計画実行。1
三日間の観察期間と準備期間が終わった。
とうとう計画実行の日だ。
計画通りにスイは憑依する実態の調査を済ませ、紙に分析結果を書いて渡す。
スイが使う魔法の分析は一時代前の式術だ。
それでもヒスイは解読と理解を早々にして、実体を作る実験を行った。
それは見事な実体だった。
人の体を真似て作った模写像。
幻影や空想に近い状態だが、触れば感触があり、傷つけることは容易だ。
そうなれば私たちにも倒しやすい。
あとは対人戦をしていると思われないように結界を張って私、ヒスイ、スイしか入れないようにするだけだ。
ケイには何かあった時のために町の様子を見張ってもらう。
問題は結界を張りながらヒスイが戦うことだった。
ヒスイは魔力そのものは大きいが細かいことは苦手だ。
そのため二つ同時に魔法を使うのは訓練以上に負担が大きい。
だが、そもそも私は魔法使いではないし、スイも魔力が大きいわけでもない。
そうなれば対魔物になった時に私が一瞬で蹴りをつけるしかなかった。
計画を昼に再確認して、夜を迎える。
町全体が寝静まった頃、私たちは動き出した。
「町は特に何も問題ないみたいだね」
「父も眠っています。おそらくまだ憑依はしていません」
スイの分析の結果、夜に憑依して町長の体を乗っ取っていることがわかった。
それは毎夜のことではなく、週に一、二回ほど。
分析すると今日が一番確率が高いのだ。
「じゃあ計画通りケイは町を見張っていて、何かおかしな点があったら合図を送って」
「わかりました。お気をつけて」
山の麓でケイと別れ、三人で山の奥を目指す。
ヒスイは結界魔法を準備し始め、スイは分析の魔法具を取り出す。
私はスカートの裏に短剣があることを確認して、目標地点を目指す。
スイの分析には山奥に、憑依する魔物の反応があった。
おそらく憑依する魔物は夜にしか行動できない。
夢魔の一族を語った魔物の可能性が高かった。
「もうすぐだ。反応が近い」
「そうみたいだね。魔力の揺らぎを感じる」
どんどんと魔力の波が体に伝わってくる。
ヒスイはその予兆を合図に結界を張り、杖を取り出す。
スイは戦えないため、私とヒスイが合図したところに止まった。
「ヒスイ、憑依する体の準備はいい?」
「はい。いつでも大丈夫です」
私とヒスイは魔力を感知して一番濃いところで止まる。
ヒスイは杖で空中を描き、実体を作る。
私、ヒスイ、スイにはスイが作った抗体をなじみ込ませてあるため憑依できない。
それを利用して絶対的に実体に憑依させる。
そして実体が出来上がった。
その瞬間に体は魂を宿したように攻撃を始めたのだった。




