魔法使いヒスイ。3
「今からずっと昔、呪いをかけられて私はエテールから追放された。それから四百六十五年旅をしているんだ」
ヒスイは驚きながらも歩みを止めずに、私の成り行きを聞いていた。
それが初めての感覚だからか私は町を出た時の話や、親友アリーナの話、今までの旅の話を少しだけした。
最後に、私の話を聞き終えたヒスイの言葉は意外なものだった。
「でも、こうして生きていてくれたから、僕はライラさんに出会えたんですよね。それなら、生きていてくれてありがとうですね」
「いや、死ねないんだって」
「でも、あなたが前を向いて旅をしていなかったら僕は会うことはなかった。エテールで出会ったのも何かの縁かもしれません。やっぱりあなたは僕の運命の人!」
ヒスイは少し乙女感があるというか、男らしくないなと思ってしまう。
別に女の子というわけでもなさそうだが、現に私に恋をしているようだし。
貴族で育ったからか、姿勢や言葉遣いも正しい。
私とは大違いすぎて少し似合っていないなと思いながらもヒスイの言葉を適当に流していた。
「ですが、大魔法使いヒースとなると、見つけるのも大変ですし、不老不死なんて実現できるなんて思わなかったですし。問題だらけなのは間違いないですね」
「別に、探そうともしていないけどね。ていうか、ヒースって有名なの?」
「え……」
ヒスイが明らかに困惑した様子で私を見た。
言っていることがわからないとでも言いたげに。
「あの大魔法使いヒースですよ。この大陸どころか世界中知っているレベルの人間、もはや生きる伝説です。まあ大昔に亡くなったとされていますが、ライラさんの話を聞いたら不老不死の可能性はありますね。亡霊を見たって人がいるくらいですから」
「あいつ、そんなに有名っていうか、どこにでも姿現していそうだね」
「旅をしていて知らなかったんですか?」
「うん。人と関わるのは最小限にしていたからね。不老不死なんてバレたら大変だ」
ヒスイはなるほどと言って腕を組んで考え始めた。
何を今の話で考えることがあるのかと思うが、深く突っ込むのも面倒でそのまま歩き続けた。
森も段々と緑が深くなって、奥の方まできたことがわかる。
木々に囲まれているせいか寒さも増した気がする。
「それなら、この旅は大魔法使いヒースを探す旅にしませんか?」
「え?」
今まで何を考えていたのかと思えば、私の原点でも考えなかった案だった。
真面目な顔で言うヒスイに何も返せない私。
それは一番厄介で、人と関わることになるのを意味していたから。
「だって僕は老いていきますし、いつかは死にます。ライラさんの夫役ができなくなったら困りますし。旅は目的があった方が捗りますし」
「いや、それはそうだけど」
「じゃあそうしましょう。大魔法使いヒースを探す、冒険者ライラと魔法使いヒスイ。なんかカッコよくないですか!」
「普通にダサいけどね」
出会って間もない私たちがこんなに話しているのは奇跡なのではないか。
そう思えわせる。
でも……
「この旅も楽しくなりそうだね」




