いざ、決戦の空へ。5
ここに魔王がいるとわかったらどれだけの大混乱になるか。
想像を絶するものになるのは間違いない。
「魔王ヒースがいるとしたら化けているとしか考えられない」
「でも魔炭石を持っている状態で化けることなどできるのでしょうか?」
「わからない。でも人間ができないこと、考えないことをしでかし、憶測を超えてくるのがヒースだ。あいつはおそらく私より長生きしている。私にこの呪いをかけたんだ。この呪いを生み出すまでも時間がかかったに違いない。そんな奴がまともな考えで動く訳が無い」
魔炭石すら通用しない体になっていたら、もう手も足も出ないだろう。
だが、魔王になったヒースには当然、手下や配下などがいる。
そうなればその下っ端に任せた可能性もある。
ヒースが必ずここにいるとは限らない。
可能性がいくつもある中で、私たちは選択肢を選ばなくてはならない。
内通者なのか、ヒースなのか、はたまたヒースに絡む何かなのか。
「ヒスイ。この戦、勝っても負けても悔いはない?」
ヒスイにとって残酷な問いなのは百も承知だ。
ここを救うと決めたのはヒスイで、負ける可能性が出てきたのはおそらくヒースと私が絡んだから。
私のために戦い、私を守ろうとしてくれているヒスイには勝つのも負けるのも意味がある。
だからこそ、選択肢は決められる。
彼の返答で。
「僕は…… ライラさんを守りたい。それができれば本望です。自分勝手かもしれませんが」
「いい答えだね。じゃあ決定だ」
その時、やっと心の靄が少しだけ晴れた気がした。
「ラビンを信じよう。この戦、どっちにしろ、ラビンがいなければ始まらない。そうなればラビンにだけ打ち明けて地上の様子はラビン任せだ。私たちは空から応戦する」
「空からなら都も拠点も見え、何か違った動きがあればその方向へ行けるということですか?」
「御明察。最初、空から地上に降りて戦うと言ったけど、変更はラビンにしか伝えない。それなら飛べない人間は確かめようがない。ラビンは口達者だ。誤魔化しは上手いだろう。逆に、誰かが空に飛んできたとしたらそいつがターゲットだ。私たちはそちらと戦う」
言ってしまえば、もし何かあった時、都は捨てるといっているようなものだ。
それでも挟み撃ちや混乱を避ける名案でもある。
「これは決して綺麗な考えじゃない。負けた時、都を口封じのために落とすことになる。それでもヒスイは私についてくる?」
「もちろんです。僕の心の味方はライラさんだけですから」
こんな時だというのに、ヒスイはいつも通りの穏やかな笑顔で言い切った。
その時、ふと思った。
この戦は勝てると。




