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ステータス鑑定

一日遅れてしまいました。申し訳ありません。

一日が光の速度で過ぎていきました。

 巫女はそらたちを別室へと移動させた。

 その部屋も質素な飾りつけでできている。中央に淡い空色を放つ水晶があることが先程までいた部屋との違いだろうか。火の玉などがふわふわと浮遊しているのも変わらずで、より水晶があることにより西洋っぽいというか、そういった雰囲気を感じる。

 「それでは皆さん、順番にこの水晶に手をかざしてください。あ、あんまり勢いよく触らず、そっと触れてくださいね? この水晶は皆さんの内なる力を測って、可視化してくれて、更に神のご加護も見ることができる優れものなんです! あ、えっと、神の加護っていうのは、創世神レヴェナ様から授かるスキルのようなもので、99%の国民が持っています。皆さんにあとで配りますが、神結晶と呼ばれるこの鉱石に込められています。そして、神の加護の中で上位のレベルの神の加護を藍の加護と呼び、その藍の加護を持っている人間を「神の使徒」といいます」

 全員が雑談をしながら水晶の前へ並ぶ。全員自分がどんな神の加護を授かるのかという話ばかりしている。

 そんな中さすがというべきか一番最初に水晶に手をおいたのは祐希だった。祐希が手をかざすと光り輝く金色の光が部屋を満たした。

 そらは思わず目を瞑り、顔を背ける。

 すると巫女の恍惚とした声が響く。

「Sランクですか~! 素晴らしい~! しかも魔法適正が全属性、神のご加護も当然藍の加護で魔力無限に、絶対防御、カリスマ、3つも持っていらっしゃって、職業も『勇者』! すばらしいですね~!」

 巫女は年相応のような無邪気な声で祝福する。祐樹も「あ、ありがとう…!」ととてもうれしそうである。その笑顔を見て女子はキャーキャー言う。

「自分の攻撃力、防御力、素早さ、魔力、魔法攻撃力、魔法防御力、魅力、幸運の能力値を可視化したものをステータスというんです」

 巫女は祐樹のステータスを指さしながら説明をしている。

 LV1である現在の全ステータスの合計が1000を超えているとSランクなどと基準が決められている。

 通常の人間は基本、400程度、つまり1ステータス50あたりしか降られておらずこれが地球の人間の平均とほぼ等しいのだが、祐希はほぼほぼどの項目も10倍程度だ。

 平均の握力40㎏だという。だが、祐樹は一人だけ握力が400㎏ある。みたいな感じだ。いかにチートかわかるだろう。

「魔法適正というのは一言で表すと『才能』というのが一番当てはまります。魔法には種類があり、大きく分けると、攻撃魔法と支援魔法とあり、攻撃魔法は、水魔法、火魔法、風魔法、土魔法、光魔法、闇魔法の6種、支援魔法は回復魔法や蘇生魔法などとあり、これらの魔法の中から自分に合う魔法というのが適正魔法なのです。通常2、3個、多い人でも5個ほどです。魔法の適正の属性は生まれたときにすでに決まっていて、適正属性の魔法を使うと適正じゃない属性の魔法の何倍もの威力、詠唱の短さを得られて、成長倍率が高いため、基本的に適正属性の魔法を使うことが多いんです。

 攻撃魔法は属性ごとに特徴が存在していて、風が魔法のスピードに優れ、水が攻守素早さともにバランスよく、火は魔法の攻撃重視、土は魔法での防御が高めです。光はほかの属性や支援魔法と組み合わせることができ、闇は恐怖、憎しみなどの「黒い感情」があるほど攻撃や防御、素早さが上がります。

 次に職業です。職業とは読んで字の如く、『勇者』や『盗賊』のようなものが存在していて、この職業が何かによって、技能が獲得できます。盗賊は「隠密」、勇者は「聖剣開放」などのスキルが獲得できます。」

 祐樹が技能の欄を探してみると、聖剣解放というのがあったらしく、にこっとして、「あった!」と叫んでいる。祐樹は几帳面なのか、巫女の話に耳を傾けたのち、自分のステータスを覗き確認しているようだ。

