曇天戦。2
「拠点の中に少しだけ大きな魔力がある」
「それがロード、指揮者ですか?」
「ヒースの配下だと考えなければ一般的なロードの大きさだ」
「じゃあ、魔王ヒースは関わっていないということですか?」
何者かが魔王ヒースを名乗っているだけだとしたら警戒しすぎていた。
だが、全ての駒が揃いすぎていて妙に気持ちが悪かった。
それでも今できるのはその大きな魔力を倒すだけ。
ヒスイに魔力を感じる方角を教え、その周辺に向かった。
「ここら辺だ。降りれる?」
「はい、少し魔力が回復してきたので参戦できます」
「いや、このくらいならヒスイは回復役にまわって平気だ。私一人で倒せる」
「ライラさん一人でですか?」
確かに私は魔力が少ない。
魔法という魔法をろくに使えない。
でも長年生きてきた人生を無駄にはしていない。
それはヒスイと出会った最初の時に証明している。
「私を誰だと思ってるの?」
その一言でヒスイは安堵の笑みを浮かべて地上に二人とも足をつけた。
拠点の中はラビン率いる都の民たちが戦っていた。
ヒスイは回復にあたり、私は魔力の強い方へと歩みを進めていく。
そしてそこで待ち受けていたのはドラゴンに似た魔族だった。
「お前か。ここの指揮者は」
その姿は大蛇のようにも見えるが、鱗や体格的にはドラゴンが元になっているようだった。
つまりは作られた魔族だ。
基礎があるだけで魔力を注がれただけの作り物だ。
魔族であればはっきりと種族がわかる。
だが、今目の前にいる魔族は種族がはっきりとわからない。
趣味の悪い悪戯だ。
「何者だ」
「驚いた。言葉を話せる作り物か。だとしたらますますこの作り物は誰が作ったか気になるところだけど」
「我は魔王ヒースに造られし大蛇竜。あのお方の探し物を手伝う者」
趣味が悪いのは根っこかららしい。
私の見立ては半分正解というところだろうか。
蛇とドラゴンを混ぜて新たな生き物を作っているところからして、邪神にでもなるつもりなのかと疑う。
そして探し物のためにここまでの犠牲を起こしていると思うと感情の薄い私でも腹が立つ。
「その探し物はなんだ」
「不老不死ライラ。ただ一人」
「あいにく、その不老不死ライラはここにいる」
作り物に私の情報が一切伝わっていないのは完璧な作品ではないからなのかそれともヒースの意図なのか。
時々感じるこの大蛇竜の不届さは不気味に感じる。
「ライラ…… お前が」
私の名前を聞いた瞬間、大蛇竜の瞳が大きく開いた。
どうやら戦闘開始らしい。
「目標物発見。捕らえる」
言葉は人間ほど悠長に話せるわけではなさそうだ。
そんなことを考えながら、私は血の巡りを足に集中させ、一歩踏み出した。




