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Distance〜夢までの距離〜  作者: 市尾弘那
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第1話(2)

「別にどうもしなくて良いんじゃないか。CD屋行くんだろ。行こう……」

 答えながら何となく瀬名を追っていた俺が、再び顔をステージに何気なく戻したところで、瀬名がマイク越しに挨拶を口にしようとした。

「それじゃあよろ……」

「おじょおちゃん、ホントにPAなんてちゃんと出来るの?」

 ……は?

 出入り口に足を向けかけていた動きが、止まる。俺の言葉に促されて立ち上がりかけていた遠野と藤谷も、目を丸くしてステージに顔を向けていた。

「音、聞こえなかったりして」

 『女王様』のセリフに便乗するように呟いたのは、ギターの男だ。呟いた、とは言え狭いコヤ、聞こえないほどではない。

 ……何だ、こいつら。

 思わず眉を顰める。ちゃんと働いている人間に敬意を示せない人間は、好きじゃない。始めて不愉快な思いをしたのならともかく、何もする前から何なんだ?馬鹿なんだろうか。

「あっはッ……。あんまりいじめちゃ、可哀想じゃないのぉ?男の子相手ににっこり笑って『ごめんなさぁい』で済んでるんだよ」

 傲然と言い放った『女王』の言葉に、なぜか俺がカチンと来た。さっきあんな話を聞いたせいかもしれない。『時々怖くなるし、負けそうになるから』と言った横顔が過ぎる。『だから、負けちゃいけないんだ』と自分に言い聞かせているように、あの曲を聴く瀬名の横顔が。

「おい……」

「彗介」

 咄嗟に口を開きかけた俺を、遠野が片手で押し止めた。潜めた声につられて、俺も声を潜めて振り返る。

「何で止めんだよ」

 つい喧嘩口調のままで言いかけた俺を、遠野の視線が促した。視線の先にいるのは、瀬名。

「大丈夫ですよ」

 瀬名が鷹揚な笑顔を浮かべて、柔らかな声で『女王』に答える。

「バンドさんがちゃんとした音さえ出してくれれば、こちらで変な音にすることはないですから」

 キレるでもなく、構えるでもなく、さりげなく自然に……そう、取り成すでもない言い方に、『女王』が眉根を寄せた。構わずに瀬名が続ける。

「時間、あまりないし、こんなことしてるとリハやる時間なくなっちゃいますけど?曲でいいんで、始めてもらえますか」

 何ごともないようにあっさり言って微笑む瀬名に、『女王』が軽く舌打ちするのが聞こえた。

 けれど。

(瀬名……)

 震えてる。ほんの微かに。

 『女王』の視線が逸れて、瀬名が顔を俯けたその一瞬、唇がきゅっと悔しげに、あるいは何かを堪えるように結ばれるのが見えた。だが、再び顔を上げた瀬名は、笑顔を崩すことなくマイク越しに口を開いた。

「じゃあ、宜しくお願いします」

 バンドからの挨拶はない。

 出て行きかけていたはずだったのだが、半ば挑戦的な気分で俺はそのバンドのリハを少し見てみる気になった。下らないことで絡む前に、どれだけ『ちゃんと出来る』のか見せてもらおう。

 ドラムがカウントをとる。それをきっかけに始まった2バンド目のリハは、鼻で笑いたくなるものだった。

 俺の経験値から言えば、つまらない因縁を吹っ掛ける奴でかっこいい音を出す奴は見たことがない。不思議なもので、素直に「かっこいいバンドだな」と思えるバンドは、人としても不快に思うことはなかった。対バンの他のバンドにも、スタッフにも、きちんとした『常識の』態度で接することが出来るものだ。そしてこのバンドは例に漏れず……格好良さからは遠かった。

