曇天戦。1
意味深な笑みを最後に曇天の空の下、戦が始まった。
拠点に放った一発はかなりの威力で拠点を灰にした。
もちろんそれだけでは終わらない。
ヒスイは魔水晶を取り出した。
「まだ持ってたんだね」
「いざという時、役に立つので黙っていたんですけど、もう使い時みたいです」
魔水晶が残り少ない今、無茶はできない。
魔水晶の価値が高い分、下手に人前でも使えない。
それなら空での応戦で使えばいい。
ヒスイなりの考えがとっくのとうに始まっていたのだ。
「制御はできる?」
「まだできます。ですが、もう一度同じものを打った時、耐えられるかどうかまではわかりません」
「それなら威力を半分にしても構わない。さっきのは大きすぎるからね」
もう一度、同じ魔力を使うのはこの土地のためにもやめておいた方がいい。
ヒスイの魔力が大きすぎて土地が耐えられなければ意味がない。
灰の匂いがどんどん強くなっていく。
風に乗ってきているのだろう。
それと同時に聞こえてくるのは双方の大きな歓声や雄叫びだった。
都の方からは開戦の歓声が響き、足音が大きくなっていく。
魔族の拠点の方からは奇襲に対する威嚇の雄叫びが響き、魔力がどんどん強まる。
その魔力の途切れ目を一瞬感じ取った時、ヒスイがもう一発魔法を放った。
拠点が潰れた直後に同じ魔法を打てば解析が得意な魔族がいた場合、厄介だ。
それを理解しているヒスイは炎魔法から氷魔法に切り替えて魔法を打った。
炎魔法では魔族を減らし、氷魔法で身動きを取れなくする。
完璧とも呼べるその立ち回りだが、ヒスイの魔力消費に体が追いつかなくなっていた。
飛行魔法が安定しない中でヒスイは小さくなった魔水晶を握りしめた。
魔水晶は魔力を強大にすると言うより制御させると言うのが本来の役割だ。
つまりは魔力の基礎はヒスイ自体のもの。
魔力消費を一気にすれば今続けている飛行魔法すら続けられないはずだ。
それでも飛行魔法だけは切らさずにいられるヒスイはやはり人類の中で最強クラスだろう。
「ライラさん、魔力の探知をお願いできますか。飛行魔法に集中します」
「わかった。無理だと思ったら地上に降りて。動ける魔族や魔物は少ないはずだから」
「わかりました」
それを最後に私は五感を研ぎ澄ませ、魔力の波に集中した。
魔族や魔物は指揮をするいわばロードがいる。
ロードは魔力を一番大きく発揮し、威嚇をする。
だからその魔力の元を叩けばかなり戦力が減らせるのだ。
そして今回に限ってはそれがヒースかあるいはヒースの配下に当たる可能性がある。
波の察知は容易のはずだ。
だが、それらしい魔力の波は察知できない。
耳から聞こえてきた金属音のような魔力の波の音は小さくて弱い。
そしてそれは拠点の中にあった。




