表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旅人ライラは不老不死  作者: 飛鳥ソラ
始まりの章
8/216

後日談のような始まり。3

もう一度、二本の短剣を両手に添えると、私は地を蹴った。


「今度は外さない」


紋章を目の前まで引きつけて、一気にとどめをさす。

短剣のやり方だ。

剣でもよかったのだけど、私には短剣が向いていた。

やはり女の私には剣は重い。

二本の短剣なら身軽に動ける。

そう思い、短剣の身のこなしを覚えた。

そして、今、私は三体の魔物を倒した。


短剣が突き刺さった紋章はみるみると消えていく。

三体全ての魔物の姿が消えたところで私はようやく息をした。


息をつめるような戦いは久しぶりだった。

そのため、忘れていた。

少年のことを。


「あ、そういえば、大丈夫?」


「あ、はい!」


金髪の貴族の少年はじっと私をその目に捉えて離さなかった。

それがかえって居心地が悪い。


「えっと、それじゃあ……」


「あの、怪我……」


「え? あ、大丈夫。すぐ治るから」


服で頬を拭おうとした時、綺麗な手が伸びてきた。

男の人なのにとても白くて綺麗な手だった。


「雑菌が入ったら大変です。手当てしましょう!」


そう言って私の手を止め、自分のポケットからハンカチを取り出した。

その手当てというのが私には気恥ずかしかった。

誰も私の手当てなどしようとしなかったから。

怪我を負っても死なないこの体のことを恐怖と感じて。

でも、この少年は知らない。

私が大怪我をしたらきっと逃げてしまうのに。

怪我が数時間したら治るというこの体を怖いと言って逃げ出す。

それが当たり前だった。

だから誰かに手当てをしてもらう前に私はいつも去っていた。


「大丈夫だから本当に。私急いでるから」


何に急いでいるのか、そんなことも知らずに口が先に出た。

珍しいと自分でも思った。

長年生きてると感情が欠落する。

そうしているうちに動揺なんてものは消えていた。

それなのに、綺麗な手が伸びてきてハンカチを傷口に当てているだけの少年に動揺した。


「ダメですよ。女性なんですから。それに傷つけてしまったのは僕の責任でもあるので」


「……女性か」


久しぶりだった。

女の人として扱ってもらえるのは。

いつも怪物のように扱われてきた。

それを動揺も、悲しみもしない私を人々は忌嫌った。

彼はこの傷が治ったらどんな反応をするのだろう。

逃げ出すだろうか。

それとも……


「そういえばなんで追われてたの? ここ、町から少しあるよね。貴族が出歩く場所じゃないと思うんだけど」


「そ、それは……」


ふと抱いた疑問に少年は口籠った。

言いにくい事情の一つや二つはあるか。

でもこの森からはまだ魔力を感じる。

おそらく一人で帰すには危険だろう。


「もしかして君、エテールの人間?」


「はい! ヒスイといいます!」


答えにくい質問以外は元気に帰すんだなと思いつつ、私は心の中で葛藤していた。

エテールにはどちらにせよ行くことになる。

現に魔物が出ていた。

次に狙われて、しかも強い魔物だったらまともに戦えない。

なぜか喰われることはないけれど、痛い思いをするのは嫌だ。

でもエテールの町民を連れて帰ったら真っ先に注目を浴びる。

それが私にとって一番都合が悪い。


「あの、もしよろしければ案内します。僕はそんなに町の中を出歩く人間じゃないので案内らしい案内はできませんが」


ここで断ったら町に行くこともできなくなる上に、ヒスイと名乗った少年を一人で帰すことになる。

それは私の中の条件が許さなかった。


「わかった。ついて行くよ。襲われたら大変だしね」


「う、それは言わないでください」


痛いところを突かれたように彼は背中を丸くした。

魔力もさほど感じない彼がどうして森の中にいたのか不明だが、私は彼について行くことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