白日町の幽霊。2
「幽霊は夜になると現れると言います。夜に外出し幽霊を見た者は一度眠りにつけばその眠りから覚めるのに一週間は確実にかかると言われています。そして、目覚めた人は皆、魔王と口にするのです。おかげで必要最低限の外出以外は控えるようになってしまい、商売もできないのです」
そう言って町の中を案内する町長は、魔王の存在は全く知らないようだった。
魔王が現れたという事実を公言するのは避け、話を聞いていると、討伐隊も組まれていたが、ほとんどがその夢にうなされてしまい、討伐どころではなくなってしまったという。
今では、町長の息子二人が解析をしているらしい。
「私の息子、ケイとスイというのですが、ケイは優秀でして、そのケイですら原因が掴めておりません」
町長の話には時々、ケイという息子の兄の方が話題に出る。
だが、スイという弟の方はまるで会話に出ない。
おそらく、学術の差だろう。
この国は学術の出来を気にする。
学術が上の者ほど有利な立場にある。
同じ息子でも明らかな差別を喰らうのもこの国の特色だ。
「こちらが我が家でございます。宿は私たちの家の三階をお使いください」
「我が家って、町長の家ってことですか? ご家族は?」
ヒスイは旅慣れしていない。
依頼主が金銭面的に厳しい時はそこに泊まることも多々ある。
私一人の時は、違うことが目的だった輩もいたが、今回はその心配はなさそうだ。
「私たちは一階と二階で十分です。それに店もありますので。三階は誰も使っていないのでご自由に」
「そういえば、白日町は和ノ国の文化とは違うんだね。和ノ国はもっと重い服を着ていたのに」
「そうですね。白日町では呉服店が私共が営んでいる店しかなく、私の店は他の国の服を仕入れているので、服装が違うのかもしれませんね、でも文化はさほど変わりませんよ」
私たちを家の中へ招き入れるとお茶などを用意してくれ、もてなしてくれた。
三階へ案内されるとそこは使っていないとは思えないほど綺麗で、誰かが掃除した後があった。
「私は公務と店がありますので、ここから先は息子にご案内させます。何かあればいつでも」
「わかった。ありがとう」
あくまでも、依頼の先は本人任せ、息子任せといったところだろうか。
腰が低いのも客人に対する態度なのだろう。
私が和ノ国に馴染めない理由が存分に表れていて居心地が悪い。
だが、そうも言っていられなさそうだ。
ここに来るまでの間、人を見ていない。
活気がなく、静まり返った町は今までのアルタやヴィーアンを思い起こさせる。
魔王ヒースの仕業となればここも安泰ではない。
なにしろ、ヒースが最後に放った言葉は「殺し」なのだから。




