雨上がり、水の都へ。3
私は飛行魔法を使えない。
だからヒスイに引っ張ってもらうしかないのだが、ヒスイは思わぬ形で私を空へ連れ出した。
「ヒスイ? これは何?」
「飛行魔法ですけど?」
「じゃなくてこの格好は?」
私はヒスイに抱えられて空に浮かんでいる。
飛行魔法はその者に触れているだけで伝えられるものなのだが、なぜか抱えられて耳が熱い。
「この方が心配ないので。それよりも離さないでくださいね。何が起こるかわからないので」
そう言うなり、ヒスイは全速力で風を切っていく。
あまりの速さにヒスイの体を力強く掴んだ。
長年生きているのに、ここまで余裕がなくなったのは初めてだ。
ヒスイの顔は真剣そのものだった。
自分一人がここでジタバタしても仕方がないと諦め、私はヒスイにしがみついたまま、その爆発音へと向かうことにした。
「ねえ、ヒスイ。会話する余裕ある?」
「少しならありますよ」
「この爆発音の前にしてた話、落ち着いたらまたしてほしい。あと少しで何かが見えそうなんだ」
ヒスイは少しの間黙っていた。
きっと家のことを話すのは嫌いなのだろう。
それでもヒスイは一度、息を吐いた後に微笑んだ。
空を照らす太陽と重なるような温かさで。
「わかりました。その代わり、ライラさんの話も聞きますからね。あと、今日のご褒美も……」
最後の方は声が小さくて顔も赤らめていた。
年頃の男子なのだなと思いつつも、少しだけ頭を撫でて私も微笑んだ。
私にはない、人間の感性をもっと感じたいと思えたのだ。
「じゃあ、こないだの洞窟の続きでもしようか」
「は、はい!?」
「こらこら、飛行が崩れる」
「からかっていますよね」
こんなやりとりをする相手もいなかった。
それでも、からかう相手がいて、困難に立ち向かうのも一人ではない。
それがすごく心地よく思えていた。




