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あんなペンネームを付けてしまったのに、  作者: 凛々サイ
2章『そこから始まる二人の夢に、』
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2章 10.私は通知で、スーパーエキサイティングする。

 ふー危ない、危ない。また教室で叫ぶとこだったぜ……。椅子はド派手に倒したが、どうにかセーフといったところだ。

 私はスマホを興奮でガタガタと震える両手で握り締め、スマホに穴が空くのではないかと思うほど瞬きもせずに見つめている。

 

 ……何度見ても書いてある。間違いなくこう表示されているのだ。


『注目のマッチャーに選ばれました』


「……っつ」


 やばい、何度見ても興奮が抑えられない……! 声が、声が漏れ出る……! 押し殺せ、押し殺すんだ、まこよ……!!


 これは『クリンク』にある『ピックアップ』機能というものだ。

 『マッチャー』、いわゆる『マッチング』を組んだ者達をサイトの運営スタッフが自らピックアップし、1日だけトップページに表示されるという機能だ。 


 この『トップページ』に表示されるということは、もうめちゃくちゃに宣伝効果がある。だって、誰もがまず訪れるページだからだ。『クリンク』の会員数は30万人程と発表されている。その30万人に『銀氏物語』に触れてもらえる可能性があるのだ。


 急いでトップページに飛んで確認してみると、……確かにあるっ!!あるぞ!!

 目立つ場所で『注目のマッチャー』と表示されて、私達のペンネーム『腐女子のJK』と『ゲイのおっさん』、そして作品『銀氏物語』の表紙絵も掲載されている……!

 

 それを見るなり、震える指でメールを打ち出す。だって打てずにはいられない……!!


『神よ、私は今震えている』


 そう、『腐女子のJK』へメールを送ったのだ。するとすぐに返信が返ってきた。


『信じらんない!! おっさんの夢が叶うかも……!?』

『神の夢もな』


 ここまで多くの人々に触れれば、それなりに知名度が上がり、何かのチャンスに恵まれる可能性も一気に高くなるのはお互いに分かっていた。


『ワンチャンあるんじゃ……!!』

『だといいな』


 なぜかすぐに返信が来るメールに若干不思議に思いながらもこれまでにない程のウキウキ具合で『腐女子のJK』へメールを返した。


 なんと幸運だろうか……! これもあの『神』である『腐女子のJK』のおかげだ。

 先日のディスりコメントがチャラになるようだ。体中に喜びが電気の如くビリビリと駆け巡る。


 すると昼休みの終わりを告げるチャイムが教室中に鳴り響く。あと5分で授業が始まるという合図だ。


 大きく深呼吸をし、今度はちゃんとおしとやかに椅子から立が上がり、ルンルンで5時限目の用意を始める。教室後方にある自分のロッカーへ足を進めようとしたら、スマホを見ながらなぜかにやついている立石の顔が目に入った。


 ……あいつがにやついているなんて珍しい。いつも青い顔してこの世の終わりみたいな顔してるのに。一体何見てるんだ?


 奴はスマホに夢中で私が近づいていることも気が付いていないようだ。

 私はなんと無しに立石の横を通った時、さり気なく奴のスマホを覗き……いや、見えた。何度も言うが、これは一瞬()()()のだ……!


 立石のスマホ画面に映っていたもの。


 『クリンク』のトップページだった。



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