後日談のような始まり。7
「どこに行った!」
「こちらでは遠すぎないか?」
町の人間の声が少しずつ小さくなる。
人が減り始めた。
身体能力的には遠くまで走ったほうがよかったのだが、やはり食事をしていないせいか足がもつれる。
そのため、近くの茂みに隠れて人がいなくなるのを待っていた。
私にはほとんど魔力がない。
だから魔力で探し出せる人間はほとんどいないだろう。
もしかしたらヒースなら探し出せるのかもしれないが。
「ここで足止めもきついんだけどな」
早く食糧を見つけに行きたい。
それなのに、動けば見つかる確率が高い。
四百六十五年前とは森も造りが違う。
下手に動くとかえって目立つ場所に出てしまう。
「仕方ない。果物食べちゃうか」
「あの……」
鞄を開けた瞬間に声が聞こえて、私の心臓は飛び跳ねた。
気配をまるで感じない。
いつかの時と全く同じだった。
急いで鞄を背負って逃げ出そうとすると、腕を掴まれた。
「待って。僕はあなたを捕まえたいわけじゃない。お礼をしたいんです」
振り返れば、先ほどの炎の少年が立っていた。
腕から手を離すと少年は深々とお辞儀をした。
「先ほどはありがとうございました。僕一人じゃどうにもできなかった」
「それはいいよ。魔力を自覚していない人間は制御できない。まあ、あそこまで魔力が大きいとは思わなかったけど」
自覚がない魔力の大きさじゃないが、一応首を突っ込まないほうが良さげだと悟ったためそこで私は言葉を止めた。
「それで、捕まえる気がないのに追いかけてきてどうするの? なんか荷物多いけど?」
一人旅にでも出るのだろうか。
あの町に止まるのは許されないだろうし、視線も気になるだろう。
旅に出たほうが気楽かもしれない。
「あの、僕を連れていってくれませんか?」
「……え」
思考が停止しそうになるのを堪えて、私は思い切り腕を振った。
「いやいや、私は」
「お願いします! あなたについて行きたいんです!」
「声でかいって。あと隠れてて」
咄嗟に少年の頭を掴んで私と一緒にしゃがませた。
声は聞こえないものの、まだ気配はする。
油断はできないのだ。
それに比べて少年はずっとつぶらな瞳で私を見ている。
「えっと、なんでついてきたいの? 私、一人で旅するタイプだし」
「それは……」
急に少年の態度が可愛らしくなったかと思えば、次に出てきた言葉は私の思考を完全に停止させるものだった。
「あなたに一目惚れしちゃったんです」
「……え?」




