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正義のエグゼクショナー 旧:神殺しのターニング・ポイント  作者: 結末
第一迷宮 死の迷宮 ヴァジエニア迷宮
14/14

もう一つの人格

かなり戦闘シーンのテンポが悪いですが、これは初めての戦闘なので……許してください

 そらは身支度を済ませたのち、朝食を取っていた。メニューは携帯食、少量の水。

 遠征などをした時腹を満たすために食す携帯食であるが、もちろん味はいいということはできない。

 そんなパサついた美味しくない食事、いや、栄養補給をしつつ、そらは作戦を練った。

 ガチャとやらがこの石の能力なのか。とそらはぼんやりかんがえつつ、もしかしたら何か生きるために必要な物資が手に入る可能性があるかもしれない。と期待を寄せる。

 ガチャといえば思い浮かぶのはソシャゲのガチャ。大抵のゲームでは強いキャラが低確率で排出される他、強化素材と呼ばれるキャラクターを強くするものが手に入る。

 だが、この世界のガチャスキルというのは食料品などのガチャも存在する。図書館でたまたま発見したのだ。

 食料品はストックがあると言っても無限ではない。いずれ必ず、そこをつく。

 いま、やる気が起きている今しか、備蓄のためのものは生み出せない。そう感じる。このままダラダラと過ごしていると確実に後で後悔すると確信していた。

 そらは荷物をまとめ、体の具合を確かめた。痛みはところどころ、ズキズキと走るが、前ほどではない。病は気からということだったのだろう。

 剣の具合も確認し、防具も着用した。

 生への渇望を力に変え、一歩をそらは踏み出した。


 ♦︎♢ ♦︎♢ ♦︎♢ ♦︎♢


 洞窟内を足音に注意しながら進んでいく。

 今回の目的は魔物討伐と上階への道標の発見。道標は最悪見つからなくてもいいと割り切っており、魔物を討伐するのを最優先に行動するつもりだ。

 この迷宮では嗅覚というものが一切役に立たない。周りは全て腐食臭で覆われていて、とても何かの匂いを探るということはできない。そして迷宮内はかなり広範囲を明るく照らしてくれる石のライトがあるからなんとかなっているが、ライトが届かない場所は一寸先も見ることができない常闇が広がる。自然と聴覚が発達し、周りの音に過敏になるのは必然だろう。

 目印として、剣で軽く壁に傷をつけていく。あまり宜しいことではないことは分かっていたが、これしか目印をつける方法を思いつかなかった。

 真っ直ぐとりあえず進むことにし、そらは慎重に直進していく。

 すると、そらは急にかがんだ。道の真ん中で何かを見つめている。

 魔物の足跡だ。迷宮内は基本的に地面は土、砂で覆われていて、足跡は直近のものであれば残る。それがあるということは最近ここを通ったということだ。

 さらに、その足跡は、肉球の形で残っていて、少し水分を含んでいることがわかった。

 つまり本当にここ十分か五分程度しか通ってから立っていないということ。

 足跡の大きさ的に普通の犬より少し大きいくらいのため、群れで行動するタイプの魔物と推測し、そらはかけ出す。群れで行動するタイプはもちろん一匹でも普通の迷宮のボスか隠し部屋と呼ばれる特定の条件を満たさないと入れない部屋の中にいる裏ボスぐらいの強さはある。が、それは通常の装備を使って挑んだ場合。そらの装備は攻撃力が10000だからその辺の敵はいちころなのである。とはいえ、防御力は防具により少しだけ上昇しているが、最低でも致命傷、下手すると一撃で死亡する可能性も無きにしも非ずな上、剣もおぼつかない為、慎重にいかなければならない。

 たったったっと軽い音が死の迷宮に響く。そらも一応は異界の勇者の一人なわけで、地球にいた時よりは体が軽く、移動もかなり早くスムーズだ。

 そらが走り始めて十分ほど、痕跡がある一点に集まっているのを確認した。その先を追ってみるとそこには小さな円の形をした洞穴のようなものがある。そして、その洞穴から、オオカミのような、漆黒の犬型の魔物が出てきた。無意識にそらは近くにあった岩陰に身を隠した。漆黒のオオカミは小さく「ヴ…」吠えると、どこかへとかけていった。

