ジャック計画。2
魔王ヒースがホワイト王国最大の脅威といわれたロイスト・ジャックの孫、レインに力を授けたという話を聞いた後。
私たちは別室で違う資料を参考にしていた。
ロイストの孫だけあってレイン・ジャックの情報は国の勢力を最大に使って集められていた。
そのおかげでレインの情報はかなり入ってきている。
レインの年齢は二十四歳。
赤い目が特徴で髪色は黒。
その見た目から死神と言われるほどだ。
だが、レインは元々この国の出身ではない。
ロイストの子孫ということでレインの父の代から追放されているのだ。
その追放されたはずのジャック一家は消息不明になり、つい最近になってレインが国の中で情報を漁っているという証言が上がっているらしい。
「あのライラさん、僕の思っていることを言ってもいいですか?」
「人払いはしてあるから大丈夫だと思うけど」
ヒスイの言いたいこともなんとなくわかる気がして外に目を向ける。
庭の外には衛兵がいるが、この書庫には誰も近づいてはいない。
魔力も感じないからその情報は確かだろう。
「人払いって言葉が出るなら言わなくてもわかっているってことですよね」
「まあ、私も似たようなところを感じてはいるからね」
そういうと、ヒスイは書類を見ていた手を止めてため息をついた。
「これって確実性のないただの因縁にも思えるんですけど」
「因縁かはどうか置いておいて、ジャック一家を毛嫌いしているホワイト王国がレインに最大の警戒をしているね。確かにレインはこの国に現れている可能性もあるし、ヒースから力を受けているという可能性もある。でも全てが推測であり、何よりこの論文を読むとレインが復讐を企んでも仕方がないように感じるね」
ジャック一家の末路は事細かに書かれている。
どこまでも追っていたということになる。
そんな状態で一家が穏やかに過ごしていたという説は確実にないだろう。
消息不明とも書いてあるが、辻褄の合わないところもある。
抹殺、あるいは恨みを買ったロイストの復讐に遭った可能性が高いだろう。
レインが恨みを持ち、この国に復讐したい気持ちがなんとなくわかってしまうほど、残酷な内容まである。
「ここまでしなければいけないのでしょうか」
「国を守るためとはいえ、やりすぎではあるね。でもどこの国も一緒だよ。犯罪組織や犯罪者には冷たい目を向ける。手を差し伸べる人は少ない」
「どうしても憎めないところがあるのですが」
ヒスイは今回の案件は向いていないだろう。
人情が強すぎる。
私でも対峙したら怯む言葉を浴びるかもしれない。
だが、ヒースの力を受けていたら私だけでは戦えない。
「私も憎めない。でもね……」
私は本を閉じてヒスイを見つめた。
残酷な世界の真実を告げるために。
「この世界では犯罪は許されない行為だ。たとえそれにどんな理由があっても。それがこの世界の光であり闇だよ」




