いざ、決戦の空へ。1
作戦決行日の朝。
曇天の空に小鳥も黙る静けさ。
そんな中、ヴィーアンの中は活気で満ちていた。
都の人たちは復讐を果たすべく、装備を怠らず、作戦を念入りに確認している。
その中にはもちろん不安そうな顔をする少年たちも見受けられたが、周りの大人たちがフォローをしているおかげで士気が保てた。
そして中心となっているのはラビンだった。
ラビンは地上の指揮を取るために皆と交流していた。
その外れに私は一人で佇んでいた。
気になっているのはヒスイのこと。
この作戦ならヴィーアンの都の住人の勝算は高い。
だが、ヒスイの体力を考えると、こちらの負担はかなり大きい。
ヒスイが途中で倒れてしまえば、戦力が欠けるだけでなく、タイミングによっては失敗も防げない。
私は士気を下げないように黙っていたが、ヒスイに何かあれば私は戦う自信がない。
五百年もの間生きてきたのだ。
他人のことより気を許した仲間のことを優先するのが私にとっては普通なのだ。
自分の知る人間を犠牲にしてまで赤の他人を救う義理は私には残っていない。
それでもその仲間がしたいことを反対する理由にはならなかった。
それが平凡でごく普通の寿命を生きる人間に理解できるものではないとわかっているから。
「ライラさん。ここにいたんですね」
先ほどまで都の娘に囲まれていたヒスイも私を見つけて駆け寄ってくる。
男なら夢のような場面だろうにヒスイは堂々としている。
「女の子に囲まれる時間はもういいの?」
「僕にはライラさんだけですよ」
少し照れながら目を泳がせるヒスイは先ほどとは違って少年らしい。
娘たちが少し残念そうに去っていくのを私は複雑な思いで見ていた。
「ライラ様。ヒスイ様」
その娘の中から一人だけ去らずに私たちの元へとやってくる人物がいた。
今のこの都の長に代わる人物、アリアだ。
アリアのヒスイへの好意はアリアを見た時から伝わっている。
ヒスイも美形だ。
年相応の娘が惚れるのも無理はない。
「この度は本当にありがとうございます。なんとお礼を申し上げたら良いか」
「まだ勝ったわけでも、安全が確保できた訳でもないんだ。お礼はその後で」
ヒスイとアリアの間にいる私はこの空気に耐えられず、逃げ出そうとアリアに手を振ってその場を去った。
あのキラキラとした時間は私には似合わない。
そんな時間は私にはやってこない。
アリアはヒスイにお守りを渡そうとしていた。
通り過ぎる時にこの目で見てしまった。
早くこの場から去りたいと思ったところに運悪くラビンがやってきた。




