雨降る夜に魔法の魂。2
着くとそこは木々がなぎ倒れていた。
夜も近いせいか人もいない。
何か取引をするには十分隠れやすい場所だ。
私でもジリジリと感じる魔力の痕跡は強大さを物語っている。
「どう? 追跡できそう?」
「無理ですね。ここで魔法が使われたのは間違いないのですが、ここから一切の魔力が感知できません。おそらく魔力の上に魔法がかけられている可能性があります」
「そんなことできるの?」
「本来は神秘の魔法。古代魔法の一つで、神が使う魔法です。魔力は確かに存在しますが、人に感知できないようにする魔法があったとか。解明はされていません。ですが魔王ヒースなら……」
魔王ヒースなら古代魔法も解明してしまう。
そしてこのように大規模に使うことができる。
ヒスイはそう言いたいのだろう。
それがどれだけ恐ろしいことかを意味している。
ヒスイはこないだの古代魔法で既に体力の消耗具合を知っている。
だから顔を青ざめているのだ。
「ライラ様! ヒスイ様!」
遅れてやってきたノース率いる衛兵や魔法使いがその場を囲む。
だが、その数は少数だ。
捕まえる気がないのか、それとも国民にバレることを予想して少人数にしたのか。
どちらにせよ、戦力にはならないだろう。
「魔王は? レイン・ジャックは?」
「もういない。でもこれだけ痕跡があれば十分な証拠だ」
後ろから髭を生やした身なりのいい老人が痕跡を見つめて手をかざした。
魔法の解析をしているのだろう。
「やはり大きな魔力です。旅人様の言う通りかと」
「まだ疑ってたのね」
「仕方ありませんよ。国を動かす事態なのですから」
ノースは落ち着きを取り戻したようで冷静に現場を見つめていた。
「ヒスイが言うに魔力の上に魔法がかけられている。古代魔法だ」
「そんなことができるのですか。魔王は」
「嘘を言っていると思うなら聞いてみればいい。解析してるんでしょ。最も、解析はできないだろうけど」
ヒスイでも魔法がかけられているという推測しかできない。
それは不自然に魔力が消えているから。
道理を繋いで真実にくっつけるしか方法がないのだ。
たとえ宮廷魔法使いだとしても解析は不可能だろう。
「カノール様、本当ですか?」
宮廷魔法使いはカノールというらしく難しい表情をノースが覗く。
カノールは難しい表情のまま、頷いた。
解析も想像もつかないと言った顔で。
「何か手段はないのですか? この国を守る手段は」
ノースもこの国を守る一人のナイトなのだろう。
その目は怯えながらもはっきりと闘志が燃えている。
「これから見つけるしかない。一つ言えるのは、相手が魔王の力を受けたレイン・ジャックなら対抗できるのはここにいるヒスイしかいないと思うよ」
ヒスイは顔色を変えないまま痕跡を調べている。
何かを掴んだからあの顔をしているのだろう。
手段を見つけた時の顔をしている。
「ヒスイ様は何者なんですか?」
ノースはもう疑うことなく私たちの顔を見ている。
「ヒースに対抗できる力を持った天才魔法使い、の見習いと言ったところかな」




