ジャック計画。3
その言葉の意味がどこまで伝わったかはわからない。
でも過去に出会った誰かも、ここにいる私も、人を殺めている事実がある。
それが生きるための正義といわれたことだってある。
実際、私は正気の人を殺めてはいない。
乗っ取られたり、憑依された人間だけを殺めた。
必要に応じて。
でも、それを悪だと罵る人だって必ずいる。
だから正義は悪の表裏なのだ。
正義は誰かの悪になる。
悪は誰かの正義になる。
その世界の事実は長年生きている私にしか本当の意味では伝わらない。
でも若いヒスイもわかるところはあるはずだ。
何よりこれは止めなきゃいけない。
レインがもし何かを計画しているのならなおさら。
彼は悲しい過去を背負い生きるのだとしたらこれ以上、犠牲も悲しみもいらない。
「止めよう。二人で」
私はヒスイに手を差し出した。
どんなに残酷な事実でも立ち向かわなければいけない。
その覚悟を分かち合うために。
「そうですね。彼、アリス王女、先代王、そしてこの国の人のために」
ヒスイも私の手をとり、頷く。
その瞬間だった。
城下町でも外郭でもない。
国と国の間で大きな魔力を感じたのは。
「今のは!?」
窓を開け、外を見ると異変に誰も気づいていない様子だった。
魔力に鋭い人でなければこの違和感には気づかない。
だが、魔力慣れしている私たちにはわかる。
この魔力の大きさは只事ではないと。
「ヒスイ、追跡!」
「はい!」
ヒスイは目を凝らし五感を研ぎ澄ませているようだった。
魔力の大きさが大きすぎて原点がわからない。
この分野はヒスイに任せるしかない。
「外郭の少し先です。方角は南東。他の魔力はないため一人だと思います。ですが」
「わかってる」
ヒスイのその先は目が訴えている。
もう二度と見たくないという目と、もう一度見たら次はないという闘志が。
「ヒースの魔力だ」
「レイン・ジャックが力を発揮したということでしょうか?」
「いや、おそらくだけど誘き出したんだ」
「どういうことです?」
ヒスイはその方角から目を離さずに険しい顔を作った。
「情報を流したのはヒース。そして今、ヒースが力を託した。レイン・ジャックに」
確実な話かと問われれば違うというしかない。
だが、あの力の発し方、魔力、種類を私は忘れない。
絶対的に感覚が、体が覚えている。
ヒースは今、力を譲渡した。
それだけは私の体が証明できるようだ。
「まんまと嵌められたのね、私たちもこの国も」
魔王ヒースはどこまで頭脳があるのかわからない。
でも確かに言える。
ヒースに正義という言葉はない。




