計画実行。3
私のすぐ横を光が走った。
凄まじいほどの魔力が込められているにも関わらず、乱れのない繊細な魔法だった。
その光に包まれ、魔物は姿を消した。
一瞬何が起こったかわからない私。
だが、その光魔法を使える人間はここには一人だった。
「ヒスイ……」
息一つ乱れなしにヒスイは凛々しい顔で杖を構えた状態で立っていた。
その手には強い力が込められている。
「ご無事ですか、ライラさん」
低く、少し険しい声は見たことのないヒスイを表していた。
「私は平気だよ。でもヒスイが、後悔するんじゃ……」
「僕なら平気です。もう覚悟はできましたから」
その瞳からは確かに覚悟が窺える。
「ライラ、大丈夫か!」
スイは慌てて駆け寄ってくるが、ヒスイの様子に気づいていない。
「大丈夫。それより反応は?」
「消えてる。おそらく今の光魔法で消滅した。討伐できたってことだ」
良かった。
そう言いたいのに言葉が出てこない。
対人戦はヒスイにやらせないと決めていた。
人間が後悔して生きていくのは苦しい現実だから。
それでもヒスイは人が変わったように魔法を打った。
躊躇いもなく、堂々と。
「とりあえず、兄さんのところに戻ろう。町と親父の様子も知りたい」
「そうだね」
ヒスイは一言も発することなく山を降った。
町に戻ると、騒ぎが起きていた。
眠っていた人が目を覚ましたという。
その人は怯えることなく、家族との再会を喜んだという。
町長も騒ぎに目を覚ましたが、特に問題もなく過ごしていた。
夜が明けた時には賑わいを取り戻し、日常と呼べる雰囲気が漂っていた。
だが、私は素直に喜べないでいた。
ヒスイに対人戦と似たようなことをさせたこと。
そしてヒスイが覚悟を決めたと言ったこと。
それらが目まぐるしく頭の中を駆け回っていた。