 その後、浩太郎は「格闘家」、花凪は「回復術士」、彩女は「僧侶」という職業にそれぞれ就き、神の加護もそれぞれの職業を支えるようなものが与えられた。

 それぞれ名前の通りの職業で、回復術士と僧侶は「回復かサポートか」の違いらしく、どちらも後衛職とのこと。

 そして、そらの番がついに回ってきた。

 緊張3割、7割期待の心を必死に平静を保たせつつ、手をかざすと、淡い光が灯る。

 巫女の満面の笑みが一気に消え去る。

 (え? なんで真顔になってんの?  ま、まあ、異世界に行ったんだし、こういう僕みたいなモブは強いチートだったり__)

 とそらが一抹の不安を覚えた後、自分の職業と加護が発表された。

「藤田そらさんの職業は強化術士、適正属性は強化魔法、神のご加護もありません」

 そう、告げられた。

 (神の加護が……ない?)

 そらは眼の前が漆黒で染まるような感覚に陥った。

 △

 神の加護がない、そして適正属性も1つだけ。

 神の加護は非常に戦いにおいて重要な部分で、あるかないかで戦い方が一切異なる。魔力無限なら高威力の魔法を連発して相手に何もさせずに勝つことができるし、絶対防御を使えば盾役(タンク)になれる。これは1つアドバンテージを失っている状態のため、ハンデをつけて戦っているようなものだ。小さい赤ん坊でも神の加護は使えることが多く、だいたい99%の人間が神の加護を持っている。つまり凡人以下。

 これが異世界に召喚された転生者とかだったら話は変わるが、あいにく、そらは勇者という存在。戦いを強制されるため、非戦闘職に就くこともできない。唯一の救いは適正魔法が後衛っぽいところだろうか。

 さらに適正魔法は二個以上持っているのが普通のため、凡人以下。

 あれれー? おっかしぃぞー? とそらは冷や汗をかきながらもう一度確認するが、何にも変わらない。何度も確認するが、その表記は憎いくらいなんも変わらない。

 つまりかなりの無能だということだ。モブどころではない。

「あれぇ~? 藤田そらくぅん~? もしかして、もしかしてぇ~、無能だったりしないよなぁ~? 適正魔法一種類でも、神の加護なくても強いんだもんなぁ~?WW」

 ねっとりとした声が鼓膜にへばりつく。そらが振り向くとそこには見慣れた連中が映っていた。 

 田中敬一(たなかよしかず)近藤緋雨(こんどうひさめ)鶴田和也(つるたかずや)。いつも絡んでくる面倒くさい連中だ。転移した直後は比較的おとなしいと思っていた矢先にこれだ。本当にコイツラは元気なものであると、げんなりしつつ、そらは思う。

「ブワッハハ! ステータスもオール10だってよ! がははは!」

「強化術士がどうやって生き残るんだよぉ~?」

 自分たちが有利な位置に立ったらすぐに弱者をバカにする。

 残念ながらコイツラはとてもつよい能力をもらったらしくほくほく顔だ。世界は不平等だ。

「同じクラスメイトにそんな事を言うなよ、藤田が可哀想だろ」 

「こういうときこそクラスの皆さんで協力するべきでしょう」

 祐希と花凪がこのように注意するとそれ以上は何も言わず大人しく離れる。

 祐希のものは嫌味にしか聞こえないだろうが、本人は本当に「力がない弱者にそうやって言うんじゃねぇよ」という意味を込めて言っている。のだが、本人は嫌味として聞こえるということを知らないため、このように言ってしまうのだ。

「は~い、それでは皆さん、職業を確認することができたと思うので、帝国、「ベルセイユ帝国」の城まで転移魔法で移動します。こちらの魔法陣に乗ってください」

 恐る恐るといった感じで全員魔方陣の上に乗る。2つに分けて向かうらしく、前半16人ほど乗せたら、魔法陣が発光し、消えてなくなる。16人の姿は跡形もなくなった。後半のそらなども、魔法陣にのり、ミキサーのようにシェイクされ、グワングワン揺れるような感覚になれようと必死の形相を浮かべる。