 辛うじてドラムとベースが、それなりだ。多少なりともリズム隊が真っ当と言える音を出しているから、バンドとしての体面を保っている。これが全員ヴォーカルやギター並にひどかったら、目も当てられない驚きの事態に遭遇するところだ。場数だけは踏んで、バンド暦だけはダラダラと長いってとこだろう。……とはいささか辛口だろうか。

 1曲目を終えて、ヴォーカルが鼻の頭に皺を寄せて瀬名を睨みつける。顔の造作がどうこうと言うのは俺には良くわからないが、少なくとも表情ひとつで人間ここまで醜く見えるものなのかと、感嘆すら覚えたい。私怨でもあるのかと尋ねたくなるような表情で、『女王』は居丈高に口を開いた。

「すみませぇん。ここって何か返してくれてんの?」

「声を返してますよ。後は3点とベースを薄く」

「薄くぅ?全部フルレベルで返して」

 ほー……。

 思わず、半ば俺が呆れた気分になってきた。これだけ狭いステージで、マイクも楽器もモニターも密集している環境で、全ての楽器をフルでモニター返ししたらどうなるかわからないんだろうか。

 瀬名がまた何か言い返すだろうかとちらりと目線を向けてみたが、瀬名は笑顔で軽く片手を挙げて応じた。

「他に何かありますか」

「あ、俺んとこ、ベースもう少し下さい」

 おずおずとベーシストが手を挙げる。

「じゃあ、ベーアンでレベル上げてもらえます?ヴォーカルさんも聞こえないみたいだし。そっちで聞こえいいように調整してもらっていいんで」

「あ、こっち上げていいんですか?」

「どうぞー」

 もぞもぞとベーシストがレベルをいじり、ドラムやギターのオーダーにそれぞれ応じると2曲目に入った。

 またも下手くそなリハが続く中、瀬名はPA席から飛び降りてステージ上に走る。各々の立ち位置の真後ろに回りこみ、モニターの聞こえ具合を確かめながら、今度は自分でベーアンのレベル調整をして、再度モニターを確認するとPA席へ駆け戻る。

 その真剣な顔と、さっきの唇を噛み締める一瞬の表情が交錯した。

 言い聞かせるように「強く生きなきゃ」と口にした声が。

(ふうん……)

「彗介、行こ」

 小声で遠野に促されて、頷く。外へと歩き出しながら、俺はもう一度PA席の瀬名を振り返った。

 根拠も何もなく絡まれて、悔しかっただろうに、悟らせない鷹揚な笑顔。堂々と、自信さえ感じさせる立ち居振舞い。

(……かっこいいな)

 今までの付き合いの中で気づくことのなかった瀬名の姿を、今日、初めて見たような気がする。

 心の片隅で、何かが小さな音をたてた。


        ◆ ◇ ◆


 人生を歩いていくに当たって、誰もが幾つもの岐路にぶつかり、幾つもの選択を迫られるだろう。

 その時に何を選び取って、何を捨てるにしても、それさえ自分の選択だと毅然と前を向いていられるだろうか。

「今日はありがとうございましたー」

 お約束の言葉で締め、遠野がちょっと気取って頭を下げる。遠野の真正面を陣取って飛び跳ねていた女の子が「亮ぁーッかっこいーッ」と叫んだ。

 固定ファンがついてきたのは、最近だ。ここ半年くらいでようやくそこそこの人数が呼ばなくてもライブに来てくれるようになった。狭い『GIO』の客席は、黒い人だかりになっている。

 遠野がマイクから手を離してバックステージに戻って行くと、俺もギターを肩から外してそれに続いた。全員が引っ込むのを待って、客電が灯りBGMが流れ出す。

「おつかれっしたーッ」

 気持ち良さそうな顔で言いながら、遠野は椅子に引っ掛けてあったタオルで汗を拭った。俺はあまり汗をかかない方だと思うが、ライブの後はそう言うわけには行かない。黙って立っているだけだとしたって、照明の熱というのはかなりの熱さがある。

