白い森。1
国境を越えると長老の言う通り二つの道に分かれていた。
目の前には平坦な道が広がっていた。
左には川。右には森が広がっている。
森の方に道は見えないが長老はおそらくこの森のことを示しているのだろう。
「ヒスイ、森を抜ける体力はある?」
「平気です。でも多分この道、魔力で道が開かれるんだと思います。微かにですが安定した魔力の流れがあるので」
「私の魔力じゃ出せないかな? それか私の魔力をヒスイに渡すとか」
旅をしてきて魔力の受け渡しは一度もしたことがない。
だができると聞いたことはある。
私の魔力を注げばヒスイは少し回復するだろう。
でもヒスイは顔を真っ赤にして黙り込んだ。
「どうしたの?」
「ライラさんは魔力に関して疎いんですかね」
どういう意味だろうと考えてみるが、一向に答えが出ない。
確かに戦士やアサシンとの関わりが多いせいで魔力に関しては疎いところがある。
だが、これでも何百年も旅してきた旅人だ。
魔力について人よりは知っているはずだ。
「いいんですか? 魔力をもらっても」
ヒスイは真剣そのものの眼差しで聞き返す。
魔力は人間にとって必要ではあるものの、約一割が残っていれば生きられるという。
そしてその一割は本人から出さないと放出されないため、ヒスイに全て取られることはない。
つまり答えは一つだ。
「もちろん、いいよ」
その瞬間、私の腕をヒスイが掴み私を抱き寄せた。
それと同時に頬に柔らかい感触がきて、顔に熱が走る。
ヒスイの唇が頬に当たっていた。
「え」
一言発した時にはヒスイは離れていた。
満足そうな笑みを浮かべて。
「これで補充できました。やはりライラさんの生きてきた年数を侮ってはいけませんね」
口をポカンと開けているとヒスイは私の腕を掴んで森へと入る。
ヒスイがそのまま何かを呟くと森の中に道が現れる。
それは幻想的な道で、キラキラと光っていたのだ。
だが、私は先ほどの行動の意味がわからずに唖然としていた。
その様子に気付いたのか歩みを進めながらヒスイは私に説明してくれた。
「体に触れると魔力を少しずつその人からもらうことができるのですが、本人が魔力を放出しないと受け取ることはできないんです。放出する条件はどれほど受け取る人間のことを考えるかで放出されます。結果的に不意打ちすることで僕のことを強く考えたライラさんは魔力を放出したというわけです」
「な、なるほど」
「もちろんもっと魔力を受け取るには色々方法はありますが、基本的には今の時代だと恋愛的な意味を持つものばかりなので今回は軽く頬に口づけすることで魔力をもらいました。ですが、ライラさんの魔力は微量でも強いので十分です」
ヒスイは楽しげに話しているように見えるが、ずっと顔が赤いままだ。
ヒスイにとってはかなり度胸が必要だったと思われる。
それでも魔力を欲したということは限界が近かったのだろう。
「私の魔力って強いの?」
突然疑問に思いヒスイに尋ねると歩みは止めずともヒスイは首を傾げた。




