影は闇を呼ぶ。1
ここからホワイト王国編です!
数々の遺体を見ながら森を素早く抜ける。
段々と人たちの声が聞こえ始め、森が終わりを告げる。
ヒスイの魔力と私の魔力は尽きることなく森を抜けられたようだ。
眩しい光が私たちを包む。
その光に突き進んでいくと、広い通りに出た。
そこは街と呼ぶにふさわしい、カラフルな建物や店、綺麗な格好をした人たちが歩くまさにホワイト王国らしい景色が広がっていた。
「なんとか生きて出られましたね」
「ああ、この街の様子からは考えることができないくらい残酷な森だ」
上品な笑い方をして歩く女性たち、日傘を差してゆっくりと歩くご婦人、スーツを着て背筋を伸ばして歩く男性、杖をつきながらも貴族の印をつけた老人。
ここは権力と富の国。
貧富の差など見せつけない高価な国、それがホワイト王国だ。
「綺麗な街並みですね」
「ああ、薄汚さを感じさせない。私からしたら気味が悪いけどね」
金がなくなった国民は追放に近い形で国を出される。
そうして貴族やら偉い人間が残りこの街の景色が今もなお存在する。
先先代国王は気難しく、富と栄誉を気にする人だったから今もその風潮を残しているのだろう。
「君たち、珍しいところから出てくるね」
私たちが景色に気を取られていると、身なりのいい男が近寄ってくる。
こういった国では言葉遣い、身分差を気にする。
旅人は寄り付かないような国だ。
私たちは珍しいもの扱いだろう。
「こんにちは。旅をしていて迷い込んだのですが、出てみたらこんな素敵な街に出られたので良かったと思っているところです」
和ノ国で慣れてきた敬語を使い、上品に微笑んでみせる。
ヒスイも私の様子に気づいたのか会釈をして話を合わせた。
「旅人様でいらっしゃいますか! 珍しいですね。この国は旅人様がなかなかおらず世間が狭くなっていましてね。きっと宿に行ったら歓迎されますよ。最も宿が少ないので空いていればの話ですが」
この森は外からはただの森に見える。
つまりは国民にはこの森の正体を知らせていない。
だから珍しくはあるものの、気味悪がられることはないようだ。
宿が少ないと言っていたからよほど旅人の中では不評な国になったのだろう。
身分を気にする国など、踏み入れたくない旅人は多い。
旅人はほとんどが身分証を持っていない。
身分証は貴族や衛兵にしか与えられないからだ。
貴族が自ら旅に出るなどあり得ないこの時代、旅人を下に見る者は多い。
この男も何か企んでいるに違いない。
「それにしてもお綺麗な方ですね。まるで人形のようだ。ぜひ私のモデルになっていただきたいものです」
指のインクの跡からして彼は画家か何かだろう。
芸術の街ではないからそんなに需要もないだろうが、この国で過ごしていけるのであれば売れている画家、あるいは宮廷に仕えている家の絵師だろう。
「恐れ多い言葉感謝します。ですが、城下町に行かなければいけないもので……」
「城下町には入らない方がよろしいかと」
キッパリと言われたその言葉に嫌な予感を走らせる。
気味の悪い笑顔も消え、怪訝な顔で城下町を見つめている。
私たちに向けられた訳ではなくとも城下町に向けられた目は闇を見ているかのような目だ。
「理由を聞いてもいいですか?」
ヒスイも恐る恐る聞き返す。
すると男性は私に顔を近づけてきて小声で話す。
「城下町は今荒れていましてね、衛兵が次々に人をさらっているというのです。まあ罪人と言われていますが。でも私たち外郭の人間はこう言っているのですよ。生贄を連れ去っているのではないかと」
決して平穏な言葉ではない言葉が耳に響く。
「それに狙うのは若い者ばかりでして。どこかに売っているかもしくは王女に捧げられているかと噂もされていましてね」
「王女に?」
そこまで言うと男はゆっくりと私の背中を撫でた。
ヒスイには見えないように。
ぞくりと背筋が張るのがわかる。
下心という名が似合う男だとは思っていたが、昼間の街中で手を出してくるとは思いもしなかった。
その手はゆっくり下へと移っていく。
「続きを知りたいですか?」
ニヤニヤと笑う男はこのまま私だけを連れていく気だろう。
情報はかなり持っていると思われるが全てが噂話だ。
信憑性は薄い。
すると私の体が軽くなった。




