宴の影。1
ヴィーアンの宴は質素だけれど、賑やかな宴だった。
都の民が騒ぎ、あちこちで踊りや歌を歌う。
奏でる音楽は都本来の賑わいを表しているかのようだった。
その宴に数分出た後、ヒスイがアリアと話しているのを確認して私は都の外に出た。
人のいない静かな都の外れ。
宴をしている今夜は誰も都の外に出ようとはしないだろう。
だから私は都の外に出た。
因縁の人物に出逢うために。
「もうそろそろ姿を現したら?」
周りを見渡しても意味がない。
でも私なら見つけられる。
五百年前もそうだったから。
「ヒース」
私がそう名前を呼んだ時、微弱な魔力の揺らぎがあった。
その方向を向くと、そこには笑顔のヒースが立っていた。
「やあやあ、久しぶりだねライラ」
呑気で甘い声、茶髪の髪は全く色褪せず、姿形も何一つ変わっていない。
口ぶりも憎たらしいほど、そのままだ。
この時を待ち侘びていたかのような素振りと、妖艶な言い方、そして楽しんでいるような話し方。
「今回の件、どこからどこまでがお前の仕業だ」
「久しぶりの再会なのに、厳しいな。君の予想通りだよ」
一瞬で距離を詰めてくるヒースからは逃れられない。
魔力を使って一瞬で移動しているのだろう。
私の足でも勝てない。
そのまま、私の肩に手を回し、頭をゆっくりと撫でた。
いっそのことここで始末できたらどんなにいいか。
でも肩に置かれた手が私の行動を止めている。
魔力を私の体に注ぎ込み、自分の思うように止めているのだろう。
「大蛇竜を使って僕はあの都を落とした。そして一人の少女に魔炭石のお守りを渡した。あとは君たちの知る限りだ。直接、僕が手を下したのはお守りくらいだよ」
淡々と話すヒースはまるで人のことをなんとも思っていないようだった。
都が一つ潰れ、一人の少女が犠牲になるところだったのに。
そんな怒りを沸々とさせながら、私は次の話に入る。
「魔炭石も克服したということか」
「正確にはまだ克服はしていない。魔力を失くした状態で僕は手にした。その後、魔力を復活させれば、あれくらいは大したことないね。最も、今の状態じゃ戦闘中は厳しいけれど」
長年の時間を使い、魔力の制御、それから魔炭石の使い方まで身につけた彼はもはや怪物だ。
そう、私と同じ怪物。
私と彼の間にだけ流れる時間がある。
それが恐ろしく、不愉快だった。
「何が目的?」
「決まっているさ」
私の耳に口を近づけ、ゆっくりと放った言葉。
「君だよ。ライラ」
その一言は私に罪悪感を植え付けたのだ。




