小道の旅路。3
「きっと人の心がありすぎて仕事を失敗して、帰らぬ人となったんじゃないかな。優しさがあるのにアサシンをしているのは珍しいからね」
きっと彼も生活に困って仕方なくしていたのだろう。
そんな話を聞いた気がしないでもない。
「でもその人はライラさんに会えて良かったと思いますよ」
一通りの話を聞いたヒスイが発したのは意外な言葉だった。
アサシンの家に泊まっていたことを否定するかと思ったものだから驚きだ。
「ライラさんに優しさを覚えてもらえていて、一瞬でも人と生活ができて。きっと良かったんだと思います。何より今、ライラさんは楽しそうに話していますからね」
ヒスイに言われて思い出す。
あの頃は確かに楽しいという感情が残っていた。
一緒にいる時間は少なかったけれど、彼の教えてくれることは新鮮で私に楽しさを教えていた。
残酷な話や現場を数々見ているはずなのに、その話を一切せずに私と過ごした。
血に濡れて帰ってくることも多かったが、彼は泣きながら笑っていた。
辛くて、でも私とは笑っていたいという心があったのかもしれない。
「でもちょっと妬けますね」
「え、何に?」
急に頬を膨らますヒスイに困惑しているとヒスイは的確な言葉で私をあしらった。
「その人と互いに好意があったように聞こえるので」
「ま、まあそういう時期があってもいいでしょ」
「それに、下心のある男の人の家に泊まっていたのも聞き捨てなりません!」
「それは生活に困っていたからで……」
今思えば、無謀な生活をしていた。
いつ何が起こるかわからない生活。
あの頃は自分がどうなってもいいと思っていた。
だから自分勝手で、でも自分のことは後回しにしていた。
今思えば、アサシンの彼の家に泊まったのが人を頼りにした最後だったかもしれない。
「まあ、でも私はヒスイに出会えて良かったよ」
ヒスイは不意を突かれたかのように表情を空にした。
アサシンの彼との時間もきっと悪くなかった。
でもヒスイとの旅は楽しくて自分のためになるいい旅だと言える。
その旅をできているのはやはりヒスイのおかげだ。
「これからもよろしく、ヒスイ」
「もちろんです!」
最高の笑顔を見せてくれたヒスイ。
それは最高な旅の再開にはふさわしく思えた。