「あちぃ……」

 汗を吸ったTシャツを脱ぎ捨てていると、同様に汗を浮かべて襟元に空気を送っている北条が顔を顰めた。

「ずるいよなー」

「脱いでもいいよ」

 無言の蹴りが飛んでくる。

 汗を拭ってTシャツを着替えてからバックステージを出ると、明るくなったギャラリーで客が思い思いにさざめいていた。俺たちはトリだったからこの後にはもうステージはないのだが、客は惰性的にだらだらとまだ帰る気がないらしい。

「亮ぁーーーッ」

 その客の間から、赤い髪の露出狂みたいな格好をした女が駆け寄ってきた。自称ファン1号、実情はただの遠野の追っかけの萩原紀子だ。1号を自称するだけあって、Blowin'が結成する前……遠野が別のバンドでギターをやっていた頃から、遠野を追いかけ続けているらしい。その頃は俺は、一緒にバンドをやっていなかったから詳しいことは知らない。

「あっきら、今日もかっこ良かったよッ。もー、何でそんなかっこいいんだろうねッ」

 ハートマークが乱れ飛んでいる。

「来てくれたんだ。ありがとう」

「あったりまえじゃないいいいいいい。Blowin’のライブ、あたし、皆勤賞だよッ」

 腰が引けながらも笑顔で挨拶をする遠野に、タックルでもしそうな勢いで萩原が飛び跳ねた。

「如月さん、お疲れ様でしたー」

「ああ……ありがとう。気をつけて帰って」

「はーい」

「あ、彗介、お疲れー。今日の4曲目、凄ぇかっこ良かったッ。音源ないの?」

「ありがとう。久しぶりだな。物販の方に……」

 こういう時、固定客が多少増えてくれていると声をかけてくれる人は引きも切らない。あまり人と会話をすることが得意ではない俺は、この状態がしばらく続くと精神疲労に陥ってくる。

「あ」

 べたべたと纏わりつく萩原を適当にいなしている遠野が、不意に声を上げた。客の合間に向かって軽く片手を挙げるのにつられて、目を向ける。……ああ、来てたのか。珍しい。

「久しぶり、尚香ちゃん」

「久しぶりだねー。如月くん、お疲れ様」

「ありがとう」

 綺麗な二重の大きめな瞳は、少し茶色がかっている。意志をはっきりと持っていそうな目元を細めて、瞳と同じくやや色素の薄い茶色がかった肩にかかる髪を片手で払いながら、こちらに向かって歩いてきた。

「珍しいね」

「弟にせがまれたの」

「弟?どこにいるの?」

 前にも確か連れてきたことがあったと思う。尚香ちゃんの傍らに弟の姿が見当たらずに視線を彷徨わせると、居場所がなさそうに壁際に立っている少年の姿が見えた。顔立ちは双子と言っても良いくらい、尚香ちゃんとそっくりだ。小柄なので、ともすれば女の子と間違えてしまいそうに見える。いや、実際俺は最初に見た時は女の子だと思ったんだが。

「こっち連れてくれば良いのに」

「いいって言うんだもの」

 くすくす笑う尚香ちゃんに、もう一度壁際の少年を見ると、向こうが気がついた。思春期独特の、少しひねくれたような照れたような表情で、ぺこんと頭を下げる。恥ずかしいんだろう、多分。

 俺も会釈だけ少年に返して尚香ちゃんに向き直ると、隣で萩原が遠野に「誰?誰?誰?」と詰め寄っている。

「紀子、会うの初めてだっけ?俺の彼女」

 おいおい。そんな紹介をして大丈夫か?

