魔王ヒースの誕生。2
「ヒースは私を探している。そう考えるのが妥当だよね」
空に浮かび都市の様子を見ながらヒスイに問いかける。
この都市はほぼ全滅していた。
「ライラさんと魔王ヒースの関係を考えればそう考えるのは確かに当然のことかもしれません。他に不老不死の人がいる。もしくはヒースにとって特別なものがあるなら別ですが」
私の旅で不老不死の人間に出会ったことはない。
おそらくそう簡単な魔法ではないし、不老不死を増やせばヒースの立場がなくなる。
つまり一つ目の可能性は低い。
二つ目の特別なものはヒースを少ししか見ていない私にはわからない。
探さなければいけないものという意味では特定の場所に定まっていない事になる。
ただ、ヒースの力があれば私なんて簡単に見つけ出せるのだ。
私に会う気がなくても。
「ライラさん。変な気は起こさないでくださいね。僕はライラさんに何がなんでもついていきます。だからヒースと遭遇する時は必ず一緒ですよ」
まるで私のことを全てわかっているかのようにヒスイは私の手を強く掴む。
私が誰もいない所に行けば、私がそう願えばヒースは出てくるのかもしれない。
そしてヒースのものになってしまえば、この悪夢は終わるのかもしれない。
でもそれはヒスイとの別れを意味し、そのさきのことは誰にもわからない。
それがとても嫌だった。
ヒースに対する感情は黒くて腹の底から湧き出てくるような感情だ。
その感情をぶつけるのは一体できるのだろうか。
それでもヒスイがこの手を握っていてくれるだけでここにいていいと思えるのだった。
「ライラさん。あそこだけ焼けてないように見えるのですが」
ヒスイの指差す方向を見ると、都市の片隅にまだ生きている建物が少しだけ残っていた。
そこからは結界の気配も感じる。
「とりあえずあそこに降りてみよう。逃げた住民かもしれない」
ヒスイの手を借りながらその場所に近づく。
結界が魔法だけ凌ぐものなのか、それとも人間も拒んでしまうのか。
それを確かめる必要があるからだ。
「ヒスイ、確かめられる?」
ヒスイは私の離さずに片手をかざす。
目を閉じて集中する姿は綺麗な少年の顔だった。
「人間は入れるみたいですね」
「じゃあゆっくり降りようか、魔力の気配は消せる?」
「はい。大丈夫です」
二人とも得意となった魔力制御で、ゆっくりとその地に降り立つ。
するとそこは水も自然も残った豊かな土地だった。
ヴィーアンの土地らしさが残っている。
だが、人の影は残っていない。
どこかの建物に避難しているのだろう。
私たちの様子を伺っているに違いない。
「参ったね。人が見えないんじゃ聞くことも聞けないし、入ったら攻撃されることは間違いないね」
「一つ提案があるのですが」
ヒスイは自分のポケットから魔水晶を出した。




