小道の旅路。2
「ではお元気で」
町長やケイ、町民と別れとうとう最後にスイと別れる場所まで来た。
ヒスイはゆっくりお辞儀をしてスイに別れを告げた。
「ああ、二人とも元気で」
スイも晴れやかな笑顔で門出を迎えたようだ。
そのまま私たちは別々の道を行く。
スイは山道を、私たちは小道へと向かっていった。
小道の先に和ノ国の中でもかなり古い平琳という町があるという。
平琳は気難しい人が多いらしい。
国境を任されている町だからだろう。
だが、国境を町の長老が管理しているというのも不思議な話だ。
大体は国の衛兵が管理したり取り締まったりするものだが、和ノ国は今はそれどころではないらしい。
「それにしてもこの小道は足に響くね。小石が痛い」
「確かに今までの道とは違いますね。こちらの方でしか見ることのない道らしいですよ」
ヒスイは段々と国の特色や地方の特色を把握してきている。
空いている時間に本や資料を読み漁っているからだろう。
魔導書を読んでいる時間もあるのだから勉強熱心だ。
「ヒスイは勉強熱心で偉いよね」
「そんなことないと思いますよ」
謙遜する姿が多いヒスイは褒めると目がなくなるほど笑顔になる。
その笑顔が可愛らしく思えてきた最近は褒めることが楽しくなっている。
「あの、ライラさんってどこで戦闘術を身に付けたんですか?」
珍しくヒスイが私の過去を聞いてくる。
私が未だに嫌がると思っているのか滅多に聞いてこないのだ。
「護身術はエテールにいた頃に習ったよ。女は護身術、男は武術を習ってた。戦闘に必要な技術はまあ勝手に覚えたとでも言っておくよ」
正直に言える話ではなかったためはぐらかしてしまったが、護身術は本当の話だ。
エテールだけではなく、あの時代は動物や魔物から身を守るために身につけるところが多かった。
戦闘術は誉められた話ではない。
「ライラさんの戦闘術はどちらかというと暗殺者の系統に入りますよね。短剣ですし」
「うっ」
図星だったことから変な声が出る。
ヒスイはその一瞬の声を見逃さなかった。
「もしかして?」
「いや、誤解だから」
この話は最後までするつもりがなかった。
だが、とうとう話をする時が来てしまったようだ。
ヒスイの熱心な眼差しに私は観念してため息をついた。
「旅を始めた頃、泊まる場所がなくて泊めてくれる人の家を転々としていたんだ。その中にアサシン、要するに暗殺者がいて戦闘術を泊めてくれている間に教えてくれた。そいつは他の男と違って下心もなかったから長々と過ごしていたんだけど、仕事か何かで失敗したんだろうね。ある日、帰ってこなくなった。だから黙って家を出たよ」
もう名前も覚えていないが、その人間のことはよく覚えている。
アサシンだというのに人情があって餓死に近い状態に見えていた私を拾い、生活を助けてくれた。
このままだと情勢がどうなるかわからないからと戦闘術を教え、私を戦える体にしてくれた。
アサシンだから人の目につくところに住めないと森の中枢に家を構えていた。
だから居心地が良かった。
お互い干渉しない生活が。




