兄弟の勘。2
「旅人さんは気づいているんだろ?」
沈黙していた二人だったが、とうとうスイが口を開いた。
態度もそうだが、口も兄や父のように礼儀正しいわけではなさそうだ。
でもそれくらいがちょうどいい。
人を疑って、人に弱さを見せないくらいが旅や討伐者に向いている。
「スイ、言葉には気をつけなさい」
「いいよ。私も改まった口の聞き方は好きじゃない。それにここから先は協力関係になるんだから。場合によっては共犯関係かな」
「どういう意味です? ライラさん」
この場ではヒスイだけが気づいていないらしい。
それもそのはずだ。
この件に関しては目で見ない限り、人間にはわからない。
相当この件に関する人物か長年生きた私くらいしか。
「ここじゃ話づらいでしょ。その山の麓とやらに行こう。そこならもしかしたらヒスイ並の人間はわかるかもね」
「わかりました」
ケイもそこでようやくこの件に納得したようだった。
そこから先は沈黙の道中が続いた。
ケイもスイも一言も発さない。
ヒスイは場の空気を読んであえて黙っているようだ。
四人の足音だけが乾いた土に響く。
そして山の麓にたどり着いた時、私の予感が当たったようにヒスイが目を丸くした。
「この魔力は……」
「正確にはこれは魔力じゃないね。体内から出る魔粒子、取り憑いているものに起こるものだ。そしてこれは……」
「父のもの、ですよね」
この魔力に似た体内から放出される魔粒子。
取り憑かれたものが発し、それは魔力だと誤認させる。
その魔粒子が町長、二人の父親から出るものと全く同じなのだ。
「どういうことです?」
「私も最初は町長の魔力だと思っていた。だけど、人間は魔力を無意識に出す時一定の波のように出るよね?」
「はい。確かに波のように一定に感じますが」
「町長には乱れがあった。それこそ長年共にするか、魔力の探知にとても優れているものじゃないと察知できないほどの微かな乱れが。それが魔粒子の特徴だ。魔粒子はごく自然に出ているけれど、その中に意志のような乱れが出る」
二人も流石に取り憑かれていることは予想をしていたかはわからない。
でも長年過ごしている家族だ。
魔力に似た魔粒子をこの場所で感じ取るのは容易だろう。
騒がれていないのは討伐隊がこの魔粒子に気づかず、二人も公言していないから。
「魔粒子が町長から出ているのと同じである以上、町長は取り憑かれているとしか言えないね。まあそれが何に取り憑かれているかまではわからないけど」
私は話している間、二人の様子を見ていた。
この件をどちらに転がしたいのか知るためだ。
でもそれ以上に気になったのは二人の様子だ。
ケイは少し驚きながらもそれを受け止めているように見えた。
でもスイの方は違う。
この件を最初から知っていたかのように私をじっくり見ている。
手の中を見せびらかすことをしないのは都合が良いからか悪いからか。
どちらにせよ、スイとはもう少し話す必要があるようだ。




