小道の旅路。1
幽霊騒ぎも落ち着き、私たちは旅を再開することにした。
その日、私とヒスイの後ろにスイもいた。
スイはとうとう決断したのだ。
旅に出て自分の人生を歩むと。
まずは私たちとは反対のラオールの都を目指すという。
ラオールは研究施設に恵まれていて研究者には夢のある場所だという。
「やっと決断できて良かったね、スイ」
「やっとは余計だ」
スイは私に頭を撫でられながら頬を赤くした。
その横でヒスイは嫉妬の目を向けている。
私はそのヒスイを苦笑いで見ていると、ケイと町長が切り出す。
「本当に今回はありがとうございました。こちらは報酬の路銀です。食糧もお持ちください」
町長は深々と頭を下げて私とヒスイにお礼を言った。
町長はケイとスイから少しだけ事情を聞いたらしく騒動が落ち着いたら心を落ち着けるために辞任してケイに町を託すという。
「僕からもお礼申し上げます。スイの背中まで押してもらえたこと本当に感謝しています。この子は研究が本当に好きなようですから」
「なんでわかるんだよ」
「部屋に魔法具や資料があるのを見ていたからね」
ケイにも自分のことを知られていたと知って余計に恥じらいを見せるスイだがその顔は生き生きとしている。
きっとケイもスイのことを考えていたから研究のことも旅のこともすぐに受け入れたのだろう。
ケイはスイのために路銀を貯めていたらしくそれをスイは受け取っていた。
「旅の心得はあるようだし、心配ないね」
「俺は心配しかないけどな。今まで他人事だったのに急に自分のことになったから戸惑いしかないよ」
「でもスイさんならきっといい魔法研究者になれますよ!」
ヒスイも今度は笑顔でスイを勇気づけていた。
また町長には私とヒスイの服も仕立ててもらい、私は貴族風のブラウスに前から後ろへと長くなっていく斬新なデザインのスカートを着ていた。
スカートには短剣が入れられるように仕立ててもらったため長く愛用できそうだ。
ヒスイはブラウスとズボンの上に濃い紫色のマントを羽織った。
寒さ対策と旅人らしいからという理由らしい。
新しい旅に新しい服を着れるのはとても気分が上がって少し楽しさを覚えていた。
「じゃあ、そろそろ出ようか」
私たち五人の会話を終えて町に出るとそこには町民たちが私たちやスイを送るために出迎えていた。
「やっぱりこういうの慣れないんだけど」
「僕もです。でも嬉しいし好きです。こういう景色は」
名を残さない旅をしよう。
誰もが私を忘れる旅をしようと思っていた。
でも今の旅は誰かの喜ぶ笑顔のためにする旅になってきていた。
そして私の一番の笑顔はヒスイの笑顔だった。




