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見つけたそれは



 なんだろう、この、ファンシーな光景は。


「にゃん、らら~♪ にゃん、らら~♪ にゃんら、にゃんら、にゃん♪ にゃにゃにゃ~♪ にゃにゃにゃ~♪ にゃっら、にゃっら、にゃん♪」


 おかっぱ頭でつやつやと光るプラチナブロンドをなびかせ、エル字型の針金の短い方を握りしめた両手を前に突き出し、フェイが歌いながら庭を元気よく行進している。


 その後ろには保護者たるフランコが、びょんびょん跳ねる孫が可愛くて目に入れても痛くない様子で微笑みを浮かべつつ、長い足をゆっくりと進めて従う。


 まるでおとぎ話を見ているようで、ものすごく可愛い。


「でもなんで、ネズミの国の曲…。阿澄嫌いってさんざん言ってたのに…」


 困惑の呟きを耳ざとく聞きつけたフェイは行進を継続しながら答えた。


「ああ、それねー。さすがマーチだよね。リズムは歩きにちょうどいいし、気分がすっごく上がるんだよね~。でも猫ラブの立場としては獲物の国じゃん? だから、猫語で歌うの!」


 ふんすっと鼻息荒く胸を張る。


「最初はね、うどん汁の歌にしたんだけど、コブシを利かせすぎてみんなに引かれちゃったし、うどん食べたくなるからやめた。だからこれ!」


 キツネツキミ……。

 うどんと言われて、鈴音の記憶から引っ張り出されたとある歌が脳内を駆け巡る。


「いや……。何の歌かさっぱりわからなかったからじゃないの、それは…」


 食べたくなるのは激しく同意だ。

 しかしそちらの歌でもきっと、ギルドの皆々様は微笑ましく見ていたのではないか。


「にゃら……♪ あ、来た」


 歌が途切れた瞬間、前に突き出していた針金の長い部分がいきなりぐいっと左右に開いた。


「うん。この辺?」


 フェイが無造作に両手を地面に向けて左右に振ってみると、そのたびに針金はブウンブウンと唸りながら開いたり閉じたりする。


「うわ、ほんとにダウジング棒なんだ…」


 それまで好々爺といった様子だったフランコの表情は真剣なものへと変わり、反応の大きな地面に傍で膝をついた。


「このあたりかの」


 頷きながらフェイはいったんダウジング棒をベルトに差し、便利ポーチを片手で探る。


「うん」


 何も合図をしたわけではないのに、二人は同時に魔術の詞を詠唱し始めた。

 老師の低くかすれた声と八歳のフェイの甘く舌っ足らずな発音が絡み合い、厳かながら美しい旋律を編み出す。


「………………」


 すると、彼らが注視する場所に青光りする魔方陣現れ、そして地面からぽこりと角砂糖程度の大きさの黒く禍々しい小石が浮かび上がった。


 それは、黒い煙をわずかに吐き出しながらふるふると震えている。


 まるでそれは虫のようで見ているだけで背中に寒気が走り、気味が悪かった。


「フェイ」


「はいよ」


 ビー玉のような球体を手のひらに乗せ、軽く宙に放つ。


「…………」


 二人が短い詞を唱えると、球体は小石が出てきた場所へもぐりこんだ。


 そして、フェイはガチャガチャでよく見かけた球体カプセルをポーチから取り出し、いったん両手で左右に開いたのち、パクリと虫を捕らえるように挟んで中に黒い小石を閉じ込める。


「はい、しゅうっりょ~♪」


 仁王立ちしたフェイが自慢げにカプセルを掲げて見せるが、半分透明のその球体の中で黒いモノがウゴウゴと動いていて、本当に気持ち悪い。


「ええと、何ですか、それは…」


 見たくはないが、それが何か悪さをしていたなら、見過ごすことはできない。


 オーロラの質問に、すぐさまフランコが答える。


「ありていに言えば、闇魔術で構成された魔道具ですな。どのような術を仕込んであるかは、持ち帰って詳しく調べますが…」


 そこで言葉を切って、しばし躊躇うような仕草をみせた。


「ギルド長? どうかなされましたか?」


 ふと気が付くと、フェイもじっとオーロラを注視している。


「…あのさ。スズねえ。あたしらの世界にある家電製品ってさ。動かすのに電池が必要じゃん?」


「あ、うん。そうだね」


「魔道具は魔力を糧に起動するもんで、フツーはビー玉サイズの魔石に色々仕込んで、電池がいらない状態にするんだけどさ。これは違うみたいなんだ」


「え…? どういうこと?」


 フェイは掴んだままのカプセルをじっと見つめると、それはふるふると震えた。


「うん。電力源、ねえちゃんだ、これ」


「え?」


 話が全く分からず、オーロラはこてんと首をかしげる。


「つまりね。オーロラの生命と魔力を食って術を展開する魔道具だってこと。だってコイツ、ねえちゃんの方へ行きたがってる」


「………………っ!」


 ようやく、理解した。


 その瞬間、全身から血の気が引いていき、目の前が真っ暗になる。


「お嬢様!」


 全てが閉じる直前に、ロバートの香りがしたような。


 そんな気がした。



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