「かぁのぉじょぉぉぉぉ?」

 他人事ながらそんな心配が過ぎっていると、案の定萩原は噛み付きそうな顔で遠野に確認して、きょとんとしている尚香ちゃんに挑戦的な笑顔を向けた。

「はじめましてぇ」

「あ、はじめまして……」

「亮って変わった趣味してんのねー。あなたが彼女なんだぁ?」

 ……。

 俺の認識では、尚香ちゃんは決して気の弱い方ではない。全然ない。むしろ積極的に「気が強い」と言って差し支えなかったように思う。

 目を丸くした尚香ちゃんは、ややしてにっこりと余裕の笑顔を浮かべて萩原に向き直った。

「そうですか?あなたを彼女にするほどじゃないですよ」

 にこやかな笑顔。ああ、空気が寒い。

「亮くんのファンだなんて、彼女としても嬉しいです。これからも客席から応援してあげて下さいね」

 あくまで『あなたはファンでわたしは彼女』と突きつける辺り……駄目押し。

 恐ろしくて俺はこれ以上この場にいたくはない。肝心の遠野はすっかり他人事と言うか、何も気づかずに藤谷と客と笑い転げている。

「尚香ちゃん、弟くん、平気?何かナンパされてみたいだけど……」

「え?また?」

「あの、すみません……」

 どうしたものかと思っていると、背中から女の子の声に呼ばれた。振り返ると見知らぬ女の子が2人立っている。声をかけてきたのは、手前のさらさらの黒髪の女の子のようだ。彼女に寄り添うように、もうひとり緩くウェーブのかかった茶髪の女の子が立っている。

「はい?」

「最後のバンドの、ギタリストさんですよね」

「そうですけど」

 黒髪の子は、ちょっと恥ずかしそうに伏し見がちに続けた。

「わたしたち、本当は別のバンドを見に来てたんですけど……あの、凄くかっこ良かったです」

「あぁ……ありがとう」

 基本的に『営業トーク』『営業スマイル』など『営業』のつくものはどれもこれも苦手な俺だが、Blowin'やライブを褒めてくれる言葉には自然と笑顔が零れる。それなりに丁寧な対応も心がけているつもりでもある。……俺なりに、ではあるけれど。

「それで、あの、ヴォーカルの人、お名前なんて言うんですか」

 彼女の視線は遠野の方に注がれていた。失礼と言えば言えるんだろうが、中学から遠野の横にいる俺は慣れきっている。日常茶飯事だ。別に俺は遠野のマネージャーではないのだが。

「ああ。遠野だよ。遠野亮」

 本人は何も気づかずに、時々見かける客の女の子3人と話している。尚香ちゃんはと言えば弟をナンパから救う為に戻っていったようだ。せっかく来てくれた彼女を放りっ放しで良いんだろうかとも思うが、尚香ちゃんも状況をわかっているからあまり来ないのだろうし、そういうことをぎゃあぎゃあ言うようなタイプでもない。

「遠野亮さん……。か、かっこいいですよね」

 そんな同意を俺に求められても困るんだが。

「話してけば。そのうち手、空くと思うよ」

「あ、でも初めてだし……」

 俺に初めて話し掛けるのと、初対面で遠野に話し掛けるのと、何がどう違うんだろう。

 結局話すのは諦めたらしく、「ありがとうございました。また見に来ます」と俺に頭を下げて、彼女たちは出入り口の方に足を向けた。何となくそれを見送って、もう面倒臭いので撤収にかかろうかとステージの方に目を向けると、人のざわめく明るい客席とは裏腹に電気の落ちた暗いステージで瀬名がひとり、黙々と後片付けをしているのに気がついた。足を向ける。

