日本より:我ら高校生、作戦開始!
俺は悩んでいた。奏太と累の生存を確かめるためにまた学校に戻って、穴の下に続いているだろう階段を降りようかどうかということに。通常の人間なら、そんなことしても無駄だ、何が起こるか分からないからやめるべきだ、と判断を下せるだろうが不安によってそんな判断など俺の頭にはなかった。
俺が家族よりも奏太たちを第一に考えるのには理由がある。俺の家族は外国で働いている。あの現象が起きてからスマホを一度もいじらず、情報が不十分なこともあり、あの現象が起きたのは日本だけだと考えている俺にとって、優先順位は奏太たちの方が勝っていたのだ。それに俺にとって奏太と累は・・・
ついに考えが二人の生存を確かめることに固まり、避難場所となっている施設から抜け出そうとしたその時、頭の中に直接声が響く。
『これよりこの世界の人類をアップデートします。・・・アップデート完了。これからあなたのジョブは武道家となります。不明な点についてはギルドから確認してください』
俺は困惑する。しかし、この現象が起きたのは俺にだけではなかったらしい。謎の声が消えたと同時に避難施設は騒然とした。ある種のパニック状態だ。そして、しばらくして騒ぎを聞きつけた自衛隊員たちがこの騒ぎでいなくなった者がいないか点呼を取り始めようとしている。
「光助君も聞こえた?私はなんかジョブ、剣士って。何なんだろう?光助君、分かる?」
そう聞いてきたのはクラスのリーダーである 三枝 彩だった。
「分からないけど、ギルドってゲームと同じだったら、なにかの施設やサークルみたいなものを指したりするはずだ。さっきの声からしたらギルドに行く必要がありそうだな。分からないことが多すぎる。こっそり抜け出すなら今が絶好の機会だ」
「やっぱり奏太君たちのことが・・・」
「当たり前だ!あいつらがどこかで助けを待っているかもしれない。それなのにこんなとこでじっとなんてしていられねえよ」
「今にも飛び出していきそうな感じね。分かった。私も一緒に行く」
「おい、こんな危険なことにつき合わせられねえよ。俺は一人で行く」
「あんた一人で行く方が危険じゃない!それに私だって二人のことが気になっているの。放っては置けない」
「ほんとにいいんだな。でも助かるぜ」
「おいおい、水臭いぜ。リーダーさんたちよ!」
騒ぎが起こったせいでクラスメイトはリーダーである彩の周りに集まりだしており、光助との会話を聞いていた者たちが自分もと名乗りを上げた。
*
あの後すぐに俺たちは行動を起こした。クラスのみんなには作戦を話しても、混乱なんてものはなく、気を引き締めていた。みんなも行動を起こすべきだと思っていたらしい。そして幸いにもトイレからの帰りに自衛隊の会話を聞いていたクラスメイトがいたそうで、ギルドの場所は市役所だそうだ。元々俺らがいた市の市役所は、避難させられたこの市との境の近くにある。だから俺たちでも半日かからずに着くはずだ。
施設を抜け出したら自衛隊は俺たちを探すだろうが、どこに行こうとしているか分かった時にはもう着いてるだろう。
俺たちは誰もいないことを確認して、施設の裏口から抜けると、すぐに走り出した。施設が見えなくなったところで一旦休憩を挟む。そして、また歩き出して何時間かしたら、やっと市役所が目視できる距離まで来た。嬉しさから走り出そうとするクラスメイトもいたが、それを止める。
「待て、所々に自衛隊がいる。一人でいっても確実に見つかるな・・・どうするべきか」
不安そうに俺が言うと、
「 ふっ、囮なら俺らに任せな。お前はただギルドのことを考えて進めばいい」
そう一人の男子が言うとみんな頷く。
「俺でいいのか?」
「俺らの中だと、今は沼津がリーダーなんだぜ。もちろん彩も」
「そう・・・なのか。すまない」
「ありがとうって言われた方が、すまないより嬉しいんだけどな」
へへっ、と笑って答えてくる。
(ますます失敗できないな。強行突破なんだ。どうせすぐバレる。なら士気を上げた方が良いだろう)
俺は一呼吸置いて叫んだ。
「行くぞー!!」
「「「おおー!!」」」
こうして、俺たちの最初の戦いが始まった。