氷の令嬢と暗黒王子VS操り令嬢と傀儡王子
それは、突然起きた様に見えた。
貴族のみが通える学園。エーデル魔術学園。
卒業パーティーの終盤に事件は起きた。
♢♢♢
私はクナウティア・アイリスと申します。
父が宰相で家も公爵家で、魔力量も多かった事で八歳の頃に殿下と婚約を結びました。殿下と婚約を結んだ三年後にクナウティア公爵家は年頃の令嬢達を招いて御茶会を開きました。その時に、私はジプシー子爵令嬢にこう言われたのです。「泥棒猫のアイリス令嬢。私に負けない様に頑張ったらどうかしら?アハハハ!」と令嬢らしからぬ笑い声をあげ去ってしまったのです。おそらく、殿下との婚約をジプシー令嬢は良く思っていないのでしょう。
「おい!聞いているのか!」
「聞いていますわ。殿下の側近候補のダンピエラ様。」
「殿下が会話を望んでいるんだ!その要望に応えろ!リリィ令嬢!」
「私はアイリスですお間違いなき様にと、お伝えした筈です。」
「ダンピエラ。少しいいか?」
「は、はい。」
「リリ…アイリス令嬢、今日はリリィが紺色のドレスを着てくると聞いていたから貴方をテラスに呼んで話をしたけれど、何故貴方が紺色のドレスを着ているんだい?」
「それは、王太子殿下の瞳の色なので、紺色のドレスを着させていただきました。私と義妹のドレスの違いはリボンの色です。義妹のドレスのリボンは殿下の髪色の金色ですが、私のリボンの色はエメラルド色。王太子殿下の髪色の色ですわ。そして、義妹が殿下に大事な話をされるほどの罪を犯したのでしょうか?」
私がリリィと間違えられるなんて。似ているとは言われるけれど…
「リリィは、エリナを苛めたんだ。」
苛めたとはどういう事かしら?リリィは良い子なのに。
「エリナとはジプシー子爵令嬢の事でしょうか?」
「そうだ。」
「…今日はこれくらいにして、後日義妹も交えてお話しさせてもらってもよろしいですか?一応パーティーの終盤ですし。」
「そうだな。」
♢♢♢
後日
「卒業パーティーではすまなかった。アイリス令嬢。そして、リリィ。弁明はあるか?」
「私がジプシー子爵令嬢を苛めた証拠は何処にあるのですか?私が弁明をする前に証拠を見せていただきたいです。」
「それも、そうだな。ホスタ!証拠品を持ってきてくれ。」
「了〜解。」
「持ってきました。破かれた教科書に制服、あとは〜録音機ですね。」
「教科書や制服に私の指紋はついているのですか?」
指紋…あまり、知らされいない捜査方法ね。流石に王族だから知っているでしょうけど。
「指紋か…だが、エリナの主張、そして破かれた教科書や制服があるだけで証拠品は十分だ。それに、録音機の内容を聞くが良い。」
暴論が過ぎている気がするけれども大丈夫かしら?殿下の脳内。
『キャア!』
『あら?ご自分でこの状況が理解できないのですか?お馬鹿なのですね♪…リ……爵令嬢は。』
これは…!
「殿下、少しよろしいでしょうか?」
「許可する。アイリス令嬢。」
「音声が飛んでいるのが気になるのですが、壊れてしまったのですか?」
「そうかもな。」
「では、聞きます。名前の部分が飛んでいるのに関わらず、何故リリィがジプシー子爵令嬢を苛めたと決めつける事ができるのでしょうか?」
「それは、エリナが…」
「話になりません。不確かな情報でリリィを罰しようとしないで下さいませ。では、さようなら。」
「失礼しました。」
パタン
「エリナ。エリナ。エリナ。エリナ。エr」
五月蝿いですわね。エリナエリナと。
「如何したんだい?ディル達と話していた様だけど。」
「私は此処で失礼します。王太子殿下。アイリスお義姉様。」
「うん。またね。」
「えぇっと、リリィに要らぬ罪を被せられてしまったので殿下を説得?してました。納得してもらえませんでしたが。」
「だろうね。ディルはリリィを何だと思っているんだろう?」
「私の妹と思っているのではないのですか?