「彗介、お疲れ」

「ああ、お疲れ。また次も宜しく」

 声をかけてくれる人を遠野たちに任せることにして適当にかわしながらステージに近付き、手をかけた俺に瀬名が顔を上げた。

「お疲れ」

「お疲れ様ー。今日もかっこいいライブだったよ」

「さんきゅ」

 先ほどまでマイクに繋がっていたケーブルをくるくると巻いては床の上に積んでいく瀬名の手元を見ながら、俺はステージにかけた片手を軸に上に飛び乗った。

「手伝うよ」

「え?いいよ。如月くんはファンと交流図らなきゃ。大事だよ、そういうの」

「俺に図れる交流なんかたかが知れてるよ。瀬名だって知ってるだろ、俺がそう言うの苦手だって。……巻けば良いの?」

 瀬名の足元に落ちているケーブルを、1本拾い上げる。手だけは動かしながら、瀬名が小首を傾げて俺を見上げた。

「うぅん〜……じゃあ、悪いんだけど、お願いしちゃおうかな」

「お安い御用。ウチは営業部長がいるから大丈夫」

 一口にケーブルと言っても、かなりの量がある。コーラスマイクだけで5本はあるし、上下かみしものギター、ベースのラインとマイク、キーボードのLR、最強はやはりドラム周りだ。数える気にならない。

「あはッ……営業部長ねー。的確だなー」

「だろ。ああいうのは得意な奴がいるんだから、得意な奴に任せておけば良いんだよ」

「でもBlowin'ってそんなこと言ってたら亮くん以外、みんなあんまり得意じゃないんじゃない?」

「だから得意な奴がひとりでやる羽目になる」

「可哀想だよー」

 悔しいが、やっぱり毎日大量のケーブルを巻いている瀬名には敵わないようだ。出来るだけ瀬名の作る輪の大きさに合わせて綺麗に巻こうと試みているのだが、そうしていると巻く速度が遅い。瀬名の、綺麗に手早く巻いていく手際に感心する。

「でも、Blowin’も昔に比べるとファンが増えたね」

「そう?……うん。そうか。そうだな……」

「ちょっとずつ大きくなってって嬉しいよー。わたしもBlowin'、好きだよ」

「あ、うん」

 少しどきっとした。好きだと言っているのは別に俺じゃなくてバンドの話なんだが。

「……さんきゅ」

「うまいね」

「え?」

 不意に瀬名が自分の手を休めて、俺の手元を覗き込んだ。ケーブルの端っこについているマジックテープでくるんと留めて、床に置く。新しいもう1本を拾い上げて巻き始めながら、首を傾げた。

「うまいも下手もあんの」

「そりゃそうだよ。下手な巻き方すると、次の日絡んじゃって大変なの」

「ふうん?」

「こうね、どんどんトンネル状態になっちゃってさ……」

 何だか暗いステージで2人して向き合いながらくすくす笑っていると、客席の方では次第に人の姿がはけてきたみたいだった。

「後、何すれば良い?」

 ケーブルを巻き終えて、ステージを見回す。俺は何をして良いのかわからない。

「あ、もういいよ。如月くんも自分の撤収、あるでしょ?」

「うん、まあ……でも他の奴らもどうせまだ片付けてないし」

 言いながら瀬名の真似をしてマイクを抜きながら、スタンドを折り畳む。スタントを一箇所に集めてきちんと立てると、瀬名がマイクを丁寧に入れていく籠を代わりに受け取った。

「これで完了?」

「完了。……ありがとう。助かった」

 すとん、とステージから降りる。ステージ上にあったマイクを全部集めている籠は、結構な重さがあった。

「いっつもこんなの、ひとりでやってるの?」

「そりゃあ……他にやる人がいるわけじゃないし。わたしの仕事だもん」

 それはそうなんだろうけど。

 瀬名について籠を抱えたまま、PA席の方に足を向ける。目の前で瀬名の小柄な背中が、弾むように揺れていた。

「瀬名、この後真っ直ぐ帰るの?」

 PA席に到着して、籠を瀬名に渡す。この先はどこにしまうのか俺は知らないし、これ以上手伝うこともないだろう。瀬名に言われた通り、俺自身の撤収もしなければライブハウスも終われないだろうし。

「え?うん。真っ直ぐ帰るよ。寄るとこがあるわけじゃないもん」

「可哀想に。デートもないわけだ」

「……人のこと言えないじゃんよ」






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