ヴィーアンの戦。1
一度だけ休憩した後、私たちは爆発音の元へと向かっていた。
爆発があったであろう場所まで約一日。
その周辺は木々が黒く焼け焦げていた。
だが、それ以外は何もなかったのだ。
負傷者も、いや、人間も魔物も。
「どういうことでしょう。争った形跡が一つもありません」
「ここで戦はなかった。あるいは」
私はもう一つの可能性を口にしかけて口をつぐんだ。
一つの視線を感じ取ったからだ。
敵意というよりも警戒。
攻撃的ではなく様子を見て、こちらの出方を窺っている。
それならこちらが行動する番だ。
「ヒスイ」
たった一言言っただけで、ヒスイは瞬時に察した。
そして杖を取り出す。
ヒスイが行動をした瞬間に向こうに動きが見られた。
その一瞬を私は逃さない。
ありったけの力を足に詰め込んで、動きの方に足を向ける。
そして解き放つように地面を蹴った。
私の脚力に叶うはずがない。
だが、その予想は外れた。
私が動きの原点に到達した時、目の前に姿はなかった。
「ライラさん! 上!」
ヒスイの声と同時に感じた鋭い眼差しに私は地面を蹴って自分の身を遠くの方へと転がした。
砂煙が上がり、ヒスイの姿すらまともに見れない。
その砂煙の中に立っていたのは、長い茶色の髪にどこかの部族のような格好をした青年が立っていた。
「誰だ!」
砂煙の中から盛大に声を張って私に問いかけるその姿は戦士のようにも見える。
彼は敵か、それとも私たちと同じか。
それを確かめられるのは武力ではなさそうだった。
「試して悪かった。私はライラだ。旅人だ」
「その言葉のどれを信用しろと?」
「全部だよ。まあいきなり仕掛けたから説得力ないけど」
「ライラさん! 大丈夫ですか?」
ヒスイも魔法で砂煙を飛ばすと私の元へ駆け寄ってきた。
その様子を試すように今度は青年がこちらに言葉を仕掛ける。
「この焼け野原はお前たちか?」
「悪いけど違う。ヴィーアンに行こうと思っていたんだ。だけど、爆発音を一日前に聞いてね。それでやってきたわけだ」
服についた砂を払いながら私は真実を言った。
攻撃を仕掛けた側と言葉を仕掛けた側。
でも無意味に攻撃を仕掛けたわけじゃない。
この視線をどこかで覚えている。
「お前の動きは只者じゃない。そうでなければ俺の攻撃を避けられない」
「随分と自信があるんだね。それは、お前が戦士だからか? いや、戦士の一族だから?」
私の言葉を聞いた瞬間、彼の呼吸が一度止まった。
どうやら正解のようだ。
戦士ではない。
だがこの威圧感のある視線は戦士独特のものだ。
それに魔力が全く存在していない。
今の人間は必ず魔力を少なからず持っている。
不老不死で、昔の人間だというなら話は別だ。
だが最近では生まれながらに魔力を持つ人間しかいない。
ある一族を除いて。それが戦士の一族だ。
人間でありながら強い体と技で魔力という気配を消してしまう。
そしていつしか魔力が消え去ってしまうというわけだ。
彼からは魔力も感じなければ視線は昔に出会った戦士と全く同じだ。
でも彼は戦士ではない。
一人前の戦士は証を持つ。
首から下げるペンダント。
そのペンダントには紋章が刻まれ、魔力をなくす鉱石、原水晶が埋め込まれる。
彼はそれを持ち合わせていない。
それならば答え合わせはできた。
「お前は最強の戦士にして戦士にならなかった。ラビン・ブラウン」




