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正義のエグゼクショナー 旧:神殺しのターニング・ポイント  作者: 結末
第一迷宮 死の迷宮 ヴァジエニア迷宮
12/14

死の迷宮

グロ描写多めなので気をつけてください

 魔法陣による不快感は遠いからか、とても長く続いた。

 不快感が止まったらブォンという音と共に大地に降り立った。

 見回してみるとそこらじゅう薄暗く不気味な感じで、何かの生物の骨が広がっていた。腐敗臭がツンと鼻を刺激する。

 遠くで雄叫びのようなものや、どすん、どすんと地を這うような音も聞こえる。

 (不気味だ)

 そらは気味が悪いと思いつつ、心の中でつぶやいた。

 死の迷宮……と呼ばれる所以がわかったような気がした。たしかに薄暗くて、すぐそこに生き物の死体が転がっていて、死の匂いが充満している。ここから死の迷宮と取られたのだろう。

 人の言葉ではない何かが響くとそれはやすりのように自分の精神を削り取っている感覚がする。恐怖で気が狂いそうだ。そらは胸をぎゅっと抑えつつ、動かないといけないと自分を奮い立たせ、震える足で行動しようとする。

 光がないため、周りをよく見ることができない。探索する時、何も見えないのは不便で、いつモンスターなどに襲われるのかわからないため、明かりは見つけたい……そう思った時、そらは思い出した。

(そういえば教官からもらった石、魔力を込めると発光するって言ってたな)

 ピンポイントのニーズに応えてくれることを思い出し、急いで魔力を込めるが、そらの魔力は貧弱だ。注意していないとすぐに魔力不足になってしまう。

 最後に測った時MPの上限値は確か700程度だったはず。回復しているはずなので、マックスあるだろう。

 とりあえず5ほど込めてみるかと思い、本当に弱く魔力を流し込む。すると本当に淡く光った。

 どれぐらい光が持つのか全くわからないが、光源が手に入れられたことでいくらか精神が楽になった。

 だが、このままここに突っ立っていても死ぬだけだ。そらはそう考え、食べ物と寝床を探し始めた。

 結構遠くまで照らしてくれる光源によって周囲の環境が理解できてきた。

 骨や死骸がたくさんあり、それが積み重なって山のようになっている。

 よく見てみると骨の山の中に冒険者のものだろうか、錆びた剣と防具があった。ここに放置されているということは……

 何かしらの悪行を行ったのだろうが、それでも人に変わりない。冥福を祈った後、それを拝借した。申し訳ないと思いつつ、防具をここにおいておくより使用したほうが持ち主も喜んでくれるだろうと思ったのだ。

 ずっしりとした金属でできた防具で、かなり大柄な男性が使っていたのか、めちゃくちゃぶかぶかだが、使えなくはないと言った感じだった。

 近くの山の骨で叩いてみたりして軽く調べてみたら錆びた剣は表面だけ少し錆びついているだけだったようで、サビを落としたらこちらも使えなくはなかった。

 それらを装備しつつ、改めて寝床を探す。

 ずっと骨の山の周りをとてもゆっくり探索していたわけなのだが、そんなのでは埒が明かないと考え、そらは山を登った。

 崩れる危険性があったが、この金属の鎧などがかかっていたぐらいだからしっかりと組み込んでいるんだろうと推測し、登ると、案の定割と安定し、周りを見回せた。

 高いところから見回すと、改めてここの地形の具合がわかった。

 この迷宮は非常に広大なようで、道が中央の骨の山から6本ぐらい分岐しているのが見える。さらに遠くの方に洞窟があることに気づいた。結構大きめの洞窟で十分にスペースを確保できそうだった。

 少し舞い上がりつつ、急いで骨の山を下って……

 凍りついた。

 ずっと周りでは骨を踏み分ける音が響いていたわけなのだが、その音がどんどんそらの方に近づいてきていたのだ。

 しかもそれはゴキッ、ゴキッと骨を砕きながらやってくる。

 よほど大きいモンスターなのだろうと推測できる。などと冷静にいる場合などではなく、そらは急いで骨の山に身を潜めた。

(うッ、腐敗臭がひどいな……!)

 何かが腐ったような匂いが当たりにずっと充満していて、それは足音が近くなるごとに大きくなっていく。

 死の迷宮と言われるだけあり、相当劣悪な環境のようだ。

 段々と大きくなっていく足音を聞いていたら、徐々に不安になってきた。

 そらの全身からは脂汗が出、小さく小刻みにと震えている。

 そして本当に間近に、その音が聞こえた時、道?のような場所から何かがヌッと現れた。

 それは恐竜のような骨格をしながら、骨をまとっていた。形的にはティラノサウルスのようだ。

 そのモンスターは大きく咆哮した。うわおおぉぉん!と空間中に骨ティラノの咆哮が響く

 そして驚くべきはその大きさで、骨の山と同じくらいある。結構登るのに苦労したぐらいの山と同じ程の大きさ……遠くからだからまだマシだが、近くで見ればもっとでかいんだろう。

