復興を遂げるべき町。1
旅を再開する予定まで一週間をきった。
相変わらずヒスイは魔法を使って住宅を建てている。
でもその魔法は段々と様になってきている。
最初は魔水晶の力を借りても、魔力が大きすぎる分、綻びはあった。
でも今は、家という形を作る大きな魔力でも綻びが目立たなくなっていた。
「お疲れ、ヒスイ。休憩だ」
魔法を止めたヒスイはいつも通り息を切らしていた。
最近気づいたことだが、ヒスイは人のためなら無理をできるらしい。
そして限度を知らない。
だから誰かが休憩と言わないと休憩ができない。
大きな弱点だ。
「ライラさん。お疲れ様です、魔水晶ありがとうございます」
「ヒスイ、また休憩をしていないそうだね。限度があるって言ったはずなんだけど?」
「そうなんですけど、集中しちゃうと忘れてしまって……」
頭をかきながら、微笑むヒスイの顔は少し痩せたように見える。
魔力の膨大が体に馴染まずに力尽きるというのは魔法使いにはよくある話だ。
それでもヒスイには疲労こそ感じるものの、危機察知が感じ取れない。
ヒスイの魔力の範囲内で収まっているということになる。
だとしたら、ヒスイの魔力は私が思っている以上に大きなものの可能性がある。
「ヒスイは魔法が嫌いだったよね、どうして使う気になったの?」
「それは……」
ヒスイは目を逸らすと、口を閉ざした。
言いにくいことがあるとはわかっている。
でも長年生きてきた私には欠落している部分がある。
感情への執着と興味だ。
感情への執着がないから大きな感情を抱かないし、興味がないから人のことをわからない。
ヒスイには話してあるが、ヒスイも人間だ。
すぐに何でもかんでも言えるような人にはなれないし、そういう関係性にもなれない。
「ライラさんは戦うことは好きですか?」
「いや、嫌いだけど」
「それと一緒です」
一瞬、意味がわからずに首を傾げるが、ヒスイは私の横に来てこの町を見渡す。
それはとても優しい表情で、自分の故郷でも見せない笑みだった。
「僕には魔法しかありません。でもこの魔法で人を救えるなら救いたい。困っている人、助けを求める人、それに……」
ヒスイは少し顔を赤らめた。
まるで禁断の果実に触れるような柔らかい手つきで私の手を握って、見つめた。
「大好きな人を守りたいんです」
横にいるヒスイは私の生きた年数とは比にならないほど若い。
それなのに、こんなにも大人びて見えるのは感情があるからなのだろうか。
それとももっと私にないものを持ち合わせているのだろうか。
「そ、それに大好きな人を守りたいって気持ちは誰しも持っていると思うんです! だから誰かの大好きな人が悲しんでいる姿を減らせるような魔法使いでありたい。僕の旅の目標です」
ヒスイの言葉は実に人間らしい。
でもどの人間よりも優しい言葉に聞こえた。
他者を思いやる気持ち。
それはきっと彼が持ち合わせている最高の感情なのだろう。
「ヒスイ」
そう言って私はヒスイの頭を撫でた。
最初は照れくさそうにしていたけれど、ヒスイは黙って受け入れて心地よさそうにしていた。




