魔族に襲われた町、アルタ。4
「それで、彼女のことはどうするの?」
私はギルに同情することもリアに同情することもなく、淡々と告げた。
その方が人間、前を向けるのだと知っているからだ。
「どうするって、今更……」
「彼女はお前を待っていたんだろ? それに応えるのか、それとも無下にするのか」
ギルは俯きながら考える様子を見せた。
ギルに似合わない真剣な顔でゆっくりと歩みを進め、最後に笑った。
「お前は卑怯だな」
皮肉とも取れるその言葉は限りなく優しい声色だった。
「ありがとよ」
ギルは自分より小さい私の頭を撫でた。
「お前より年上だぞ」
「ババアだろ」
抗議の言葉を鋭い目つきで言い放とうとした時、目の前にはもう魔水晶が広がっていた。
「これを持って帰れば、ヒスイが魔法で復興してくれるんだよな」
「全部じゃない。少なくとも形だけだ。後は住人の気持ち次第だ」
そう、復興は形だけのもの。
本当の復興は住人の心がなければ完成しない。
たとえ、最初は心があっても上手くいかない復興に心が折れてしまえばそれで終わりだ。
商売も、流通も、外交も、住人たちも関係性も、全て住人にかかっている。
ヒスイは気づいていないようだが、復興というのはそんなに簡単なものじゃない。
人と人とが繋いできたものを一度壊しているのだ。
それは簡単に修復できない。
魔法なんて形だけにすぎない。
魔法が唯一勝てないのは心なのだから。
「でも、お前も気づいているから復興に力を貸すことを止めなかった」
「何のことだ」
「わかってるくせによ」
ギルの言いたいことはわかっている。
あの町はたとえ微弱ながらにも復興の余地はあった。
孤児院や仮の住宅は、少なくともその象徴だ。
繋いでいけるかは話が別だが、形だけを整えれば最低一年は保つ。
人間にとって一年は短い。
それでもその一年が肝心な時もある。
だから私はヒスイに託した。
この町を、ギルの故郷を。
「それじゃあ、採掘を始めようか」
「ああ、日が暮れないうちに帰らねーとな」