 そらたちが帝城についた時にはすでに、全員揺れによる酔いで死にそうになっていたという。

 勇者たちが全員乗り物酔いで倒れこんでいる様子に不安そうに皇帝はつぶやいた。

「あれ大丈夫か……? あんな奴らが邪神を倒せるのか……?」

「……」


 ♦♢♦♢♦♢


 一方そのころ、神の間では。

 先ほど魔法陣の移動によって人はいなくなったと思われたが、魔法陣が消えてから1分ほどたったのち、突如空間に歪みがつまれ、そこから女が出てくる。

 そして、地面に落ちている走り書きのメモに目を通す。

「レヴェナ様の加護を受けず、邪神の加護を受けた生徒が一名、()()()()という名前の生徒で、その加護の名前は『ガチャ』、過去、レヴェナ様を討ち倒そうとした「反逆者」の1人が持っていた加護で、要観察対象とし、言動を監視する」

 と書いてあった。藤田そらの名前を見、(そらをしるもの)は、にやりと笑った。

クローレン(邪神)の加護……か。偶然ではないだろうから、僕の作戦を邪魔をしようとしているんだろうけれど……それはちょっと無駄だよぉ~? クローレンくん?」

 ねちねちとして粘着質ないやらしい声が響く。

「彼はもう僕の操り人形(マリオネット)。どんなしぐさもしてくれるようにできるのさッ! あ~!! 幸せで頭がおかしくなりそうだよッ!」

 女はもう、戻れない目をしていた。女の目は何よりも黒く、漆黒で、濁っていた。自分を自分で抱きしめて、身もだえしている姿は、間違いなく、普段の彼女とは違うものだった。二重人格なのかと疑ってしまうほどだ。

「ぼくはねぇ~、彼のクラスに入り込んでいるんだ~! 偽物になっているのに誰も気づかない…滑稽だねえっ!なんて面白いんだ!!」

 そらもよく知っている人物が、先程までの不安そうな表情から打って変わって、狂喜に満ち溢れた顔で呟く。

「とはいえ、彼の存在が、ふと影を落とす、そんな存在であることは否定できない……」

 女は考えるそぶりを見せたのち、名案だ!と言わんばかりに口にする。恐ろしいことを口にする

「そうだ、()()()()()()()()()

 るんるんと踊りながら女はつぶやく。唇を妖艶になめとると、舌なめずりをする。

「彼を殺して、ひょうほんに~しっちゃお~!!」

 蝶のように舞いながら、快楽殺人犯のような顔を、表情を浮かべながら_

「ただ殺すだけじゃ楽しくないから~、裏切ってもらおうかな~クラスメイトの……田中敬一あたりがいいかなぁ……!」

 女がそう言うと、魔法陣が女を中心に描かれていく。


「さあ、始まる」


 どこか恍惚とした響きを含んだ声が響く。

 

「最高の喜劇が、ね」


 魔法陣が再び空間を歪めるように消える。

 神の間に現れるものは今度こそいなかった。長い、永い静寂が訪れた。

 月に影が映る。その影は、大きい翼、そして、大きなリボン、そして、大きな赤いスカート、そして_八重歯が、まるで血を吸うかのような、吸血鬼のようだった。

 月の周りを舞う様に飛び回る。そして、それは、とある女性を襲う。

「ウッ……きゃぁぁ__」

 女性はそれにかまれると、最初は痛がり、声を出そうとしたが、突如糸が切れた人形のように仰向けに倒れこむ。

 倒れこんだ女性に大きな変化が起こる。来ていた服は血のような赤いドレスにかわっていき、その手には、鎌が、鋭い八重歯が、でて、恍惚の表情を浮かべた。

「あ……め……様……」

 恍惚の表情を浮かべたまま、つぶやく、そして、ゆっくりと起き上がる。

「ああ、修道着姿……お美しい」

 まるで信者のように、一礼をする。それは満足そうにうなずくと、

「眷属を増やしてこい」

 と端的に言った。それに、()()()()()()()は、嬉しそうにうなずき、闇夜に消えていった。

「ふふふ、血が……おいしい……人間はわらわの……奴隷(しもべ)……」

 妖しい笑みを浮かべ、それは飛び去った。

 そらたちのいる帝城のほうへ、まっすぐと。

ちなみに改変する可能性大ですので、ご了承ください。

(もうすでにあらすじの内容を結構変えました)

3/13 かなり複雑な設定を設けるので矛盾点があったらビシビシ指摘していただきたいです

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