復興を遂げるべき町。3
それから夕食ができたというリアの知らせがあり、ヒスイを起こして夕食へと向かった。
ヒスイはなぜ起こしてくれなかったのだと嘆いていたが、夕食を頬張ればその嘆きも終わる。
リアたちの作る食事は食べるものが少ないながらもいつも美味しく作ってくれる。
腕がいいのだろう。
食材や鮮度に頼らずともここまで作れるのは実力が伴っている証拠だ。
文句を言っていたヒスイも夕食の時は必ず美味しいと言って黙々と食べている。
魔水晶を採掘している時に気づいたが、ここの環境は魔族に荒らされてだいぶ厳しい状態にある。
農業を再開するのは当分先になるだろう。
しばらくはこの魔水晶のお金で外交をして、仕入れをしていくしかない。
仕入れや外交に必要なのは会話力や経験、それに顔の広さも鍵となってくる。
そうなればギルの力は必須だろう。
今まで聞いてきた話だとこの町は外交をあまりしてこなかった。
身内の中で取引をしてきたのだ。
農業に工業、織物や商売までも。
いきなり力をつけろというのはあまりに酷な話だった。
だが、力がなければこの町の復興は叶わない。
ヒスイの努力も無駄になり、魔水晶の存在も知れ渡らない。
そしてその魔水晶の行方はこの町でとどまり続ける。
魔水晶の留まりが意味すること。
それは力の温存だ。
一つの町に力が温存されると後々、争いの火種になりかねない。
早いうちにこの町が潰される一つの原因を取り除かなければならない。
本音を言えば、この町に魔水晶を利用する力なんて持ち合わせていないだろう。
しかし、旅人、あるいはエテールのような近い集落から狙われて力を利用することになれば大きな一因となってしまう。
それほどまでに魔水晶の存在は大きいのだ。
国一つを動かせるほどの大きな力。
その大きな力は外交で世に広めなければならない。
そしてこの町の安全を確保する。
それができるのはもはやこの町にはただ一人しかいない。
「ギル、この町に残れないか?」
私はギルに聞こえるだけの声で言った。
ギルは当然慌てていた。
本当の意味なんて解釈していないからだ。
「お前、この席で言うことじゃないだろ」
「いや。早いうちじゃないとダメだ。この町と私たちに関わる」
私が真剣な顔つきで、ギルにしか聞こえない小声で話したことによってギルも茶化されているとはおもわなかったらしい。
遠くを見るようなそれでいて何かを見据えているような目つきだった。
ヒスイやリアたちが盛り上がっている横で私たちの間には氷のような冷たい空気と鉛のように重い空気が漂った。
「それはこの町の復興に関わるのか」
「そうだよ。そして私たちがこれ以上のことをやる価値があるかも関わってくる」
一呼吸置いた後、ギルは食べ終わった食器にカトラリーを置いて、立ち上がった。
「わかった。外に出よう」
「ギルさんどちらへ?」
「ちょっとライラを借りるぜ」
そう言い残して私に目もくれず孤児院の外に姿を消した。