殿下のおつむの足りなさはテナチュール家の血のせいでしょうか?」
「恐らくね。お馬鹿すぎるよ。だけど、僕らの計画がどれくらい進んでいるのかを教えてくれるのはディルの良いところではないか?たまにはディルも役に立つよ。」
「うふふ。そうですわね。」
「此処にいたのですか。ハイペリカム様。
公務をほったらかしにして何処に行ったと思ったら、またアリスのところに行っていたのですね。公務を放置しないでください。何度言えばわかるのですか?」
「此処一週間中に提出しなくてはならない公務は片付けたから問題はないと思うよ。」
「ですが…!」
「二日ぶりですね。フィオンお兄様。お元気そうで何よりですわ。不眠に聞くアロマでもまた差し上げましょうか?」
「良いのか?アリス?」
「えぇ。お父様も愛用しているのですよ。お兄様が使っているアロマを私が作ったという事でお兄様に嫉妬していて、とても見苦しかったのですがアロマをあげた途端に嫉妬しなくなったのでとても良かったです。効果抜群です。助言をありがとうございます。流石お兄様です。」
「そうか。それは良かった。」
「宰相ってお前達の事を溺愛してるよな。」
「「そうなのですか?」」
「お前達そっくりだな。」
♢♢♢
あれは!アイリス!それに、氷の貴公子と呼ばれる秘書と…誰だったかしら?確か王族の…まぁ、いいわ!ディルは王太子だもの!私が王妃になったら王族でも生き地獄を経験させてあげなきゃ!だって気に入らないもの!先ずは、リリィもアイリスもまとめて悪い夢見させてあげるわ!
『バッド・ドr「何をする気だ!」
騎士!?何故?ダリアに認識を阻害する魔術をかけてもらったはずなのに!
「ダリア!ダリア!何処にいるの!?ダリア!…裏切ったのね!」
『デスマーチ・…な、に、こ、れ?」
「闇魔法の祈願術よ。ジプシー子爵令嬢。」
「祈願術なんて学園では習わないでしょう!?何故貴方が使えるの!?」
「その貴方の問いは地下牢で答えるわ。
でも、見てわかるでしょう?騎士の皆さんはジプシー子爵令嬢、ジプシー子爵を地下牢へ連れて行ってください。私は公務に戻ります。では、お願い致します。」
「「「了解致しました。」」」
「な、何をするのよ!」
♢♢♢
地下牢にて。
「何で私がこんな所にいるのよ!アイリスのせいだわ!私が王妃になる筈だったのに!」
「だからリリィを苛めたのかしら?」
「アイリス!リリィを苛めた?アハハッ!リリィが私を苛めたのよ?何を言っているの?アイリス?元々可笑しい頭がもっと可笑しくなっちゃった?アハハハッ!」
下品な笑い方ね。
「ジプシー子爵令嬢。先程『私が王妃になる筈だったのに』と申されましたよね?」
「えぇ。そうよ。」
「では、一つ貴方の勘違いを訂正しておきます。王太子はダフォディル殿下ではなく、ハイペリカム殿下です。ですので、いくらダフォディル殿下に媚を売っても王妃になる事は出来ません。」
「え……ディル様は王太子だって言っていたわよ?あの影の薄い王族が王太子だったの?アハハ!嘘はやめて頂戴。」
「嘘では無いわ。」
「いいえ!嘘よ!あの祈願術も、貴方の言葉も!全て嘘なのよ!」
「昨日の祈願術の事ですが、私は魔術科特待生でこの学園に入学したのです。祈願術が使えても問題はないでしょう?」
「アハハ!そうなのね?そして、私はこれから如何なるの?」
「囚人用採掘場に送られるわよ。」
「囚人用?…採掘場?私は死ぬの?バッド・ドリーム!バッド・ドリーム!はぁ、はぁ。使えない!この手鎖のせいで!アイリスゥ!アンタはいつか死ぬ!アタシに殺される!怯えてるとイイ!アハハハハアハハハハ!」
もう、更生も無理ね。残念。
「さようなら。ジプシー子爵令嬢。凍てつく中で死ねて良かったわね。」
「ゴフッ、ガハッ。アハハ、アンタ最ッ高にセイカクワルィ。」
「言っとけば良いわ。」
♢♢♢
「子爵の処理は終わったかしら?お兄様。」
「勿論だよ。そっちは?」
「殺してしまいましたわ。更生が無理そうでしたし、不愉快でしたの。あの王子は如何なりました?」
「北の塔へ幽閉という処理になったよ。」
「あら、随分と甘い処置なのですね。ジプシー・エリナに唆されて強盗団を作り、色々と盗ませたのに…」
「王族だからではないかな?」
「そうですわね。」
♢♢♢
「私の子達が怖く感じます。」
「お前の子だからあんなに怖くなったと思うけどな。」
「そうですか?あぁ、あと貴方にも責任はありますよ。陛下。」
「あぁ。わかっている。近々王位をハイペリカムに渡す予定だ。」
「では、私もこの地位を息子にあげましょうかね。隠居生活を楽しみましょう。」
「そうだな。」
♢♢♢
「楽しい見物でしたわ。お兄様。お義姉様。次の王位争いも楽しみにしてますわね。」
初めての短編です。短編すぎると思ったかもしれません。