魔族に襲われた町、アルタ。2
「ヒスイ、お前……」
ギルはやっと言葉を紡ぎ、私は呆然としていた。
ヒスイは息切れしながらもその完成した家を見て一息ついていた。
「やっぱりそうでしたか」
「……何が?」
ヒスイは納得がいったようだが、私には理解できなかった。
魔力の制御は慣れてきてはいたものの、家を作れるほどまで魔力の制御ができているのは思えなかった。
それに加え、思い通りに操っていたところからしてヒスイが一人で成し遂げたとは思えなかった。
家を作れるだけの魔力は確かに持っていた。
だが、ヒスイはその魔力を制御できないから特訓していたはずだった。
それがこの通り、綺麗な家の形をしている。
「先に言っておくとこれは僕だけの力じゃありませんよ」
「どういうこと?」
「これです」
ヒスイが見せたのは魔水晶だった。
ヒスイに預けていたが、若干光を失いつつある。
「これ、おそらくですが魔力を制御する力があります。それも使う者の意識で魔力を変えられます。きっと王族などに使っていたのはそれが原因ではないかと」
そう言って次に見せたのは今まで練習していた氷の花だった。
今までの形とは違い、滞りなく隅々まで綺麗に細工されていた。
「魔水晶を持った時、なんとなく自分の魔力がわかった気がしたんです。だから試しに氷の花を作ってみたらイメージ通りにできて。だから大きい魔法でも使えるのではと。まあ魔水晶の力を借りることになるのでこうやって力を奪ってしまうのですが。それでもこの魔水晶があれば、力を制御することは可能です」
確かに魔水晶はどんどん光を失って黒ずみ始めた。
だが、これは上級。いや宮廷に使える研究者や術師でない限りは知らないことだろう。
それに気づいたヒスイはやはり多大な魔力を持っているのかもしれない。
そう、ヒースと並ぶかもしれない魔力を。
「ライラさん。僕にこの町、任せてくれませんか? 期間は一ヶ月。それ以上経った場合は潔く諦めます。お願いします」
ヒスイは深々と頭を下げた。
ここに留まり、町を復興したと知られればヒスイは確実に狙われる。
国や魔族、闇の組織。
数知れない者たちがヒスイを欲しがるだろう。
容易く頷くことはできなかった。
「ヒスイ……」
「ライラ、俺からも頼む。一ヶ月は長いことはわかってる。だから二週間だけ。力を貸してくれないか?」
ギルはこの町を諦めた顔をしていた。
でもヒスイの魔法を見て威勢を取り戻した。
リアも私のことを見ている。
二週間。
ここから次の町までは記憶通りなら一週間はかかるだろう。
もし、誰かがこの力に目が眩んで誰かに情報を売るような真似をしても、最短往復で二週間。
二週間なら逃げられるかもしれない。
多少のリスクとこの先の旅が心配だが。
「わかった。ギルの言う通り二週間だ。それ以上はヒスイに危害が及ぶ可能性がある。リア、ここの長は?」
「町長なら孤児院にいます」
「なら今から向かう。魔水晶を使うわけだ。ここの自然を荒らすことになる。それを旅する私たちが責任を取れない。町長から許可が出て、なおかつ町の住人が手を貸す。それを条件にするなら、滞在を認める。住民がいないのに復興しても意味がないからね」
ヒスイは緊張の面持ちを安堵の笑みに変え、元気よく頷いた。
ヒスイらしい笑顔だ。
「じゃあ早く行きましょう!」
ヒスイを旅に連れてきたのは運が良かったのか悪かったのか。
まだわからないけれど、やっぱり旅は楽しくなりそうだ。