 その骨ティラノはぽたり、ぽたりと唾液を垂らしつつ移動する。

 完全に背を向けたため、もう大丈夫だろう、そうそらは思った。

 完全に大丈夫なんかではない、が。そらは精神的に疲労していて一刻も早く骨ティラノから離れたかったのだろう。

 痛恨過ぎるミスを犯した。

 骨を踏み、バキッと音を鳴らしてしまったのである、足元を凝視してから骨ティラノの方を恐る恐る見てみると__

「ぐる……ぅぅあぁあ!」

 大きく咆哮を上げ、そして突進をしてきた。

 やばい!本能的にそう察したそらは全力で逃げ出した。

 骨ティラノは骨の山を壊しながら突進してくる。

 とは言っても完全に無防備な人間であるそらが逃げ切れるはずもなく、追いつかれティラノに横から噛みつかれる。

 それをそらは必死に避け、重い体を動かし、受け身を取った。

 なんとか致命傷は回避したようだ、かすり傷くらいだろう。そう思い、立ち上がろうとすると何故か立ち上がれない。

 何故かバランスが取れないのだ。

 そらは焦る。

 そんなことをしている場合ではない、ティラノはこちらを凝視している。

 そしてある結論に行き着く。

(ティラノは何を咥えてるんだ?)

 何故かバランスが取れなくなった左腕をみると__

「___ァァァアアア゙! 腕が、腕がァァァアアア゙!!」

 そらの左腕は消失していた。防具はチョッキのようになっていて腕は露出していたのである。それを骨ティラノは咀嚼し、食べているようだ。

 血が止まらない。とりあえず、急いで隠れて、着ていた服、ジャージを急いで腕に巻き付ける。

 涙が止まらない。止まらない苦痛に、血肉がまるまる見える、傷口。そして、頭がおかしくなるような骨ティラノの咆哮。

 いたすぎて今すぐ意識を手放したかったけど、今意識を手放したら本当に死んでしまう、そう思い、右手だけで鞘に収めていた剣を抜く。

 傷の止血は終わった為、なんとか骨ティラノを巻かなければいけない。巻けなくても一矢報いたい。

 そう考え、勇気を出す。

 そう、あのティラノに立ち向かわなければどっちみち食われる。そんなのは嫌だ。

 骨の山の影から出て、骨ティラノを正面から見る。

 その一心でただティラノを見つめる。

 ティラノとの距離はおよそ10m、一気に詰めて、顔を狙って、切りつけよう、そう考えた。

 誰かの形見だろう、剣を構える。ろくな使い方も知らない、初心者の剣だが、なんとかなる、そう思えた。

「う、ぅ゙ァァァアアア゙!!」

 獣のような雄叫びを上げつつ斬り掛かった。骨ティラノも突進してくるが、顔を狙った。目玉の部分を狙い、一閃!

 躊躇いなく振り下ろす。すると生々しい感触が手に伝わる。

「ぐがぁぁぁあああ!!」

 骨ティラノの苦しそうな雄叫びが聞こえた。

 死を覚悟しなかったがいつになっても訪れないため、何が起こったのかわからないまま、そらは逃げた。

 耳を済ませると、特に向かってきている足音は聞こえない。

 何が起こったのかそらには理解ができなかったが、とりあえず助かったということを認識し、安堵した。

 よく耳を澄ませるとどうやらこの場所は広大らしく、ティラノ以外にモンスターは近くにはいないことがわかった。

 そうわかると体にドッと疲れが押し寄せた。その場に崩れ落ちる。

「うぅ……い、いてぇ……」

 あまりの痛さに顔をしかめる。幻肢痛でないはずの腕がまだズキズキと痛む。言い難いどうしようもない痛みが襲う。

 腕を抑えつつそらは回り道をして洞窟内へと逃げ込んだ。


 ♢♦♢♦♢♦♢♦


 洞窟内は特殊な植物のおかげで腐敗臭がしなくて、モンスターが近寄らないことがわかった。寝床を確保できたわけなのだが、そらは痛みのことで脳が支配されていた。

 幻肢痛が襲うし、そもそもあまり衛生的ではない環境なので膿んでしまっている。

 何をすればいいのかわからずとりあえず止血をしたがそんなレベルじゃない。

 くらくらとしてくる。圧倒的に血液が足りていない。本能的にそう感じた。

 痛みを紛らわせるために別のことを考えることにした。無益なことを考えてもしょうがない。とそらは思考を切り替えた。

 が切り替えようとしてもそれは時間がかかる。どうしても恐怖が頭を支配する。どうしようもなく泣きたくなって嗚咽を漏らした。

 神経を端からちょっとずつ嚙み千切られて削られているかのような狂いそうな痛みがそらを襲う。

 喉の渇きと腹の減りはある程度ストックがある。もしもの時用に予備に一週間分持ってきていたのだ。ちょっとずつそれを摂取する。すると脳が働き出し、強烈な頭痛がクリアになった脳に直接釘を打ち込むように響く。

 どうしようもない幻肢痛に、耐えることが億劫になり、意識を闇に手放した。

死の迷宮編 スタートします。

ちなみに今までのはすべてプロローグです

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