魔法使いヒスイ。4
ヒスイと旅を始めて一週間。
二人旅は一人の旅と違って話し相手がいる分退屈しない。
今日は寒さも和らぐ、晴天の日。
次の町までまだまだあるこの山道で私はヒスイが持ってきた果物を食べていた。
「やっぱりエテールの食べ物は美味しいね。この果実なんていうの?」
「ライラさん、今の僕に聞きます?」
ヒスイは疲れ切った顔で横たわっていた。
この一週間、私はヒスイに魔力制御の特訓を強いていた。
ヒスイの魔力は膨大だ。
そのため次にこの間のような炎を出されたら対策のしようがない。
ヒスイには魔力を制御して使いこなせるようになってもらわないといけないのだ。
だが、肝心のヒスイは今まで自分の力が怖くてまともに魔法を使ってこなかった。
そのせいで今魔力を使い続けると体力がもたない。
具体的に訓練の内容をいうと、山道を歩き続けている間魔力を一定にして炎なら炎。氷なら氷を一定の形にとどめておく。
そんな訓練を行なっていた。
そして休憩の今、魔力の定着を解除して呼吸を整えている。
「ヒスイは集中力が足りないね。さっきも氷の花が散っていた」
「それはライラさんが背中を突っついてきたから……」
「あれが攻撃だったら、ヒスイは間違いなく乱れた魔法を使うことになるよ」
ヒスイは弱点を突かれたとわかったのか黙って手のひらに氷の花を生み出した。
その氷の花はところどころ綻びはあるものの、綺麗なガラス細工のようになっていた。
最初の時は花とは思えないほど酷い有様だったのに。
成長が早い分、期待はあるということだ。
「ライラさん。僕がライラさんの攻撃を止めることができるようになったら、一人前として認められますかね」
「それはどうだろう。私は不死なだけだ。強い奴は他にいくらでもいる。上級魔物や大群の魔族だったら負けるかもね」
この世界に存在する魔物や魔族。
それは負の象徴と言われるほどだ。
人を喰い、村や町を滅ぼし、気候に異変をもたらすものまでいる。
一方で良い存在と言われる種族もいる。
精霊、妖精は姿を現さない代わり、その負の象徴を封印する役割を持っている。
幻獣はその土地の守り神として役目を全うしていると聞くが最近は姿を見ない。
良い存在と言われている幻獣、精霊、妖精を人間が蔑ろにしているからだ。
人間の環境や暮らしは驚くほど進化した。
都市部では魔法道具や、魔法建築物、商業、情報。
全てが揃っているくらいだ。
でも全て良かったとは思えない。
町や村では今、過疎化や差別が広まり、都市部では晩婚化が進んでいる。
全て揃う未来なんてやってこないのだろう。
いずれ何かを失い、その代わりに手に入れる。
手に入れた先にまた失うものがあったとしても人間は恐れない。
「休憩は済んだ? もうそろそろ歩き出さないと、日が暮れる。野宿には変わらないけど洞窟の中なら朝に雨が降っても安心だ」
「じゃあそこまで次は自然の花を咲かせます」
「その息その息。じゃあ進もう。魔法使いヒスイ君」