 そらは期待と不安で体が支配されるのを感じていた。この勝負に勝てば、絶対に脱出への糸口を掴める。が、負けてしまえばその瞬間、そらは死亡し、一生殺人犯として認識されたまま終わる。

 いかにこの剣が高い攻撃力を誇っていても、結局のところ、何発か当てないと倒せないだろう。防御力は初期値の10。あまりにも脆い。こんなあまりにも状況的にこちらが悪い。だが、その力を手に、挑むしかないのだ、そらは。生き残るにはそれしかない。

 そらは絶望的な状況の中で、あの光景を思い出した。あの、蹂躙劇を。あの虐殺を。普段なら、少し顔を顰める程度で済むが、タイミングが悪く、そらは耐えることができなかった。心臓が押しつぶされるような感覚と頭痛がそらを襲い、胃から物体が込み上げてくる特有の気持ち悪さと、めまいに顔を顰め、その場でうずくまってしまう。

 死という恐怖は、人間の一番の呪いで、それが、目の前に迫ると何もできなくなる。

 一歩踏み出してしまうと、すべてが消えてしまうのではないか、自分は痛みで、もがき、苦しむことになるのではないか。そんなことを考えてしまい、踏み出さなければいけないとわかっていても、踏み出すことができなくなってしまう。一歩を踏み出せと念じても、なぜか金縛りにあったかのように体は動かなくなってしまう。

 それにそらは精神をやられそうになっていた。格上が群れを成し、殺意をたぎらせ、襲い掛かってくる。普通に地球で暮らしていたら体験することないような場面に遭遇し、てんぱっていて、でもやらなければいけなくて……

 そらは、無意識に一歩下がりかけた。が、その足は、もう一歩前へと踏み出された。

 そらは恐怖に打ち勝とうとしていた。そらが経験した、幻肢痛、孤独、不安……それに比べたらこんなものは全然大丈夫だと考えたのだ。

 あの幻肢痛の痛みが、あの絶望が、あの燃えるような怒りが、なぜかという疑念が、自分への劣等感が、苛立ちが……今はそれが力になり、壁を越えようとしている。一歩一歩、足を前へと運び…

 剣を、構えさせた。その構えはおぼつかなく、本当に初心者の構えで、理にもかなっておらず、意味が分からないものだった。が、そらはこれで勝負しなければいけない。コンディションを確認させた。先ほどの高鳴り、発作の影響か、心臓はドクンッ、ドクンッ、と脈打っていて、鼓動を感じられるが、それ以外は特に何もなく、不自然なほどに自然体だった。ついさっき吹っ切れたのか、もう、死への恐怖はない__いや、呪いは解呪した。そらは確信した。ステータスを確認させた。MPは全快しており、攻撃、防御、すべてが初期値野10で、不自然に、幸運は11になっている。さらにそらの体に素早さの強化魔法をかけたため、500になっている。神の加護は…ない。

 そらは深呼吸をした。そして、()()()()()()()()()()。今更、何も気にすることはない。そう思えた。腰を低くし、そらは、走り出した。刹那、見張りをしていたオオカミがそらに気づき、威嚇で吠える。それでもそらは歩みを止めない。オオカミは低く、「ヴ」と吠えると、つぎに「ウォウーン!」と大きく響く声で咆哮をあげた。すると、ばちッ、ばちッと火花が散りだす。そして、一瞬光ったのち、紫色の電気がまとわりついた。

