複雑な関係。4
「疲れました」
「お疲れ」
ヒスイの攻撃魔法の特訓に付き合い、二日目。
前回使った攻撃魔法では範囲も広く力も強大すぎるため、加減をしながら形を保つように魔法を使う特訓をしていた。
小さな魔力の流れも感知しながら繊細に魔法を使わないといけないため、ヒスイは疲れ果てていた。
初日が終わり、二日目も残すは夕飯と夜のみ。
部屋に帰ってきた私たちは、夕飯後の見張りに備えて休憩を取ることにした。
「疲れているだろうから、夕食は私が持ってくるよ。今は三人とも町議会でいないし、ケイが作ってくれた夕飯があるから」
「大丈夫です。お気遣いなく」
ベッドに横たわるヒスイの様子は明らかに疲労感を感じさせた。
おそらく魔力の強すぎるヒスイには繊細な魔力の操作は困難であり、神経や体力を使いすぎるのだろう。
細かい動きができるようになるのは当分先になりそうだ。
「いいから寝てな。ヒスイが計画実行の日までにバテたら意味ないんだから」
「大丈夫です。それよりライラさん……」
私が扉に手をかけると背後に人の立つ気配があった。
すぐにヒスイだとわかったが、ドアノブにかかった手にはヒスイの手が重ねられていた。
ヒスイの背は私より少し大きい。
可愛らしい顔つきなのに背が高いところがまた男の人だと感じさせる。
体力を使った後のせいか手も温かくてより包まれている感覚になる。
「どうしたの?」
それでも自分なりの声を振り絞って尋ねると、ヒスイは一度呼吸を置いてから私の耳元で囁いた。
「ヴィーアンの時に言っていたご褒美、いつくれますか?」
一瞬何のことだかわからない私だったが、すぐに意味を理解する。
「一緒に寝るってこと?」
その瞬間ヒスイの体が跳ね上がった。
仕掛けてきたのはヒスイの方なのに、いざ言葉にするとヒスイの方が恥ずかしくなっているのは何故だろう。
正直、今更一緒に寝るだけならいくらでもご褒美という名でやってあげてもいい。
私にとって減るものでもないのだから。
だが、ここまでヒスイの反応が大きく、面白いものだとわかると少々弄びたい気持ちにもなる。
ヒスイの真剣さはわかっているつもりだがここまで年齢を重ねてしまった今、どう対応するべきなのか悩んでいた。
「その意味わかってますか?」
ヒスイがゆっくりと私の体に手を回そうとする。
でもその手が体に触れる前に声が響いた。
「ライラー! 降りてきてくれ!」
スイが下から叫んだのだろう。
慌てたヒスイは体を跳ね上がらせると同時に腕の力を強めたらしい。
ちょうどその腕と手が私の胸に食い込み、完全に図が出来上がってしまった。
「ヒスイ、大胆だね」
「え…… あ、あ! 違います、これは!」
「早くしろー!」
ヒスイが慌てふためいてる間にもスイは上がっていきそうな勢いがあった。
「スイも呼んでるし行くよ」
「……はい」
しょんぼりしているヒスイに隠れて、私は動揺している。
こちらも複雑な関係なようだ。




