兄弟の勘。3
「取り憑いているということは町長さんの意思ではないということですよね。それに姿が町長さんのままだったら町の人たちも気づくはず。姿まで変わってしまうということだと、これは……」
「大元を叩くしかないんだけど、取り憑いているのが何かによって対処法が変わってくる。まあ、魔粒子が出ていてあの安定さだと魔物が一番有力候補かな」
魔物が取り憑いていると仮定してもパターンは二通りあった。
一つ目は町長自身に取り憑いている可能性。
二つ目は町長を操っている可能性。
今の時点で揃った情報を辿れば自ずと二つ目の操りの可能性が高い。
だが、私はあえてその場で私の口から言わなかった。
もう一人気づいていそうな人間がいるから。
「ヒスイはケイと町長の様子を探って。所有物や部屋も気づかれないように探って。気になるものがあったら合流した時に。スイは私とここに残って痕跡調査だ」
「なんで俺が。こういう調査は兄さんの方が向いてる」
スイは私から距離を取る。
まるで自分が劣等品だというような目をして。
「好きにしたらいい。だけど、適材適所というものもある。私はこれが最適だと考えた。それだけだよ」
「スイ、お前はライラさんの手伝いを。私はヒスイさんと父の様子を探ってくるから」
ケイは私の言葉で納得したのかヒスイを連れて街に戻っていった。
その様子をスイは不満そうに見ていた。
「なんで俺をここに残した」
「話をしたかったから」
「話ってなんだよ」
「君は魔粒子の件も魔物の件も、そして町長のことも気づいていた。違う?」
スイは肯定も否定もせずに黙ってそこに立ち尽くしていた。
「君は魔力の探知と研究に長けている。魔粒子の微弱な気配にも気づいて、さらにそれが何かも当てている。だが、兄を超えることは許されないと思っている君は兄の手柄、父の座を守ろうとしている。町長がこの件を知ったらきっと退くというだろうね。その次にこの町を治めるのは兄だと思っている君は自分の手柄にしたくない。だから少しずつ真実を言って兄に気づかせるつもりだった」
きっとスイには魔力に関する才能があるのだろう。
本人自体の魔力はそれほど大きくも強くもない。
だが、他人の魔力に関して敏感だ。
ここまでの力量があれば王都や研究施設で重宝されるだろう。
この才能を持って放っておくのは勿体無いと思ってしまった。
前の私ならここまでおせっかいではなかっただろう。
「なんでもわかるんだな。不老不死様は」
「いつから気づいた」
「最初から。魔力は確かに強くはないが、人とは違う魔力の安定さがある。そこまで安定させるのは至難の技だ。噂に聞けば不老不死と呼ばれた女が故郷で騒ぎを起こしたと聞く。だとしたら伝説のように言われた女がここにいると考えても何も違和感がない」
「騒ぎね……」
エテールの話がこの国にまで及んだとなると、私の存在も隠すことが難しくなってきているのだと知る。
そして初めて魔力だけで私を不老不死だと言い当てた。
ヒスイに並んで数千年に一度の存在なのかもしれない。
この時代は恐ろしい時代なのかもしれないと私の勘が言っていた。




