていた。
「大丈夫です。それに妻は体調を崩していまして。早く宿を探さなければいけないのです。城下町は明日にさせて頂こうと思います。ありがとうございました」
機転の効いた嘘だ。
私の体に男が触っていることをすぐに察知したのだろう。
それか下心に気づいたか。
おそらくともヒスイの心情は穏やかではない。
今にも炎が出そうな魔力の波が伝わってくる。
男は妻という単語に肩を落としながらも怪訝な顔でヒスイを睨みつけた。
その目も他の人の目も気にせず、ヒスイは私を抱えて歩き出したのだった。
「ヒスイありがたいんだけど、もうそろそろ……」
「あの男、呪いましょうか」
本気に聞こえるヒスイの声のトーンと嘘みたいに煮えたぎる笑顔は今の状況を覆せないほどヒスイが怒った様子を表している。
「呪いはほどほどに……」
肩に回した手で宥めながら使えそうなヒスイの呪いを頭の中で思い出していく。
ヒスイの魔力ならかなりいろんな呪いが使えてしまう。
だが、流石に呪いをかけはしないだろうと一度思考を止めるのだった。
そうして宿までヒスイは私を抱えたまま歩くのだった。