 どうやらオオカミの能力は雷を身にまとい、それを攻撃に、防御に使うことができるというもののようだ。帯電状態で、オオカミの毛が逆立っている。

 そらは気にせず突っ込んだ。オオカミは、少し戸惑ったような顔をしつつも、電気をまとめ、そらへと放った。放電はそらを直撃__

 すると思われたその時、そらの姿が消えた。すると、少し先に具現化する。

 手を抜きつつ走って相手の攻撃を誘発させ、それを加速し避けそのすきをたたく。それがそらの作戦だった。

 オオカミに急接近、目と鼻の先まで近づいたところで手をかけてあった剣のさやを一気に引き抜き、一撃を加えるため、大きく大剣を振りかざした。

 ブォオン!と空気を割き、音さえ置き去りにする斬撃がオオカミを直撃した。まるで悪い冗談のように、スパッと首は切れ、切り口からはものすごい量の血が噴き出す。

 「まず一匹」。とそらが声を漏らした刹那、そらは瞬時にその場から飛びのいた。残像を残しつつ、それまでいた場所を見てみると、あまりにも大きい雷が直撃し、地面が焼焦げ、えぐられていた。

 それから地面が紫色に光ると、光の槍のようなものが地面から突出する。それは具現化してから、タイムラグなど一切なく、そらを貫かんとそらに迫ったが、そらはそれを体をひねり回避。

 が、少しだけ、電流が、掠れ鎧にあたってしまう、するとたちまちそれが輝白色になり、どろっと溶け、滴り落ち、ジュッと音を出しつつ、地面のしみになった。

 あまりの電撃の威力にさすがに冷や汗が出る。

 が、それでおびえるほど覚悟がないわけではなく、そのまま、左右に回りつつ、能力である雷を撃った後の隙だらけのオオカミを狙い、大きく大剣を振りかぶる。ぐしゃっと内臓も、皮膚もすべて断ち切った感触が伝わった。 

 そのままもう一匹を_と一瞬で間合いを詰め、大剣を振ろうとするが、オオカミが横から牙をむき出し、噛みついてきた。

 無理やり、大剣を縦切りを横切りに変え、体をひねり、噛みつきを回避しつつ、薙ぎ払った。が、それは予測できていたらしく、大きく後ろに飛びのかれ、空振りする。

 するとオオカミはその場で微動だにせず立っている。チャンスだと思い、大きく大剣を振りかぶる。すると、振りかぶったオオカミを中心に幾体ものオオカミが出現した。どのオオカミも風をまとったように、残像のように見え、「影分身のようだ」とそらは思った。

 そのまま、大剣をたたきつけるように降ると、何の感触も感じることなく、地面に激突した。爆弾が爆発したかのような轟音が響き渡る。オオカミもたまらず、後方へと跳ぶ。

 土煙が視界を覆う中、そらはオオカミのほうへとまっすぐ突っ込んだ。オオカミは反応が遅れるが、何とかよけ、肩を切り裂くだけに終わった。が、そらにとっては大きな一歩。

 そらは、そのあと、ただひたすらがむしゃらに動き回った。頭の中にある、黒い感情と衝動をおしころして、暴食欲求を喰い殺す。

 そして、何とか自我を保ち、オオカミを追い込んでいった。

 一匹倒した。だが、そらにとってはそんなことも些細な事だった。そのまま、なぎ倒し、雷をも跳ね返し、そらはオオカミ6匹を倒した。

 そして、同時にリミッターを解除する。

「……ッ!! ……は、あ……っ!はあッ……」

 そらは、リミッターを解除すると同時に頭を押さえうずくまってしまう。苦しそうに呻く。

()()()、からしたら、この、くらいの敵……余裕だよな」

 しかし、すぐ起き上がり、何かをはらうかのように、頭をふる。

 深呼吸をし、呼吸を整える。

「今回は、あいつがいたから何とかなったが、あいつを出さなくても戦えるようにしなければ」

 鼓動が落ち着いたのを確認すると、そらは、急いでオオカミの素材を剥ぎ取り、その場を後にした。

更新遅れてごめんなさい

8月26 最近本当に学業が大変で、こっちを新しく作る余裕がなくて……頑張って前のお話を変えて、見やすくしたりしてるんですけど、しばらく申し訳ないんですけど新規投稿止まりそうです。


間違えて新しい話に改変版乗っけました☆すいません

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