古代魔法と長話。2
「それで、お主らは旅に出たのかい」
「はい、それでライラさんと旅をしてきて……」
かれこれ三時間。
ヒスイと長老は話し込んでいた。
スイは話好きな二人組だと話したらしく、もっともっとと話をせがまれる。
だが、不老不死の話や、魔王の話はできないため誤魔化しながら上手く会話をつないでくれているのがヒスイだ。
私は短い途中からの旅を話さなければいけないわけだから思い出すのも大変になる。
だが、ヒスイは私と旅をしている間だけの話をすればいい。
だからこうしてヒスイに任せっきりの三時間を過ごしているのだ。
ただ、ヒスイにも限界があるようで途中から苦笑いが多くなっている。
「ヒスイはなぜ旅に出ることにしたんだ。貴族ならもっといい暮らしもできただろうに」
「長老それは……」
ヒスイに任せっきりだったせいか、長老はヒスイの生い立ちに目をつけた。
貴族が優雅に過ごせるのもこの時勢当たり前のことになってきたが、エテールではまだその傾向はない。
ヒスイの話しづらい話だろうと私が間に入ろうとすると、ヒスイは堂々と胸を張って言った。
「ライラさんに惚れてしまったからです」
間に入ろうとした私が間抜けな顔で動作を止める。
この調子はまずい。
「ほうほう! ライラに惚れ込んでおるのか!」
長老も乗り気になって前屈みで話を進めようとする。
私はここに居づらくなっていて、出されたお茶をただ飲み干した。
「ライラは確かに美人じゃな。この容姿ならすぐに惚れる男も多いじゃろうて」
長老は顎の伸び切った髭を触りながら、私をまじまじと見る。
あまり失礼のない発言と言葉遣いをしなければならないこの国では私の口は災いを呼びかねない。
敬う言葉遣いは苦手なのだ。
だからヒスイに任せていたが、このままだと半日いや、一日かかってしまうかもしれない。
「長老、もうそろそろ……」
「ん? 何か用事でもあるのかね?」
スイは一体どんな話の伝え方をしたのやら。
国境を越える話はまずしていないだろう。
意地悪にも程がある。
「実は僕たちホワイト王国に行きたいんです。旅の目的を果たすために」
「なるほどな」
長老の目つきが変わった。
それは気さくな老人ではなく、管理者の目だ。
私たちがどんな人物なのか、私たちの目的がなんなのか。
自分の管理している門を開けるほどの人物なのかどうかを見定めているように見える。
「これ、スイから預かってきたもの、です」
慣れない言葉遣いをしながら、私は長老にスイから預かったものを渡す。
長老は開いて中身を確認すると、目を丸くして机に書面を置いた。
瞳孔まで開いたかのような真剣ぶりは老人には思えない。
「これは古代魔法! スイはもうそこまで解析しているのか!」
古代魔法とは私が生まれるよりも前、ずっと昔に神や天使、物によっては悪魔などが残した魔法だとされている。
神や天使は人間と共存するようになって、自分達の役割を終えたとこの世界を人間に託したと言われている。
その際に残した文字や魔法は解析が難しく、解析するための書物も少ない。
古代魔法は本当に宮廷魔法師などが取り扱う物なのだから、スイはかなりの天才だ。




