ジャック計画。1
ノースと共に来たのは城の書庫だった。
たくさんの国の書物が並べられている。
古い紙の匂いが鼻をくすぐり、落ち着いた色合いが目を落ち着かせる。
「こちらにおかけください」
もはや客人と扱われているような私たち。
ノースは機嫌がいいわけでもなさそうだが、客人として扱ってくれるらしい。
彼が取り出したのは二冊の古い本だった。
一冊目には城下町で配られるような情報紙の切り取りが貼られ、二冊目にはこの国の文字で歴代事件簿と書かれている。
ノースは二冊目を指差して順に説明していった。
「こちらには最近起きた事件が書かれています。犯罪者の記録がないものは全て正体不明の人物によって起こされた犯罪です」
ノースの指す二冊目には大量の事件の見出しと思われるものが並んでいるが、二十項目ほどある中で実に半分以上が無記録状態となっていた。
犯罪者不明や実態不明と書かれているため無記録になってしまったのだろう。
その隣に置かれた一冊目の本には一人の顔写真が写っていた。
「この男は?」
「国や衛兵が睨んでいる男です。この男が事件に大きく関わっている可能性があります」
「可能性?」
私だけではなくヒスイも疑問に感じたようで口にする。
写真は貼られているものの、見出しや記録は一切載っていない。
正確には物騒なものが載っていないだけで、その他の概要は写真の周りにずらずらと書かれている。
不明確な人物を犯人扱いするようには感じ取れず、聞き返すと驚きの名が出てくるのだった。
「この男はかつてホワイト王国を揺るがしたロイスト・ジャックの孫です」
「ロイストって……」
「はい。ホワイト王国の歴史上最も凶悪とされる犯罪組織のリーダーです」
ロイスト・ジャックはこの大陸では知らない者はいないとされるほど、大きな組織のリーダーで、その中核はホワイト王国にあったと噂されている。
ロイスト・ジャックはテロを繰り返し、国や都を騒がせてきた。
魔物や魔族の次に恐れられているジャック賊。
それがロイスト・ジャックの組織だ。
「ジャック賊のリーダーに家族がいたなんて聞いたことがありませんが」
ヒスイもロイストのことは知っているようで話に参加できるようだ。
だが、ヒスイの言う通り、そもそもロイストは捕まっていて、ジャック賊も解散している。
脅威はないとされてきた。
それが今になって脅威をもたらしているとなると不吉な空気が漂う。
なぜ今になってロイストの孫が現れたのか。
アリスが王女となったからなのか、あるいは……
「魔王ヒース」
その単語を聞いた瞬間に肩に力が入り、全身を打たれたかのような衝撃が走る。
「今この世界に不穏な空気をもたらす魔王がロイストの孫、レイン・ジャックに力を与えたとされています」




