古代魔法と長話。3
古代魔法の解析記録を読んでいる長老の邪魔はできずに一応その場で返事を待つ。
すると、一通り目を通した長老がこちらを向いた。
「国境を越えたいと言っていたな」
「はい」
二人で声を揃えて返事をすると、長老は唸りながら顎の髭を触って考え込み始めた。
ぶつぶつと何かを呟きながら。
「今の時代は戦時代だ。本来なら国の許可がないと個人的な国境門は開けられない」
「そんな……」
ヒスイが肩を落としたその時、その方に長老が手を乗せた。
まるで期待をしているかのような怖いぐらいの笑みで。
「だが、わしは困っている奴を、ましてやこの国に関係のない人間を戦に巻き込みたくはない。だから条件を達成したら門を開けてやろう」
人情があるのかないのかわからない笑みと条件付きの話は口元を引き攣らせるのには十分だった。
「長老、その条件は?」
恐る恐る聞き返すと、長老は元気いっぱいに古代魔法が書かれた正確には解析された文字で書かれた古代魔法の資料を掲げてヒスイに向き直る。
「この古代魔法を使ってくれ!」
「え」
予想もしない答えに私たちは条件を達成することを諦め始めた。
なぜなら古代魔法は人間が成し得ない魔法。
人間が使うにはかなりの魔力とかなりの時間を費やして使えるようにするのだ。
ましてや神たちが使う魔法となれば規模も大きい。
国の争いに巻き込まれかねない魔法だってあれば、世界を大きく動かす魔法だってあるはずだ。
長老はこの国を動かす気はなかなかになさそうだ。
それなのに古代魔法を使えと言うのも謎な話に聞こえる。
長老が掲げる古代魔法の書を見る。
そこにはスイの文字でこう書かれていた。
【天国に咲く花を咲かせる魔法】
それは世界を動かすわけでもなく、争いを呼ぶわけでもない魔法が書かれていた。
スイを疑うわけではないが、これが古代魔法という保証はない。
天国に咲く花は誰もが生きている間は見られないもの。
だから実証できないのだ。
「長老、これって」
「少し、わしの昔話に付き合ってくれるかね」
長老はゆっくりと腰掛け、懐かしむ目でゆっくりと語り始めた。




